表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:人魚の恋は泡沫のように
177/190

母なる海蛞を殺すには

本日の投稿を。


修整作業が面倒なのなんのって…何故もっと早くに気付かなかったのか。

――ズパァァァンッ!!!――


そんな、風船が破裂した様な音を響かせてマザーの頭部が吹き飛ばされる。


「頭は潰した、ドル、ウェズ…今の内に畳み掛けなさい!」

「「合点!」」


普通の生物ならば、コレだけで致命傷…しかし、事マザーにとっては、その損害は〝無〟に等しい僅かな傷でしかなかった。


――ギュギュギュギュッ――


〝再生〟…ウミウシ達とは比較にもならない規模と速度で、巨体は修復され、触覚を私の方へ向け…己に纏わり付く〝魔力の名残〟から、己へ刃を向けた私へ殺意を向ける。


「〝―――〟!」


そして、マザーの身体はブルリと震え…魔力が萎む…その収縮に比例してマザーの胴体は膨張し…〝競り上がる〟様に、マザーの喉元へと運ばれて行く…その行動から導き出される〝攻撃〟は…つまり――。


――ボエェェェェッ!!!――


〝溶解液〟…凄まじい酸性を持つ〝劇物の吐瀉〟である…一匹のウミウシが放つ量も、大型の水鉄砲程は有り…その脅威は言うまでも無い…しかし、そんなウミウシ共の母…大洞窟の大半を占有する巨躯から放たれた消化液の吐瀉は、凡そ…〝何十分の一〟の同種同系統のソレとは規模が違う。


――〝波〟――


吐き出された溶解液が、地面を流れ…濁流を作り出していく。


「面倒…ねッ!」


迫りくる酸の濁流を前に、私はそう言い…自身の身体に〝翼〟を付与する。


――バサッ!――


「〝ステージの強制変更〟なんて面倒な事をしてくれるじゃない…!」

(私やウェズなら、空を飛べるから問題無いけれども…問題は〝ドル〟ね)


今まさに、ウェズと連携しマザーへ挟み撃ちを決めるドルを一瞥する。


「此方で回収しても良いけど…一人がフォローに掛かりっきりなのは面倒ね…」


――ズドォォォッ!!!――


ドルの一撃が、マザーの身体を大きく蹌踉めかせる…すると、マザーは初めて感じる強烈な指向性のある衝撃に、抵抗出来ず…グラリと身体を傾かせて、地面に倒れる…。


――ゴゴゴゴゴッ!!!――


その拍子に、室内全域が大きく揺れて動き…天井に吊るされた巨大な鍾乳石がシャンデリアの様にプラプラと、これ見よがしに揺れる。


「あぁ、成る程…〝そう言う仕掛け(ギミック)〟ね」


ソレを見た私は、このステージの〝仕掛け〟を理解し…己の得物を天井へと投げ付ける…。


――ドゴッ!――


投げ付けられた槍は、天井の奥深くへ突き刺さり…目論見通り、鍾乳石が落石して来る。


「〝ドル〟!」

「ッ!?」


ソレが地面へ確かに突き刺さったのを確認すると…私は未だに宙を落下するドルへ、呼び掛けた。


●○●○●○


「ドル!」


母胎を壁へ叩き付けたその時、俺を呼ぶ声が聞こえる。


「ッ!」


その声に振り向けば、いつの間にやら大空洞に突き立てられた鍾乳石の柱と、その上から己を呼ぶ〝翼を持ったお姉さん〟…そして。


――ザバァッ――


ゴポゴポと濁音響かせて此方へ迫って来る…大量の溶解液が目に映った。


「ッ――ふん!」


瞬時に状況を理解し、着地と同時に再度跳躍し、壁を蹴ってお姉さんの側に降り立つ…その僅か数秒後には俺の元居た場所は、白濁とした消化液の海に飲まれ…酸性の不快な匂いで満ちていた。


「おう、助かったぜお姉さんッ…しかし何だその翼?…さっきの何にも見えねぇ攻撃と言い…アンタ何者だ?」


そんな事はさておき、フォローをくれたお姉さんに感謝を伝え…同時に、お姉さん自身に起きた異変に疑問を投げ掛ける…しかし、その問いにお姉さんはクスリと笑みを浮かべて、人差し指を口に当てると、俺へ言う。


「残念だけど、今は教えられないわね♪…ソレよりも、今は〝アレ〟の処理が先決じゃない?」


その仕草に、戦闘中にも関わらずドキッと心臓が跳ねる…しかし、そんな愛嬌とミステリアスな仕草の二つを兼ね揃えたお姉さんの言葉を何とか飲み込み…戦場へ目を向ける。


「ん…まぁ、そうだなッ――で」


其処には、マザーの再生を妨害し…迫る酸の消化液を躱すウェズの姿と、その妨害を押し退けて再生を続けるマザーの姿があった。


「馬鹿げた再生力を持つマザーを相手に…〝どう仕掛ける〟」

「他のウミウシと同じで、構造そのものに変化は無い…ただ純粋に硬く、厚く、死なない事に特化した〝ステータス〟…真価は〝眷属〟による数の暴力ね」


――カンッ――


その姿を一瞥し、お姉さんは頭上から振ってきた槍を構え直し…俺へ言う。


「殺し方は変わらない…ただ〝核を潰す〟だけ…その障壁は〝再生〟と〝眷属〟達…どうにか〝核〟を露出させれば…勝ちの目は十分有るでしょう」

「簡単に言うなぁ…!」


その言葉に俺はそう言い…消化液の海を泳いでやって来るウミウシ共を処理して行く。


「勝算の目処はついてるのかよ?」

「勿論♪…〝道〟は作るから、〝合図〟と一緒に仕掛けて、ドル」

「オッケイッ…んじゃ、なるべく魔力も体力も温存させてもらうわ!」


俺がそう言うと、お姉さんは空を飛び…ウェズの支援へと回る…その姿を見た俺は。


「〝黒い翼〟に…〝赤い目〟ね…」


その〝黒翼〟に…微かな〝疑問〟を抱きながら…思考を〝戦闘〟へと切り替え、ウミウシ共をその爪で切り裂いて回る。





〜〜〜〜〜〜〜〜



――グラグラグラッ…――


「うん?…今揺れたな」


同刻、同じく〝洞窟〟を進んでいた黒蜥蜴…〝ファニル〟はそう言い、ウミウシを食い千切りながら、微かに揺れた地面にそう呟く。


「単なる自然現象か、それともどっかのパーティーがボスとやり合っているのかね?」


そう言い、ファニルは残党の胴体を踏み潰すと…ノシノシと歩を進める。


「しっかし暗えな…〈暗視〉でも取ってりゃ良かったぜ」


その歩の先には暗闇が広がり…ファニルは己の身に炎を纏わせながら、ソレを灯りに先へと進む。


「まぁ何れにせよ、〝進めば分かる〟か…入り口から此処まで〝一本道〟なんだし」


そんな独り言を、誰に言うでも無く呟きながら…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