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饗宴、或いは狂宴

夜更けの投稿、それでは皆様良い夢を。

――ヒュンヒュンヒュンッ!――


弓矢が飛び交う中を獣達は突き進む。


――ドスドスドスッ――


何の殺意も籠もっていない…ただ恐怖に駆られて射られた矢は、しかし…この緊急事態にあっては獣達の足を、腹を首を容易く射抜く武器となる…それ程に、迫る獣達は多く…際限が無かった。


――ガリガリガリッ――


「ヒャハーッ、殺せ殺せ殺せぇ!」

「オイッ、テメェ俺を踏むな!」

「はぁ?――すっとろいアンタが悪いのよッ!」


異種の獣達がそう喚き合いながら、進む…我先にと門の先、壁の先…〝人の肉〟を目指して。


その熱気と殺意は凄まじく…夜の冷え込みでさえ冷ますことは出来無かった…。


「フフフッ、アハッ、アハハッ♪」


そんな争乱と怒号の戦場を…死と刃の飛び交う舞台に、楽しげな声が響く…そして。


――ヒュンッ――


空の上から…空を切り裂く様に…小さな影が、地面に舞い降りる…その身体から無数の刃振り乱して。


――ザンッ、ザザザザザンッ!――


その刃は迫る矢を、周囲の獣を草の葉さえも例外なく切り裂き…無秩序に死を振りまく。


「ギャァッ!?――オイ、テメェ危ねえだろうが…!」

「オイ、俺達味方だぞ!?」


そんな〝狂乱の獣〟に、他の獣達が怒りを滲ませそう叫ぶ…しかし、そんな怒号などには毛ほどの意識も払う事無く…その〝獣〟は嘲る様に怒号の主達へ言葉を吐く。


「〝仲間?〟…〝味方?〟――馬鹿ね、大馬鹿ね…この数のプレイヤー、この数の魔物全員に〝人間〟が生き渡ると本気で思ってるの?…だとしたら随分と楽観的な考え方をしてるのね?」


――ザンッ――


その獣は、このイベントの肝である〝人間〟に牙を剥くどころか、その人間達に背を向けて…寧ろ迫る〝獣達〟に刃を振りまいていた。


「――このイベントがただの〝人間狩り〟な訳無いじゃない…寧ろそれは〝理由付け(フレーバー)〟、このイベントの本質は〝プレイヤー同士の殺し合い〟よ」


緑の狼を、蔦の絡まった鹿を、兎の娘を無差別に切り裂きながら…朱色に染まった〝彼女〟は告げる。


「本ッ当、最高で最悪な〝イベント〟ね…考えた人の顔が見てみたいわね♪」


そう言う彼女は、そう言うと魔物達の海へと飛び込み…驚く彼等の血で地面を濡らしていく…。


そんな行動をする獣は…彼女だけではなく――。



「〝羽弾(ウィング・ショット)〟」


暗く黒い空の上を、白い〝鴉〟が舞う…大地に大量の刃の雨を振り注がせて。


「――白い鴉!?――〝聖鳥アーク〟か!?」

「クソッ人間共の経験値を独占する気か!?」

「だったら俺も」

「クソッ、巫山戯んな!――俺にも寄越せ!」


彼等の存在がその呼び水となったのか…いや、何れ時間の問題だったのだろう…獣達の中にも続々と、このイベントの本質を理解し始めた者達が現れ、〝人vs魔物〟であった当初の勢力図は一転し…〝人vs魔物vs魔物〟と言う、混沌が早くも戦場の空気に立ち込め始めていた。


「――な、何だ?」

「魔物共が急に仲間割れし始めた?」


その光景に理解が追い付いていないらしい、人間の兵士達が呆然とこの戦場に取り残されている中で…彼等の目の前に、その白鳥は舞い降りる。


――バサッ――


「ッ――しま…!」


一瞬の隙を突いて現れた白鳥に、兵士は慌てて矢を構えるが、白鳥はソレに意も介さず…彼等に一声〝鳴く〟…。


「――〝クァァ〟!」


その鳴き声を聞いた瞬間、兵士達の身体に白い魔力が絡み付き…兵士達は自身の身体が軽くなった事を自覚する。


「何だ…力が湧いてくるぞ!?」

「…まさか、〝此奴〟が…!?」


突然の状況に兵士達が困惑する中、白鳥は困惑する彼等に向けて、今度は〝人の言葉〟を紡ぎ…彼等へ語る。


「――〝落ち着け〟…〝僕は味方だ〟…〝君達に力を貸そう〟…〝魔物を倒せ〟」


その言葉は、確かな知性を帯び…意図を明確に持って告げられた言葉に彼等は驚き…魔物が言葉を話し、且つ己等に協力していると言う事実に三度驚愕する。


「――〝呆けるな〟…〝戦え〟!」


そんな彼等に発破を掛けるようにソレはそう言うと…その場所から飛び上がり…再び空から眼下の魔物達を襲い始める…ソレを。


「…〝聖獣〟様だ…!」

「ありゃあ…味方なのか…!?」


彼等は希望を込めて見送り…その希望を胸に、闘争に身を投じていくのだった…。



●○●○●○


《グリーンウルフを討伐しました、3p獲得しました!》

《レベルが上がりました!》


このイベントのシステムは、明らかにプレイヤーを罠にハメるような、誘導する様な説明が成されていた。


鋭牙猪(スピードボア)を討伐しました、3p獲得しました!》


〝村を襲う〟と言うシンプルなイベントのシステム、村を襲うと言う事は当然、其処での討伐対象は村を維持する存在…つまり、〝人間〟だと思わせる。


《角兎を討伐しました、1p獲得しました!》


しかし、このイベントの〝説明〟では…〝村周辺での戦闘〟に、イベントの効果が付与されている…人間を倒す事がイベントの主目的なら〝人間を倒す〟と言う内容の説明の方が分かりやすい…だが。


(敢えて…このイベントの説明には〝特定種族〟を指定する文言が無かった…つまり)


このイベントに於ける〝人間〟は…単なる都合の良い〝きっかけ〟に過ぎない。


「大方…人間を狩り尽くした後にこの仕様に気付かせて争わせようとしたんでしょうね…ホント悪趣味♪」


――ザンッ――


《影色狼を討伐、3p獲得しまし!》

《レベルが上がりました!》


「――それはそうと、ポイントね」


確か魔物を倒すとポイントが貰えて…貰ったポイントはイベント終了後のポイントショップでアイテムの交換が出来る…だっけ?…。


「――交換アイテム…興味は有るわね」

(ポイントの獲得量の法則性も分かってきたし…)


「同レベル、ランク帯の魔物は3、格下は1…格上は――分からないけどこんな所ね」


とは言え、今の所明確に私よりも〝強い〟と言えるのは…。


「其処の〝赤いスライム〟…話しが有る」


白い鳥(此奴)〟ね…。


――――――

【アーク】

白魔鴉(ホワイト・レイヴン)】LV27/40


HP:■■■■/■■■■

MP:■■■■/■■■■


――――――

《〈看破〉のレベルが上がりました!》


このレベル…間違い無い。


(此奴、〝先行組(βテスター)〟かしら)

「――何かしら、白い鴉さん?」

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