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臓腑と魂は腐り果て、獣達は妄執に囚われる

――ザンッザザンッ!――


「さぁ、次の獲物は?」


争う獣の双頭を切り裂き、駆け回る獣の足を削ぐ…飛ぶ獣の翼は貫き、潜る獣は地面から引き摺り出す…その行程を、何度も…何度も何度も何度も、繰り返す。


《レベルが上がりました!》

《レベルが上がりました!》

《レベルが上がりました!》


狂ったように鳴り響くアナウンスと、獲物を討伐するたび増えるポイントが、私を更なる闘争へ駆り立てる。


《〈触手〉のレベルが上がりました、〈戦技:伸縮〉を獲得》

《〈触手〉のレベルが最大レベルに達しました、【能力昇華】が実行可能です》


そんな最中…遂に私の【能力】が1つ…最大のレベルに達する…それと同時に綴られ、語られたメッセージに、私は悩む必要も無く即決で〈能力昇華〉を利用する…すると。


《【能力昇華】が選択されました、〈触手〉の昇華を実行します》

《新たな【能力】を獲得、〈形状変化〉を獲得しました!》

《〈戦技:硬質化〉を獲得しました!》


能力の変化に伴い、大量のアナウンスが頭の中に響き渡る。


「――へぇ♪…〝面白い能力〟になったわね?」

「――隙有りィァ!!!」


アナウンスに耳を傾けながら、流し読みで手に入れた能力を記憶する…その隙を突いて、一匹のゴブリンが私目掛けて棍棒を振り下ろす。


――ガシッ!――


しかし、振り下ろされた棍棒は私を打ち据えることも無く…私から伸びた無数の触手に捕らえられ、静止する。


「――残念でした♪」

「ギャバァッ!?」


――ザンッザザザンッ――


そして、静止したゴブリンに無数の触手が刃と化して肉薄し…勇敢な魔物の生命を微塵に切り下ろす。


《ゴブリンを討伐しました!》


「ふぅ…コレで…あ〜…何体目かしら?」


周囲を見渡す…未だ散発的に争いは見えども…この辺りには誰も居ない…と、言うのも…。


――ジッ…――


皆が皆…私から距離を取っている…その目に映るのは…私への〝恐怖〟だった。


「……そう、つまらない」


大人しくなった彼等から視線を離し…私は、触手を1つ生成する…。


――ヒュンッ――


その瞬間…私目掛けて接近する〝ソレ〟を…私は触手で掴む。


「――なッ…止めたッ!?」

「――だったら、仕方無い」


確かな敵意を持って放たれた、その〝矢〟を…私はその(触手)で折り砕き…その矢の先に居る〝人間〟に標的を移す。


「貴方達で、遊ぶわ」


そして、私は自身の魔力を凝縮し…〝魔弾〟モドキを形成すると、ソレを此方を見て立ち呆ける人間に飛ばす。


――ドッ!――


その魔弾は軌道を寸分違わず私の描いた通りに動き…彼の頭蓋を吹き飛ばさんと目と鼻の先にまで肉薄する…しかし。


――ドンッ!――


不意に…彼を押し退ける様に空から現れた白鳥が、彼を死の危機から救った…。


「惜しい…このまま私の十八番に持ち込んでも良いんだけど…」

(どうせなら…此処で魔術の感覚も掴んでおきたいわね…)

「的には事欠かない訳だし――」


そんな彼と人間を、怯え後退る獣達を横目に…私が再び、魔弾モドキを作ろうとした…その時。


――ポタッ…ポタポタッ――


私は…不意に、〝ソレ〟の姿を垣間見た。



●○●○●○


――ジロッ――


其れは、星空の美しい森の中から…〝ソレ〟を見ていた。


「……」


其処には数多の生命が有った、其処には数多の〝死〟が有った…。


本来ならば、其れが動くことは無かった…万物の生と死、争いと勝敗は当然の理であり、人と魔の争いでさえ、生存競争の域を出ない行為である為に…しかし。


――ゴゴゴゴゴゴゴッ――


ソレの目には…確かに〝映っていた〟…この〝世界〟に蔓延る〝穢れ〟と…〝異物による干渉〟を…。


「……■■」


故に、ソレは動き出さんとする…自らの道理に基づいて…しかし。


――コンッ…コンッ…コンッ…――


「やぁ、やぁ、やぁ…こうして接触するのは、きっと数千年ぶりかな…〝恵みのキミ〟?…相変わらず元気そうで、何より♪」


そんな彼の行動を制するように、一人…この自然には似つかわしくない〝文明の装い〟をした男が…顔の無い顔から愉しげな言葉を吐いていた。


「――!」


瞬間、〝ソレ〟が一つ睨んだ瞬間…大地から無数の茨が現れ…男を捕らえる。


「おぉ…痛いなぁ…いやさ、確かに事前に来訪を伝えなかったのは僕の落ち度だよ?…でも君、僕が伝えても絶対に拒否するだろう?…だから仕方無く無断で来たのさ…許しておくれよ」


捕らえられた男は、自身が窮地に陥ったと言うのにまるで気にも留めないように〝ソレ〟へそう弁明し、ステッキで地面を小突く…すると。


――〝カチンッ♪〟――


軽快な音と共に、茨の牢は消え去り…男は笑いながら〝ソレ〟へ告げる。


「――困るんだよ、折角の〝イベント〟だよ?…〝プレイヤー〟達の為の舞台に君が乱入すると、折角整えた〝舞台〟が台無しだ…だから、君にはこの〝ガーデン〟からは出てもらいたくない」


その言葉に、〝ソレ〟はただ怒りを孕んだ瞳で返すと…そね男ステッキをソレに向け告げる。


「――とは言え、〝僕達だけ〟が、この場に干渉するのも〝フェア〟じゃない…ソレを伝える為に僕は此処に来た…分かるかい?」


男の言葉にソレは答えない、ソレは男の言葉の真意に気付いたからか、それとも単に男の言葉を不要と切り捨てたからなのか…それは分からない。


「――〝祝福〟を使う分には、止めはしないよ?…〝君の友人〟達も…皆そうしてる訳だしね♪」


男の言葉と、背を向けて其処から霧のように消えていく男に…ソレは複雑な視線を送り逡巡する…そして、遂にソレは…頭の中で結論を出したのか…静かに目を閉じ…その身体から、大気が震え…地面の草木が活気付く程に膨大な〝力〟を…解き放った――。



○●○●○●


「――グモォォォォッ!?!?!?」


ソレは、一匹の野生の咆哮から始まった…。


「何!?」


その獣の身体をドス黒い〝何か〟が覆い尽くすと…獣の身体は黒く変色し…その異様に皆がソレに意識を向ける。


「おぉ、凄え…コレなら、〝テメェ〟を殺せるかぁ!?」


其処に居たのは、赤黒い〝オーラ〟を纏った〝猪〟…彼が、その視線を私に向けてそう言ったその瞬間。


――ダンッ!――


彼は一歩、前へ足を踏み出し…明らかに可笑しい速度で、私へと迫る。


「――〝魔弾〟!」


真正面に迫る彼へ私は魔力を圧縮し…猪へ放つ…その魔弾は、一直線へ猪へ迫り、互いに距離を詰めるソレは凄まじい速度で互いを目掛けて衝突し…魔弾は、猪を直撃した…けれど。


――ズォォッ!――


その衝突は、確かにダメージを与えたものの、迫る彼を死に至らしめるには至らず…彼はそのまま突進し続け…驚く私へと肉薄した。

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