旧き古き人の神
本日の投稿…遅くない?
次の章の布石を撒き撒きしないとね?…。
――カッ…カッ…カッ…カッ…――
其処は…何処かの〝神殿〟の中…石畳の上を奏でる鉄靴の音と共に…白く清らかなその場所に、数人の〝人影〟が揃い踏んで居た。
「――随分と酷い格好だな〝イザニア〟」
「ハァ…ハァッ……不覚を取った…!」
肩に手を回され、支えられるようにして神殿を踏むローブの片割れ…イザニアと呼ばれた神官が…そう言い、血で塗れた身体をローブで隠す。
「何て酷い〝呪詛〟…〝苦痛だけを与えるモノ〟…決して生命は奪わない…その代わりに高位神官でも解呪は不可能と言うモノ…でしょうか」
そんな神官、イザニアの容態を…緑髪に三つ編みが特徴的な眼鏡の修道女が分析し、イザニアに触れる。
――ポゥッ――
「――ッ…なんて嫌な〝呪詛〟…推察通りの効果に加えて、〝祝福〟の性質も持ち合わせている…呪詛でありながら〝祝福〟としても存在している…〝生命を奪わない〟のは、コレが原因ですか…!」
「……つまりフィオラ、イザニアの呪詛は〝祝福〟でもあるから、ただ解呪しただけじゃ直せないってこと?」
「平たく言えばそうです、我々では…精々痛みを和らげる位しか…」
イザニアを診る修道女、フィオラの言葉に…その場にいる残り二人も顔を顰め…黙する。
――シャンッ――
その時…不意に響いた〝鈴の音〟と共に…4人を奇妙な感覚が包み込む…その感覚に、四人が瞠目した…その時。
「『あぁ、憐れな我が子等よ…案ずるな』」
不意に…修道女…フィオラの口からそんな声が響き…フィオラの纏うローブが純白に染まる。
「「ッ…態々、貴方様がお越しに……!」」
「申し訳、有りません……〝我が主〟…!」
その〝変色〟に、残る3人は驚きながら大地に膝を付き…頭を垂れる…そんな彼等の変容に対して…雰囲気をガラリと変えたフィオラは…ローブを目深に被りながら…他の彼等と同じ様に、跪こうとするイザニアを制し…その傷に触れる。
「『畏まらなくても良い…我が従僕、我が同胞、我が愛すべき信徒…お前達は我が〝手足〟…故に、我が身に巣食う毒を、我が手で癒やすだけの事』」
ローブの〝何か〟はそう言いながら…イザニアの胸に手を伸ばし…その胸に触れる…すると。
――ゴポッ!――
そんな、嫌な泡立つ粘液の音を奏でながら…イザニアは喉を押さえる…ボコボコと異様な音を立てて腹は歪み…異様な程膨張した喉から何かが迫り上がってくる…その苦痛に、イザニアが限界を迎えて、閉ざしていたその口を開いた…その瞬間。
――ブワァァァァァッ――
その口からはビチャビチャと、赤黒い粘性を帯びた血液が垂れ流され、同時にドス黒い瘴気が白い神殿を異質に侵す。
「『――姿を見せよ、異端の神よ』」
白いローブのソレがそう言うと…黒く神殿を犯していた〝呪詛〟は、ブルリと脈打ち…その瞬間、穢れに強い敵意を向ける神官達の一人…イザニアと共に動いていた、黒いローブの神官に異変が起きる。
「グッ…ガッァァッ…な、にが…私に、何かが入って――『異端の神とは失敬な…テメェも元を辿れば〝此方側〟だろうになぁ』」
呪詛の塊が、今度はその男に取り付き…驚く男の身体を黒で染め上げると共に、不気味に笑みを浮かべた道化の仮面がその顔に浮かび上がり…男の者とはまるで違う〝謎の声〟が、その仮面の内側から発せられる。
「『……お前か…〝虚無の魔物〟』」
「『正確には、その〝残穢〟だぜ我が友よ…保険の保険って奴だ…〝贈り物〟は喜んで貰えたかな?』」
忌々しげな声色の白いローブのソレに対して、黒い道化の男はケラケラと笑ながらその懐に収められていた手紙を見せる。
