大戦の予兆
本日の投稿をば。
そして、次回か次々回辺りに今章を締めようかな!
今章に上がらなかったネームドキャラはまた今度活用する予定!…特に〝シュテン君〟と忍者カメレオンの彼こと〝インビジブル・ニンジャ〟君は出番を既に練っているので御安心(執筆ネタ的な意味で)
それでは、本編をどぞ!
「――〝成る程〟…〝魔獣〟――〝主らの同郷者の手によって、ニュートの街は陥落した〟…と」
重く…その声が木霊する…その声に、誰一人動こうとしない…レリックも、ドクター、アークも…家臣達でさえも…。
荘厳な〝玉座の間〟は、錯綜する思考の沈黙で満たされ…人の王は、年相応の貫禄と威圧感のある立ち振舞を維持したまま…その思考を悟らせない様に…ポーカーフェイスを続けたまま…〝賓客〟を…特に〝聖獣〟と呼ばれる、彼方からの〝来訪者〟を見る。
(コレが…〝人の王〟か…凄まじい威圧感だな)
(〝看破〟は弾かれたか、流石…第五エリア相当に王都を構えるだけは有るって事かな)
そして、彼等聖獣もまた…頭を垂れながら〝人族の王〟…〝東北の大国〟…〝ロードハイル〟…この大陸最大の領土を誇るその国の〝長〟…〝国王ガウレス〟を観察していた。
――ジッ――
互いに、相手を観察する…沈黙の中の情報戦は、その時…国王が発したその一言で終わりを告げた。
「――で、あるならば……〝我々〟は…貴君ら〝彼方の獣〟を即刻捕縛、及び〝駆除〟しなければならんな」
「ッ――ちょっと待て「待たん」」
その瞬間、沈黙は破られ…同時に緊迫した空気の中、国王の一声で近衛達が聖獣に、そしてその言葉に異を唱えようとしたレリックに刃を向ける。
「――ほう…僅かばかり、微塵の動揺も見せんか…〝彼方の獣〟は殺しても何処かで蘇ると聞くが…ソレ故、死が人よりも軽いと言う事か?」
刃を突き付けられ、それでも尚…一切の動揺を見せずに己へ顔を向ける一人と一匹に…国王ガウレスは、少し驚きを見せて言う…そして、その言葉の後を継ぐのは、家臣達でも、レリックでも無い…白鴉を肩に乗せた…学士風の少年だった。
「――先ず、無礼な立ち振る舞いを謝罪しよう…申し訳無い、生憎この時代の礼儀作法にはそう明るくなくてね…国王相手に不躾な態度を取ってしまうこと、君達貴族への礼節を欠いてしまうことを謝罪しておく…大目に見て欲しい」
ドクターはそう言うと、自身の思う礼節…とどのつまりお辞儀を浅くしながら…国王へ視線を戻す。
「質問の答えだが、国王ガウレス…我々とて死は恐ろしい…半ば不死身とは言え、多少の痛みは感じるのだ、加えて大自然に身を置く以上は凄惨な死だって経験する…痛みを感じ難いとは言え、そんな死に方に精神にストレスが掛からない筈も無い」
「ほう…では、この状況は…貴君等にとっては死する程の事では無いと?」
そして、ドクターが弁論すると、ソレに耳を傾けていた国王が何やら含み有りげにドクターへ視線を送ると…ドクターは吐きかけた溜め息を何とか堪えながら、国王へ返答する。
「…下らない茶番は止め給えよ国王、君が我々を害する気が無いことくらい御見通しだ…そも、貴重な情報源である我々と敵対するメリットが今の場で存在しない、ならばレリックを残して残りを始末すれば良いと考えるだろうが、レリックは飽くまで人命救助に奔走していただけの〝救助者〟であって、事の仔細を詳しく説明出来る〝解明者〟では無いそして、ソレを証明する手段が無い以上…君達は我々へ警戒の為に刃を向ける事は出来ても直接攻撃する事は出来まい?」
