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饗宴彩る獣の雄叫び

2本目ェ、それはそうと目が痒い…おのれ花粉。

――ドドドドドッ――


降り注ぐ矢の雨を躱し…魔物達を飛び越えながら、私は〝目当ての魔物〟を探す…入り乱れ悲鳴を上げる魔物達の群れの中からその姿を探し出すのは骨が折れたけれど…紆余曲折あって遂にその姿を捉えると、其処に飛び込み…彼の背中に飛び乗る。


「――はぁいラッセル♪…数分ぶりね?」

「ゲェッ!?――ックソ、マジかよ!」


私を背に乗せた彼は、私の声と姿を認めると焦った様な声色で私を振り落とさんとする…全く、失敬な男ね。


「ねぇ〝ラッセル〟…貴方って〝此方側(悪性側)〟よね?」

「あぁ!?――だったら何だこの野郎、踏み潰してやっから離れやがれ!」

「……(ニコッ)」


――ドスッ!――


「〝黙って聞きなさい〟…その頭かち割って脳味噌から食い殺すわよ?」

「グッ…クソッ、何だよ…!」


暴れていた彼を〝優しく〟手綱を握りながら私がそう言うと…彼も私の言うことを聞いて大人しくなる…あら?…何その顔?…。


「――貴方達の〝目的〟を手伝って上げる♪…だから貴方も私を手伝いなさい♪」

「はぁ?――んだよ、ソレ」


兎も角、私がそう言うとラッセルが首を傾げ、要領を得ないと言うように私を見る。


「――この〝戦局〟をブチ壊す…その為に〝あの壁〟に大穴を空けるわ♪」

「マジか、出来んのか?」

「えぇ…で、その後の流れを作る為に貴方には〝先駆け兼扇動役〟になってもらいたいの…出来るわよね?」


私はそう言い、ちらりと前方の〝アーク〟を見る…向こうも私の姿を再度認識したのだろう…再び、人間達に〝矢〟の構えを取らせる。


「そろそろ〝来る〟わよ、どうするラッセル?」

「…んなもんテメェ、決まってるだろ――」


その構えから、私がラッセルに提案への答えを急かせると、ラッセルは少しの逡巡の後…大地を強く踏み締める。


――ガシッ!――


「――〝乗ってやる〟よ、その〝泥舟〟…!……ド派手にあの聖獣様の顔に泥塗りたくってやるぜ」

「――ヨシッ、最高ね!…それじゃあ、作戦開始ッ、先ずは――」


――ヒュンッ!――


私がそう言い、ラッセルに指示を出した瞬間…またも空を白い魔力と鏃の雨が覆い尽くす…ソレが弧を描き、凡そ半分の距離を過ぎた頃――。


「走ってラッセル」

「――ブッハッハァッ、引き剥がされんなよッ!」


――バコンッ!――


黒い魔力を放出しながら、野猪は猛進を始めるのだった…。



●○●○●○


――ダダダダダダッ!――


その〝猛進〟を…人間は、聖獣達は…確かに〝捉えていた〟…。


「オイッ、一匹凄い勢いで走って来てるぞ!?」

「よく見ろッ、その上にもう一匹魔物が居る!」

「無駄無駄ッ、聖獣様の魔力を相手にただの突進でどうこうなる訳ないだろ!」


人間達は、その姿に余裕と嘲りを込めてそう言い――。


「ハハハッ、彼奴等遂に馬鹿な自殺特攻かましやがった!」

「それ以外にゃ何も出来ねぇからなぁ!」


アークの活躍によって寝返った聖獣達も皆、その突撃を嗤う。


周囲の魔物達を引き剥がし…単身で突撃するその姿に、誰もが油断した…その時。


――ゴウッ!――


凄まじい魔力が、〝猪〟の身体から立ち登り…猪の頭上を〝黒い魔力の壁〟が覆い被さった。


「…魔力壁……強行突破のつもりか?」

(だが…結局門塀は突破出来ない筈…あの女…一体何を考えてる?)


