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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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夏風誘うは秘密の依頼

本日の投稿、2本目は…現在制作中、本日投稿可能かは未定。


どうも皆さん、作者の泥陀羅没地です。


一応、コレにて本章は締め…次話から新章の予定です…はい、数十話を経て〝イベント章〟です。

――カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…――


世界の全てが色褪せた…その空間で、〝ベルゼ〟は…己の対面に座る〝謎の男〟に気が付いた。


「〝――〟」


〝何者だ〟…そう、言葉を紡ごうとしたその時…ベルゼは気付く…〝声が出ない〟…否、ソレだけでは無い。


――シーンッ――


〝身体〟も、動かせない…瞬きも出来ず、指の一つも動かせない…完全に〝静止した状態〟で…ベルゼは当惑の視線を〝ソレ〟へ向ける。


――カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…――


残念ながら、〝君程度〟じゃ、この状況は打破できないよ…〝時間に囚われている〟様じゃあ…僕に指一つ触れる事は出来ないさ」


黒く焼けた褐色の肌…顔はローブで覆い隠されて居るもののその奥から覗く宝石の様に紅く、人を魅了する瞳と、艶のあるキメ細やかな〝黒髪〟が…姿を見せずともソレの〝魅惑的な姿〟を想起させる。


「〝お前は誰だ〟…と言いたげだね……なぁに、君も良く知ってる男さ…あぁまぁ…〝この姿〟と君の知る〝僕〟とでは、どう足掻いても正体が符合する事は無いだろうけどね」


そんな事を考えていると…怪し気な〝ナニカ〟はそう意味深に言葉を吐き…その手に握られた、鈍色の輝きを持つ〝時計〟を手慰みに弄りながらベルゼへ告げる。


「――いやぁ、〝第一イベント〟では災難だったねぇ…土壇場で裏切られ、〝アレ〟の仕掛けた陰湿な契約で力も奪われて…傲岸不遜な支配者から、無様な道化に転がり落ちて行く様は…中々に見応えが有った♪」


その嘲りが多分に込められた、人を不快にする事だけを考えているかの様な物言いに、ベルゼは苦虫を噛み潰したような思いを心中で感じながら…ただソレの不快な言葉を静聴させられる。


「ん――〝良いから用件を言え〟って?…そうだね、君を小馬鹿にするのは楽しいけど…ソレに感けてると折角他の連中の目を盗んで君達に接触したって言うのに、〝同僚達〟にバレかねないし…うん、単刀直入に言ってしまおうか」


その地獄にベルゼが心底面倒臭そうな視線を向けると…男はそう言い…動けない男の目の前に表れ…己が此処に来た用件を伝える…。


「――〝君達〟に、〝依頼〟をしに来たのさ…とってもとっても、大事な〝依頼〟を…ね♪」



○●○●○●


――カランカランカランッ――


店頭のドアベルが鳴る…ソレはつまり、〝当店〟への来客を意味する…故に己は、店売りの〝品々〟を磨き、清掃し、或いは〝汚れ〟て価値が下がらぬよう…〝処置〟を施す手を止める。


「――〝ラック・パール魔法店〟にお越し下さり、誠に有難うございます」


何時もの言葉、何百回と、何千回と同じ言葉に同じ意味を乗せて紡がれた…スカスカな〝歓迎の言葉〟を紡ぎ…現れた〝顧客〟の詳細を値踏みする様に視線を其処へ向けた。


〝黄金の鬣〟か、〝白毒の蛇〟か…或いは〝万能の無形〟か…或いはまだ見ぬ〝原石〟か、それともただの鈍石か…そんな思考をおくびにも出さずに見た…その先には――。


「やぁ…〝景気はどうかな?〟…〝■■■■■〟」


原石でも無ければ鈍色でも無い…ましてや〝客〟ですらない〝来訪者〟が居た。


「――これはこれは…〝観測者の長〟が直々に〝外界〟へ降りてくるとは…珍しい事も有ったものですね」


内心で抱いた驚愕を顔に出さず…いつも通りの装いで〝ソレ〟へ言葉を掛ける…すると。


――ジィッ――


忌まわしい…人の内面を見透かした様な色褪せた瞳を己へ向けながら…ソレは人の良さそうな面の皮を貌に貼り付けて首を横に振る。


「いやいや…君達に会いに行く予定が無かっただけで、割と頻繁に〝向こう〟には行ってるよ?…先日だって、愛娘とニュートで美味しいデザートを楽しんでいたしね…見てなかったのかい?」

