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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第六章:人魚の恋は泡沫のように
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海魔蠢く大迷宮

本日の投稿、2本目は夜に出します。


そろそろ主人公のメイン武器の一つや二つを用意したい所…何時迄も拾い物の鉄槍なのは映えないよね。

――カツッ…カツッ…カツッ…――


ランタンと松明の暖色が、青く暗い洞窟を照らす…。


「『静かだな?』」


反響するドルの声、天井の鍾乳石から滴り落ちる水音…岩肌を突く革靴の音、細やかな息遣い…ソレ等は、この洞窟を我が物顔で練り歩き、生温い洞窟の空気に相乗りし…私達の中にある、暗闇への恐怖を助長していた。


「この辺は…誰か来たのか?」


ウェズの言葉に、私の視線は壁に差し込まれた蛍光色の旗に刺さる…目に見えて人工物だ、加えてこの時代の文明には似合わない〝科学の色香〟が滲み出ている…ウェズの推測は9割方当たっていると見て良い…そして――。


「〝誰かが来た〟…そして〝帰れなかった〟が正解かしらね?」


少し進み…少し開けた空間の先に見えた…〝瘴気を帯びた獣の骸骨〟が…推測を真実へと変えた。


「綺麗に食べられた見たいね…骨に肉の欠片一つ付いていない…どころか血の一滴も見当たらないわ」


見つけた骨を良く観察し、見解を述べる…その骨は異様な程丁寧に肉をこそぎ落とされ、腸から毛から何から全て、骨を残して奪われてている…特に異常なのは、この死骸には全くと言っていいほど血痕が見当たらないと言う事だ。


まず、狩人や魔獣の仕業では無い…闘争の痕跡が見当たらない事を加味すると…自ずと浮かび上がるのは――。


「〝別の所で殺されて死体が運ばれた〟…って感じかな?」

「ソレか、バチクソヤベェ化物に骨の髄までしゃぶり尽くされた…って感じ?」


私の見解にドルがそう言う…成る程確かに、一度殺し血肉を腸皮を剥ぎ取って此処に放棄する理由が薄い…ドルの話も、現実ならば荒唐無稽に聞こえるだろうけれど…この世界に於いては現実との理屈がまるで異なる…正しく〝化物〟が居ても不思議では無いだろう。