「『此奴が予定通りお前に手紙を渡してくれれば、俺も残業せずに消滅出来たんだがなぁ…ちと順序が狂ったか?』」
「『……』」
「『あぁ、心配するな…其処の小僧の呪詛は致死性は無いし…此奴に至っては飽くまで保険を掛けただけの〝憑依〟だ…用が済めば剥がれて消える……〝お前達〟は〝人間〟を都合の良い道具として〝邪神狩り〟に使ってたと思っていたんだが……何万年も〝人の神〟をしてると情でも抱くのかね?』」
嘲弄と、疑問と、少しの感心を込めて道化はそう言うと…白いローブのソレは暫しの沈黙の後…道化に問う。
「『……用件は何だ?…よもや嘲る為だけに斯様な真似をした訳ではあるまい』」
「『ぶっちゃけ他の連中なら、〝お前達を不快にする為〟にこんな事すると思うぜ?…特に〝狂気の彼奴〟はそう言う類の神格だろ……あぁ分かった分かった…脱線したよ悪かった…まぁ、当然俺が此処にいるのは〝お前〟に用が有ったからだ……実を言えばだな…〝お前の兄弟〟がそろそーろ復活しそうなんだよ』」
道化がそう言葉を紡いだその瞬間…白いローブのソレはピクリと身体を震わせ…その瞬間、その純白で清廉な装いとは対極に位置するかの様な…凄まじい敵意と殺意で場を満たす。
――ブワッ――
「『オイオイ、お前の可愛い部下が其処にいるの忘れてないか?…アンガーマネジメントだぜ我が友よ』」
「『ッ…!』」
そのあまりにもな殺気に、その場に居た彼等は殺気を向けられていた訳でもないのに顔を蒼白くし…恐怖で身体を震わせる…その姿を見兼ねた道化は宥めるように白ローブのソレにそう言うと…白ローブの〝ソレ〟は…我に返り、殺気と敵意を何とか抑え込む。
「『良し…落ち着いたな?……んまぁ、何万年前に念入りにぶっ殺した奴が蘇るってんだから仕方無い事だがな…まぁ兎に角、〝あのタコボウズ〟が蘇ろうとしているって事で…お前さんに協定を持ち掛けに来た訳だ』」
ソレを確認すると、道化はそう言いながら…白ローブの方に歩を進めてゆく。
「『……ほう……お前は、〝アレの復活を反対する側〟なのか』」
そんな道化に、白ローブのソレがそう言うと…道化は肩を竦ませながらローブのソレに言う。
「『あたぼうよ、あのタコが蘇ると俺が折角整えた〝舞台〟が文字通り水の泡だからな…あのタコ助にはもう何万年か寝惚けて貰わないと困る…ってな訳で、協力しようぜ我が友よ』」
そして、その言葉と共に差し出された手に…白いローブの〝ソレ〟…神殿の主は訝しげに良く観察した後…警戒しつつも、その掌を握る。
「『……良いだろう、貴様の蛮行も…一時不問とする…詳しくは、あとで聞こう』」
「『グッド…此方もプレゼンの準備をしておくよ……それじゃあ、仕事は済んだし俺はコレで…あぁ、其処の小僧と此奴には悪い事をしたな…詫びと言っては何だ、お前達の身体の〝膿〟も直しておいてやるよ』」
一頻りの対話が済み、仮とは言え協定を結んだ事を道化は確認すると…黒い影の様な鴉を一羽虚空に飛ばすと…その役目を終えて…ボロボロと崩れてゆく…。
「『我が子等よ…この事は他言無用であるぞ?』」
「「「は、ハッ…!」」」
ソレを一瞥すると、神殿の主は自身の信徒にそう言い…自身の〝憑依〟を解除する。
「―――ハッ!?…あ、アレ?…皆さん…どうしたので?」
そして、静謐な神殿に残るのは…困惑気味に、冷や汗を流して強張る同胞へと疑問を投げるフィオラと…自身の受けた恐ろしい殺意の余波を食らわずにやり過ごせた彼女へ、恨みがましく視線を送る3人の信徒だけであった…。
以上、この世界で〝人間を庇護する神様〟と、何処かで見覚えのある〝ナニカ〟の意味深邂逅パートでした。