矢の雨が魔力壁を削ってゆく…猪の身体を貫き…血を流させてゆく…それでも猪は駆け抜ける事を止めず、猪の上にいるスライムも…逃走の気配を見せない…そんな彼等を見ながら…アークは疑問に顔を歪め…二人を視線に捉える。


――ダッダッダッダッ!――


矢の雨を潜り抜け、二匹は月も星も消え失せた夜を駆ける…村との距離は見る間に縮まり…人間達の〝弓〟の標準が、一匹の〝猪〟に集まる。


「――〝撃て〟!」


そして、誰かの一声によって…暴力的なまでの物量が猪とスライムへと降り注ぐ…その瞬間。


――ザザザッ!――


猪の足が止まり…仁王立ちの様にその場に留まる…すると、スライムはその背後に身を隠し…矢の雨に相対する。


――ドドドドドッ――


真正面、猪の正面に振り注いだ大量の矢が…その身体に突き刺さってゆく…その姿はさながら武蔵坊の如く…猪は仁王立ちのまま、その矢の尽くを受け止める……とは言え。


――ガクッ!――


コレだけの攻撃を受けては、さしもの彼と言えども限界を迎え…彼のHPは尽き…猪は死ぬ。


何がしたかったのか?…その考えが皆の頭に巡った…その瞬間。


――ブフゥッ!――


ブゴオオオ(行けやああ)ォォォォッ!!!!(ぁぁぁぁ!!!!)


野猪の雄叫びが、戦場に大きく…大きく響き渡った…皆の視線が、人間、聖獣、魔物…千差万別の全ての視線が〝猪の彼〟に注がれる…その瞬間。


――ダンッ――


彼の骸を足場に…一匹のスライムが、前に飛び出した…。


「――アッハッハァ♪…最ッ高の働きよラッセルッ!」


――ブワッ!――


スライムの身体からは凄まじい量の魔力が溢れ出し…その魔力を身に纏ったままで、スライムは〝門塀〟に迫る。


(馬鹿な…コレだけの魔力を何処からッ…!)


アークは驚く…何故なら、そのスライムが持つ魔力は…凡そ魔物の一匹が、それもまだ進化の場数も踏んじゃいない若い魔物が持つにはあまりにも大き過ぎた為に。


「――どうやって……!」


思考の末に、アークは辿り着く…朽ち果て、矢の穴から血を噴き出し項垂れる〝猪〟の…そのスカスカの中身を見て。


「――〝魔力の譲渡〟か…!?」

「気付くのが遅いわねぇ〝アーク〟!――ちょっと油断し過ぎじゃないの!?」


アークの言葉にスライムはそう言い…猛る魔力を唸らせて、目と鼻の先にある〝門塀〟へ駆ける…減速の一つもしないその〝無茶苦茶な行動〟は…まるで、生存欲求の欠片も感じさせず…人間と聖獣に困惑を与える…だが。


「――不味いッ、彼奴を門に近付けるな!」


この中で誰よりも〝魔術〟を知る、アークだけが…そのスライムの無鉄砲な行動の真意を理解し、静止の声を上げた…しかし。


――ゴゴゴゴゴゴゴッ!――


「〝残念〟…〝一歩遅かった〟♪」


その声を上げた時には…もう既にスライムは門に触手を伸ばしていたのだった。



○●○●○●


――ゴゴゴゴゴゴゴッ!――


さて、コレから私は何を成すでしょうか?…。


触手による門の破壊?――否。


魔術による人間の殲滅?…否否否ッ!…。


「正解は〝自爆〟による〝門の破壊〟でした!」


自身の魔力に加えて、ラッセルから吸い上げた魔力の全てを私の身体に集約させ…〝魔術〟モドキを行使する…いや、もう〝モドキ〟では無いわね。


「――〝魔弾〟…!」


《新たな【能力】を獲得、〈無属性魔術〉を獲得しました!》


魔術の習得、念願の〝超常の力〟…ソレを手に入れた歓びはあるけれど、ソレは一先ず後回し。


「全く…始めてちゃんとした〝魔術〟を使うって言うのに…最初の使い方が〝こんなやり方〟何てね…!」


今は、私の持つ全ての魔力を…〝魔弾の術式〟に注ぎ込む…。


今から行うのは、〝魔術の暴走〟…術式を意図的に暴発させ、魔力を誘爆させる…技術も糞もない〝自爆〟…。


「―失敗の副作用がこんな形で活きるなんて誰も予想しなかったでしょうね」


ヒビ割れてゆく〝術式〟を見ながら…私はそう言い、ソレを〝門塀〟に押し付ける。


――ピキッ!――


すると、魔力を凝縮して作られた光の塊からそんな音が鳴り響き…その瞬間…凄まじい光量を放って、ソレは〝吹き荒れる〟…。


「それじゃあ〝アーク〟…また後で会いましょうね♪」

「ッ…君は…!」

「あら?…何その顔は?…さっきまでの笑顔はどうしたのよ?」


光と熱に飲み込まれる直前…私はアークにそう言い…悪意と嘲笑を込めて、彼に一言告げる。


「――駄目じゃない、笑わないと♪」


そして私は再び死んだ…視界が光りに染まる直前に見たアークの顰めっ面を目に焼き付けながら。

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