「生憎、〝他のモノ〟に熱を上げていたもので」

「ふむ…まぁ凡そ察しは着くね」


ソレがカウンターに近付くのを見計らい、椅子を寄越す…すると、ソレは感謝を軽く口にしながら私の前に対面し…私はソレへと問いかけた。


「して…〝ラック・パール魔法店〟で何をお求めに?…貴方で有れば、この店に揃えているほぼ全てを〝手に入れられる〟筈では?」

「分かっているなら話が早い…〝この場所でしか手に入れられないモノ〟であり、〝創造者たる私でさえ創れないモノ〟を求めて居るのさ…何か分かるかな?」


己の問い掛けにそう答え、此方を試す様な物言いに私は思考を巡らせてみる、〝消耗品〟や〝魔道具・呪物の類〟では無いだろう、この世界に存在する全ては、〝創造者〟である目の前のソレの片手間で再現出来る、本物を呼び出す事も複製する事も…それほどの力を…目の前の〝コレ〟は有しているのだ……と、なればこの場所の利用価値と言うのは、かなり限られて来る…つまり――。


「――我々〝ラック・パール魔法店〟が保有する〝人脈〟…でしょうか?」

「〝90点〟…流石、〝あの子達の中でも指折りの頭脳派〟…完璧に近い回答だ」


私のその回答に、目の前のソレはそう言い笑う…どうやら概ね正解らしい…とは言え、数秒とは言えそれなりに答えを絞り出したのだ…〝100点満点〟といかないのは些か納得がいかない。


「ほう……では、残り〝10点〟は如何なる採点で?」

「〝魔法店の人脈〟でななく、〝君〟――〝トレーダー個人〟としての〝人脈〟が欲しいのさ」


私の追求にソレはそう答えると…談話を終わらせて〝本題〟へ移る。


「君に〝依頼〟を出したい…次のイベントに使う予定の〝島〟で…〝とある遺物〟が何処かに眠っていてね…ソレを〝探す為の人員〟を君の人脈の中からセレクトして欲しい」

「……その〝遺物〟とは?」


ソレの内容に私はそう問い返し…彼が求める〝遺物〟の正体を聞くと…ソレは色褪せた瞳に……若干の〝愉悦〟を滲ませて…その口を開く。


「〝海の邪神の偶像〟だよ…分かるだろう、〝この意味〟が」

「ッ…!」


そして知らされたその正体は…予想打にもしていなかった〝悍ましい忌物〟の情報だった。


「――成る程……それは…〝一大事〟ですね」

「そういう訳で、君の〝人脈〟から…探し物に有用で、かつ荒事に慣れた者達を探し出して欲しい…彼彼女等を使い、〝件の偶像〟を手に入れ…私へ寄越してくれ…と言うのが〝依頼〟だよ」


ソレの言葉に、私は考える…その気になれば、〝あの忌物の回収〟など、この男一人で事足りるだろう…しかし、敢えてそうはせず…こんなにも回りくどいやり口で回収を試みる…と言う事は…つまり。


「――承知致しました…では、此方で必要な〝人材〟を御用意致します」


〝件の偶像〟が、コレの言う〝イベント〟に関わっている…と、言うことなのだろう。


「うん、宜しく…〝この依頼〟は…他の〝君〟にも発行してもらっているから…依頼形式は〝競争〟になる」


その思惑に、私は胸中に満ちる〝興味〟を抑えながら…平静にその依頼を受領する…すると、ソレは用件を終えたのか、椅子から立ち上がり己へ背を向け立ち去る――


「――〝報酬〟は、君達にとって凄まじい価値を誇る物を用意させて貰おう…だから、報酬か欲しければ、君も〝良い人材〟を揃えておくれよ?」


――最後に、己を焚き付けるような一言を添えて…。

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