「なら此処にはそんな素敵モンスターが少なくとも一匹は居るって事ね♪」


ソレは朗報だ…しかし、まぁそのモンスターは――。


――ゾッ…ゾッ…ゾッ…ゾッ…――


「少なくとも…〝この子達〟じゃなさそうだけど…」


私がそう言い、灯りと暗闇の境に蠢く〝その気配〟達に視線を送り…得物を握る。


「「「「ッ――――!!!」」」」


其処に居たのは、浜辺で蠢いていた塩吐き海牛に似た魔物の姿…しかし、どうやらその認識は少し誤りであるらしい。


――ジュウッ…ジュウゥゥッ――


「地面が焼けてる…〝酸〟…〝消化液〟の類ね」


――――――

【無し】

溶酸海牛ダイジェスティブ・シースラッグ】LV25/30


筋力:E

速力:F−

器用:G

物耐:C−

魔耐:C−

信仰:E−

幸運:F−


【能力】

〈酸液生成〉LV4/10、〈再生〉LV3/10、〈雑食〉LV8/10、〈嗅覚探知〉LV8/10、〈生命貯蓄〉


【称号】

〈死肉漁り〉、〈清掃屋〉


――――――


「浜辺の雑魚よりは強い、油断しないでね二人共」

「「応!」」


その警告を皮切りに、私達は三方に分かれて魔物達に斬り掛かる。


「――ッ(ブルッ!)」


ウミウシの身体がビクリと震える…その予兆を捉え、槍を回す。


――ボシュウッ!――


放出された消化液が槍の回転で弾き落とされ、その大部分は地面に飛び散り溶けて煙となる…その代償に――。


――ボロッ…――


盾となった槍は再利用不可能な程にボロボロに溶けて崩れていく…やはり、生半可な鉄ではもう魔物の攻撃を受ける事も難しいか。


――カランッ…!――


「――そろそろ、〝買い替え時〟かしらね?」


――ジュウゥゥッ!!!――


ウミウシの吐き捨てた消化液を片腕で抑えながらそう言い、胃液の放出を続けるウミウシの口に腕を押し込む。


――ゴリッ!――


「あら…深いわね…もう少し奥かしら?」


胃液をゴポゴポと吐き捨てながら、体内を弄られるウミウシの、震える身体から目当ての物を探しながら…音を聞く。


――ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ!――


ソレは魔物の〝心音〟…弄る程にその心音は近付き…体内に波及する震えが明確にその居場所を告げ…私の腕がソレを掴む。


――ギュッ!――


「ッ〜〜!?!?」

「うん、見つけた♪」


掴むと同時に、ウミウシの身体が大きく跳ねる…そして、全身の身は硬く締まり、ウミウシの身体から吹き出す胃液はその量と質を大きく高め、私の皮膚を蝕んでいく…けれど。


――ググッグググッ!――


その苦痛は遥かに軽く、私は腕を引き抜き…ウミウシの腸を引き千切りながら自身の傷を修復する…。


「ッ〜〜〜〜!?」


――ブチッ!――


そして、完全に引き千切られた瞬間ウミウシはビクリと大きく広げた後…ドロドロに溶けて消える。


《溶酸海牛を討伐しました!》

《〈戦利品:溶酸の粘性液〉を獲得しました!》

《〈戦利品:海蛞蝓の内臓膜〉を獲得しました!》

《〈戦利品:水魔石(マナジュエル・ブルー)〉を獲得しました!》


――ジュウウゥゥゥッ!!!――


「うん…やっぱりイベントだけあって、報酬は美味しいわね♪」


引き抜いた腕に握られた、青々と輝く魔力の結晶を鑑賞しながら、私はソレをインベントリに放りこむ…成る程、コレかイベントエネミー…確かに素材ドロップが美味い…この程度の魔物を狩り続けるだけで一財産は築けるだろう…けれど。


「――でも、まだ〝足りない〟…この程度じゃレベルアップには程足りないわ…♪」


視線が捕らえるのは、暗闇から私達目掛けて迫りくるウミウシ達の群れ…どれもこれもが敵意に満ち、溶かし殺そうと粘性の消化液を降らせてくる…数はひぃふぅみぃと数えるには些か多く…未だに洞窟の奥地から湧き出して来る…。


先程までの静かな洞窟探検とは一転して、騒がしい乱戦が始まり…私の視線は、ウミウシを蹂躙する二人の見惚れる様な立ち回りと、止め処なく溢れてくるウミウシ達の〝出処〟へ向かう。


「……あの〝奥〟からね?」


無数に分かれた分岐路…その一つから聞こえてくる、海蛞蝓共の這いずる音に私はそう確信し…二人へ合図を送る。


「二人共、ある程度処理したら付いてきて!」

「ッ…オッケー!」

「何か見つけた感じ?」


その言葉に私は肯定の返答を返すと、彼等の殲滅がより加速する…風が荒び、獣の叫び声が木霊し…洞窟が揺れ動く…そんな彼等に混ざるように私も一度、目的を切り替えてウミウシ達に矛先を向ける…。


――ギチギチギチッ――


まだ見ぬ〝海蛞蝓達の大元(エリアボス)〟に、想いを馳せながら。







――ピチャッ…ピチャッ…ピチャッ…――


滴り落ちる水音に混じり、微かな〝異音〟…その先で生じる〝眷属の消失〟が…ソレを目覚めさせた。


『―――?』


眷属が〝死している〟…ソレ自体は、おかしな事では無い…ソレは〝己の眷属〟に備わった本来の役割だからだ…しかし、死の間際に発せられる反応はソレにとっては不可解極まりない事であった。


『眷属が交戦している』


与えられた役割には当て嵌まらない〝出来事〟にソレは困惑しつつ…己の役割を全うし…新たな〝眷属〟を産み落とす。


『死肉を喰らい、生命を捧げろ』


そう…眷属達に使命を刻み付けながら。

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