溶解する蛞蝓の母
本日2本目の投稿…遅くなりました。
明日も投稿します、それはそうと緊急と言う訳では無いのですが当作品でちょっとした設定を変更するお知らせを致します。
と言っても当作品のステータスにおけるLV表記を変更するだけなので、作品の根幹を揺るがす程の変更では有りませんので、その辺りは問題無いかと思います。
少しずつ変更を適応してい予定ですので、暫くは初期と適応後とで違和感が有るかも知れませんが、何卒ご容赦下さい。
それては、私事で長くなりましたが…本編へどうぞ。
――バサッ――
「〝翼質硬化〟――〝鉄裂く翼〟」
翼を広げてウェズがそう言う…その瞬間、ウェズの持つ翼はその魔力によって変質し、重く堅い〝鋼の刃〟へと転じる。
――ダンッ――
「ドルッ!」
「ッ!」
疾走と同時にウェズが叫ぶ…その言葉にドルは背を向けたまま天高く飛び上がり…その直後にウェズの鉄翼が地面に並行し…周囲のウミウシ達を切り裂いてゆく。
――ドロォッ――
その一連の連携にウミウシ共は切り裂かれた身体から溶解液を発しながら倒れ込む…しかし、切り裂かれた内の一部はまだ息があるのか、半ば分断されかけているにも関わらず、その身を再生させようとしていた。
「ッ――っぱ〈再生〉持ちは厄介だなッ」
「だが半分は潰したぞ…コレならッ!」
二人はそう言い、明確に数を減らしたウミウシ達を見てやる気を出す…あぁやはり、目的を見失っているらしい。
「――二人共、目的はウミウシの殲滅じゃ無いでしょ?…数が減って進路が開けてきた、そろそろ移動するわよ」
「「ハッ、そういえばそうだった!」」
そんな二人を呼び止めて、私は暫定ウミウシ達の大元が居るだろう分岐路の前に立つ…そして、二人が慌てて駆けてくるのを確認し…一足早く洞窟の先を行く。
「「「「〝ッ―――!!!〟」」」」
そんな私達の動きに、ウミウシ達は奇声を上げる…私達の目的を知っての叫びか、それとも本能的に種を守ろうとするが為の反応かは分からないものの…その叫びが発せられてからウミウシ達の持つ敵意は何倍にも膨れ上がり、味方の負傷を厭わず苛烈な攻撃が私達を出迎える。
――ゾッゾッゾッゾッゾッゾッゾッゾッ――
その反応、苛烈さを究める攻撃…絶え間の無い〝戦力の逐次投入〟…何よりも、近づく程に強く濃くなる〝淀んだ魔力〟の反応に私達は三者共々に…同じ思考へ至る。
(((この先に…〝ボス〟が居る!!!)))
…と、確証がある訳では無い…ただ漠然と、直感で紡ぎ上げたその思考は、果たして――。
――ゴプッ…ゴポッ…グニィィッ――
その確信を現実のものとした。
――ウニョウニョッ――
ソレは…一見すれば、先程まで狩り殺していたウミウシ達と大差ない出で立ちをしていた…その見上げ、視界一杯に収まる体躯が全体の3割程度でしか無いと言う…馬鹿げたサイズ感を除けば…しかし、その認識は即座に己等の目の前で行われた〝行為〟によって撤回させられる。
「〝―――!!!〟」
――ズルゥゥッ――
その名状し難い脈動と共に…奴の皮膚はズルリと爛れ落ちる…一つだけでなく幾つも…ソレは奴の肉体を覆う粘体の膜だった…。
――ドロォッ――
もったりと、重く緩慢な動きで地面に落ちたソレは…奴の肉片の一部を粘液の内に囲い…直ぐに〝変性〟を始める。
――キュポン、キュポンッ――
1つが2つに、2つが4つに、4つが8つに…〝細胞分裂〟の工程を高速で繰り返したその〝粘液の繭〟は、やがて1つの生命としての自我を持ち…己等が散々殺し回った〝海蛞蝓〟共の姿へと変わり…まだ生まれて間もない幼体だと言うのに、鋭い敵意を向けて己等へのそりのそりと近付いてくる。
「成る程…〝化物の母胎〟は当たってた訳ね」
「流石に、こんなド迫力サイズを見ると…俺も少しブルっちまうぜ…」
「あぁ…俺もだ…俺も――」
空間の入り口から覗いていた私達が、その姿を前に…私達は〝震える〟…恐怖に?…焦燥に?…緊張に?…困惑に?…あぁ、そうだ…私達は〝未知への恐れ〟に震えている…ソレは事実だ…しかし、ソレが〝全て〟では無い。
確かに恐ろしい…彼女を前に、その巨躯のあまりの圧には緊張する。
己等が幾度と無く狩り殺してきた獲物達の生誕の方法を見て、母胎の命令1つで生まれながらに殺意を抱ける彼等〝眷属〟への恐怖も確かに有る…だがそれ以上に己等の〝心中〟を満たし、渇かし、飢えさせてやまないのは――。
――ズンッ――
「「「本当に…〝震えてしまう〟…!」」」
《ボスエリアに侵入しました!――エリアボス――〈溶蛞の母使〉との戦闘を開始します!》
今目の前に在る、〝悠然たる大海母〟への計り知れない〝闘争本能〟…〝殺意と好奇〟だった。
――――――
【無し】
【溶蛞の母使】LV58
HP:40000/40000
MP:52000/52000
筋力:B
速力:G−
器用:D
物耐:B+
魔耐:B+
信仰:C
幸運:E
【能力】
〈溶蛞の母胎〉LVMAX、〈狂乱の叫声〉LV5/10、〈溶酸精製〉LV7/10、〈隷属通信〉LV3/10
【称号】
〈溶蛞の母〉、〈啜り喰らう胃酸〉
――――――
闘争のゴングは、奴の領域に足を踏み入れた刹那鳴らされ、私達は…奴の〝視線〟と、その脈動に同時にそれぞれの方向に駆け出す。
「トドメは早い者勝ちなッ!」
「妨害無しで共闘ッ」
「オーケー!」
――ブワッ――
「翼質硬化――〝風纏う翼〟!」
ウェズは、大空洞の天井スレスレを飛行して迫り――。
――ガガッ、ガガッ、ガリガリガリッ――
「〝縮地〟――〝狼爪〟…!」
ドルは己の道を阻む全ての海蛞蝓を核諸共切り裂きながら、大地を駆けて溶蛞の――〝マザー〟へと迫る。
そして…私は――。
――ゾッ!――
「〝一番槍〟は…私が貰うわよ?――フフフッ♪」
自身の抑留していた魔力を解き放ち…昂る気持ちに充てられて、魔力を多く〝燃やす〟…。
「〝虚空の歪〟、〝無形にして変幻〟…〝何人の目には無く、しかして其処に確かに在るモノ〟」
――キィィンッ!――
「〝無空の術理〟、〝欺きの形に定まりしモノよ〟、〝鏖殺の使命を果たせ〟」
空に描いた魔力の紋様が創り上げるのは、〝私の殺意〟…見えずして其処に在る〝不可視の一撃〟――。
「〝不可視の触手〟」
――ズルゥッ――
ソレが今…空間を歪ませて海蛞蝓の母胎へと迫り――。
――ズッドォォォォンッ!!!――
「「ッ…!?」」
「アッハッ…!」
その頭部を、一切の躊躇無く吹き飛ばした…。




