表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/95

護るモノ、壊すモノ

「僕に協力してくれ」

「――嫌よ」


私は、空から此方へ要請する彼の頼みを一蹴する。


「…理由を聞こう」

「私が貴方に手を貸す道理が無い、以上の説明は必要かしら?」


空を舞う彼に、私はそう言いながら跋扈する魑魅魍魎達を撫で殺してゆく。


――ビュンッ――


「――〝礼〟はする」

「そう、なら話は聞いて上げる…具体的に何をしたくて、その礼に貴方は何を私に提示するのか」


私の言葉に彼は考える素振りを見せながら、迫り来る空の魔物達を片端から撃ち落としてゆく。


「――僕は人を〝護りたい〟…でも、この数を相手にするのは流石の僕でも難しい」

「だから強い魔物を仲間に引き入れる…成る程、それで?…〝何故人間を助ける〟必要が?」

「――単純な良心半分、打算半分だね…〝人間〟を助けるメリットは大きいよ、多分…このイベントで解放されると思うけど、先行プレイ時イベントで人と〝契約〟が出来る様になるイベントがあった」

「契約?…続けて」

「〝契約〟…要は〝使い魔契約〟だよ…〝人間と魔物〟が契約する事で、互いに利益を与え合う…単純な戦力を対価に、契約者を外付けの魔力タンクにしたり、経験値を共有したり、〝魔術〟や〝能力〟の共有も可能になる…最後の方はちょっとした手間が居るけど…他にも、人間との交流によるメリットはかなり多いんだ」


白い鴉…アークの言う事を考える…確かに、そんな機能が有るなら中々悪く無い契約だ。


「――でも惜しいわね、情報は感謝するけれど、その〝契約〟において私は彼等を必要としていない…貴方の仲間に成るのは難しいわね」

「そうか…なら――!」


アークがそう言い、私に敵意を向ける…成る程、交渉決裂と見れば即座に敵対する…切り替えの良い子ね。


――ヒュンッ――


風が薙ぐ…無数の風切り音を乗せて…空から降り注ぐ白い羽根の刃は、私目掛けて迫り…その速度は私が回避する事を赦さない。


「ッ!」


私の眼前に、白い殺意が迫る…その羽根は主の敵意を告げるメッセンジャーとしての役割を全うし…私の心臓を抉り抜かんと月光の光を反射する…今までの私で有れば…その攻撃に対応するのは難しかっただろう。


「――〝魔力壁(マナ・ウォール)〟♪」


そう…〝今までの私〟ならば。



○●○●○●


――ドドドドドッ!――


土煙に、ソレの姿が消える…。


「……」


抵抗の素振りは無かった…諦めたのか、それとも単に間に合わなかったのか…間違いなく〝直撃〟する間合いだった。


千が一、万が一にも…生きている筈が無い…筈だった。


「――フフッ、フフフフフッ♪」

「ッ――!?」


不意に、砂煙の中からそんな声が響く…腹の底から楽しくて仕方が無いと言う様な、笑い声…。


――ズォォッ!――


その声に気を取られた瞬間、土煙を貫いて赤黒い触手が無数に迫る…寸前でソレを躱し…僕は、その土煙の先にいる〝ソレ〟を見た。


「…馬鹿な…「何故…生きている?」……何て、チープなセリフは吐かないわよね?…Mr.アーク?」


其処には…己の言葉に被せるようにそう言い…愉しげに伸ばした触手を体内に収縮させる〝赤黒いスライム〟が居た。


「――〝レベルの差〟は歴然なのに、〝生きている〟…まさか、フィジカルで耐え抜いた訳じゃない…なんてことは、態々口に出さずとも分かると思うけれど…それじゃあ、〝何故〟…私は生きているのか?――先行組の貴方なら、分かるんじゃないかしら?」

「まさか…〝魔術〟…使えるのかッ…その、レベルで…!?」

「――ザッツライト♪…まぁ、魔術と呼ぶにはまだ拙い、〝技術未満〟の腕だけどね?」


そのスライムは、驚く僕にそう言い、笑いながら自身の周囲に展開した半透明の魔力の〝壁〟で自身を守る。


「――〝魔力壁〟…言ってしまえば〝魔力を整形しただけ〟だけれど…この〝整形〟と…〝術として事象を確定させる〟と言うのが、無から魔術を習得する際の難関…その点で見れば、あの短時間で魔術に昇華したあの子は優秀だったのね?」


その防壁は揺らぎ…如何にも不安定な様子で、其処に顕現していたが…その防壁は僕の羽を防ぐと言う役割を終え、スライム自身の手によって、その顕現を解かれる。


「――それは兎も角、貴方が私に構うのは良いのだけれど…本当に良いのかしら、私ばかりに意識を割いても」

「ッ!」


スライムの言葉に僕は周囲を見渡す…既に周囲は死屍累々の様相であり…その地獄の中で生き残っていた獣達は…見違える程〝力〟を蓄えていた…。


「あらあら…随分と獲物を食い漁られちゃったじゃない…この様子じゃ他のプレイヤー達がどんどん進化していくわよ?…ソレは貴方にとって痛手じゃないかしら?」

「クッ…!」


まるで誂うようにスライムはそう言うと…その触手を周囲の魔物達に伸ばし……襲う。


「私としても、此処で貴方の邪魔をして粘着されるのは困る…此処は一度、互いに〝不干渉〟と行きましょう♪…別に私は積極的に人間を襲うつもりはないし、ね?」

「………分かった」

「いい子ね♪…それじゃあ私は私の好きにやらせてもらうわ♪」


鋭い刃を撓らせ、屍の山を築き…死肉を貪りながら、スライムはそう言い…背を向ける。


「――ちょっと待ってくれ、君の名前を聞いておきたい」


そんなスライムに、僕は最後に引き留める。


「?…必要かしら…まぁ良いわ、〝マオ・ディザイア〟よ、よろしく〝アーク〟」

「〝マオ・ディザイア〟…君の名前を覚えておこう」


そんな僕に、彼女は…〝マオ・ディザイア〟はそう言い放つと、要件は済んだとばかりに僕に背を向け…生き残った獣達に刃を振るってゆく…。


「ッ――僕も、集中しないとな…!」


そして僕も再び、この戦場で…〝人類の支援者〟としての立場から、魔物達に牙を剥く…。


そうして夜は深く深く…濃い死と、噎せ返る様な甘い血の匂いを地面に染み渡らせて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