つらつらとそう、舌を回して見せるドクターに…家臣達は怒りを滲ませた視線を、レリックとアークは慄き半分、畏敬半分の視線を…国王は、続きを催促する様な視線を向ける。
「君が危惧しているのは〝我々がニュートの街を落とした彼方の獣の一団〟である可能性…しかしソレは現状存在する〝元ニュートの街防衛戦線〟と、其処で人と共に魔獣を狩る〝聖獣達〟の存在によって〝彼方の獣にも二つの派閥が有る〟と否定出来る…加えて、君の眼には〝我々が何方の側〟に居るのかが分かる筈だ」
そう言うと、ドクターは肩を竦ませて国王を見上げる。
「それでも万全を期す…と言うのなら、このままでも構わないがね」
そうドクターは締め括ると…玉座には重い沈黙が満ち…刹那…野太い笑声が玉座を響かせた。
「フッハッハッハッハッハッ!――成る程、成る程…獣の見た目にして、深き知性を持つのだな、〝彼方の獣〟と言うのは…成る程、コレでは〝竜狩りのレリック〟が居ながら〝ニュートの街が魔物に敗れた〟と言うのも納得と言うものよ…〝余程の切れ者〟が…〝魔獣の側〟にも居ると言う事だな」
その笑声の主、国王ガウレスはそう言い…愉悦の中に一抹の真剣さを帯びた声で…ドクターを見下ろすと…彼への賛辞と共に…〝交渉〟の段に入る。
「――良かろう、聡き〝聖獣の賢者〟よ…貴君等の〝要請〟を聞こうでは無いか…出来うる限り、協力してやろう」
その言葉にドクターはアークを一瞥し…短く視線のやり取りを交わした後…ドクターは改めて、国王ガウレスに視線を送り…交渉の内容を述べた。
「――それは有難い…では我々〝聖獣〟側の要望として…先ずは〝前線〟の戦力を増強して欲しい…人員は兎も角として〝防壁建造用の資材搬入〟を求める…無論、君達だけでなく〝元ニュートの街〟…そして、〝現キムラヌート〟と名を打たれた魔物の街に面する全国とのコネクションが欲しい…可能かな?」
●○●○●○
「――〝戦線〟は今、どうなっている?」
人間達と聖獣が、接触し…協定を結んでいる一方で…嘗て人が住まう都…その成れの果てである〝瘴気と魔物の街〟の…その領主館に位置する場所で…禍々しく作られた〝大樹の玉座〟に腰掛けながら…蟲の魔人は、己の部下である〝寄生虫〟に問う。
「せ、セセ――〝戦線は依然膠着〟…〝キムラヌートの瘴気領域〟ギリギリで、人間共は防衛戦を張っている様デス」
その寄生虫は、まだ覚束無い動きで彼へ敬礼し…彼へ状況報告を行う…その、決して喜ばしくは無い報告に蟲の魔人、〝ベルゼ〟は眉間に深い皺を刻みながら…沈黙する。
「ッ…そうか…引き続き、〝戦線を記録しろ〟…それから〝傘下に下った魔獣〟へ通達しておけ…〝不必要な戦線の拡大は止めろ〟と」
「〝了解、我が主〟」
そして紡がれる命令に、〝蟲の眷属〟はその場から飛び去って行く…やがて、伽藍堂と成った〝会議場〟の中で…ベルゼは思考を巡らせる。
(――戦線に〝名持ちの聖獣〟が居ない…特に、〝アーク〟と〝ドクター〟の姿が見えないのは不穏極まる…聖獣の中でも特に〝人間寄り〟なあの2匹が、不安定な戦況を放っておく筈がない)
「――ともすれば、既に〝人間との協力〟に邁進しているか?」
傲慢だが、決して愚鈍ではない彼は…そう言い、己は見ず知らず、知る由もない聖獣の動きをピタリと言い当てる。
「――と、なればこのままでは〝負ける〟…物資も統率も取れていない現状…〝キムラヌートの悪業樹〟だけが頼りでは、勝算は無い」
彼はそう考え…思考を巡らせ…場に沈黙だけが残った…その時。
「『随分と』――〝王様らしい面〟になって来たじゃないか…〝ベルゼ君〟」
不意にそんな声と共に――〝世界〟が…〝動きを止めた〟




