荒野と湿地と不思議な出会い⑥
2本目?…それとも1本目?…兎も角どうぞ。
フッフッフッ…次は誰を書こうか…そろそろこの章も締めに掛けようか。
――ドサッ!――
「――さぁ、早速〝契約〟を始めようか息子よ!」
「…もう息子判定なのか」
玉座に引き摺られたファニルは、巨大な蛇の胴体で巻き付かれながらも、脱力し…自身を〝息子〟と呼び、剰え〝パパ呼び〟を強要してくる残念美白イカレポンチにげんなりとした表情を向ける。
「我との契約は良いぞ〜…なんて言ったって我は贄をそんなに取らんし、信者には協力的な神故な!――毎日我に信仰を送り、我の信者を増やす様働いてくれれば良い!」
「――つまり、〝定期的に生贄を供える〟事、ほんで〝信者を集める事〟が契約の条件かい?…神s「パパだ」…パパ様よぉ…」
ファニルの呼称を訂正し、満足気に頷くと…その神はファニルに視線を送り…その手でファニルの鱗を撫でながら言葉を続ける。
「その通り、我が提示する〝条件〟はコレだけ…心配せずとも我はあのクソッタレなカエル野郎と違い、贄をそう多く求めん…月に一人か二人…人間か、それなりの力を持った魔物を供えてくれれば良い…重要なのは信者を増やす事だ」
「つっても…今どき〝宗教勧誘〟は中々上手く行かねぇんですが…どうするおつもりで?」
「フフンッ、其処はパパに任せよ…〝この魔道具〟を使えば良い…この世界に来てから作った物で…使えば強い暗示と共に〝我の信徒〟とする事が出来る…余程の精神力を持っていない限りは、そう安々と抗えん」
そう言い懐から木製の腕輪の姿をした〝洗脳装置〟をファニルに取り付けると、ソレは不意に目から光を失くし…ファニルに言う。
「そう、この呪物を使えば例え我を裏切りあのクソカエルに着いて行った裏切り者も頭からつま先まで我への信仰心で満たす事が出来る…裏切り者には死よりも辛い罰を与え、一生我の駒として働かせ、擦り切れ使い物にならなくなったらボロ雑巾の様に捨ててやる…我を捨てた事を後悔しながら枯れ果てて死ねばいい…!――お前は、我を裏切らないでくれるね?」
「ッ…あぁ、了解(コッワ!?)」
「――お前は良い子だ♪」
不意に見せる、悍ましい憎悪にファニルはそう心の中で呟きながら…穏やかで朗らかな様相のソレへ、ファニルは問い返す。
「――そ…れで、だ…アンタの信者になるメリットは、勿論教えてくれるんだよな?」
「当然だともッ…先ず、我の性質の一部を引き継げる…〝呪術〟が扱える様になり、生半可な呪詛や、軽い魔術を弾く〝耐魔の鱗〟を授けられる…勿論耐物にも補正が乗るぞ!…そして、何か困った事が有れば我に呼び掛ければ応答しよう!…出来る範囲の事なら何でも教えてやるぞ!」
「………成る程」
その言葉に、ファニルはされるがままの姿勢で…熟考に耽る。
(正直、性格がちと面倒なだけでメリットはデカいんだよなぁ…神様を名乗るだけ有って、かなり強いし…口振り的にある程度、大抵の知識は持ち合わせてるんだろう…デメリットも、そうキツくは無い……うん、性格も…まぁ許容出来るか?)
「――アンタの話は分かった…その上で熟考した結論だが……改めて、その〝契約〟を受け入れるぜ」
「ッ〜〜〜〜〜!!!!」
その言葉に、ソレは声にもならない声を上げて…ファニルを強く抱き締める…その異様な程高いテンションに、ファニルは振り回されながら…何とか宥めようと声を掛けんと口を開いた…その時。
――ブワッ!――
不意に、〝ソレ〟から…真っ黒な〝瘴気の蛇〟が姿を現し…ファニルへ溶け込んで行く。
「〝契約は成された〟…〝我が信者ファニル〟へ…〝洗礼〟を…〝我が力を受け入れるが良い〟…〝汝は我が血族となりて〟…〝末席に籍を置かん〟」
ソレは恐らく…必要な工程なのだろう…ファニルを満たす黒い瘴気の蛇がを受け入れながらファニルは…神々しく己を見下ろす白髪の美男に視線を送る。
「――〝なれば汝、我が真名を刻むが良い〟…〝我こそ偉大なる旧支配者〟、〝汎ゆる蛇種の祖〟…〝呪詛の毒を手繰りし蛇神〟――〝父たる〝イグ〟である〟」
《新たな【称号】を獲得、〈イグの加護〉を獲得しました!》
そのソレ…〝蛇神イグの名乗り〟と共に、ファニルの脳裏にはそんなアナウンスと共に、〝加護〟が刻まれる…すると、儀式は終わったのだろう…イグはふぅ…と、一息つき…その切れ長の瞳でファニルを見据え…破顔する。
「コレで正式に〝パパ〟と成ったな!…我が子ファニルよ!」
「――んまぁ、形式上そうなったのか?…だとしても流石に〝パパ呼び〟をさせるのは勘弁してくれねぇか?…せめて旦那か、ボスか…妥協して親父にしてぇんだが…」
「む…むぅ……いや、この際それも良かろう!――何はともあれ、我のこの世界〝初の信者〟だ!…コレからの働きに期待しているぞ!」
「了解…んまぁ、ぼちぼちやっていきますわ…期待され過ぎるのはちと困るが、ある程度の成果は期待してくれよ、〝親父殿〟」
そうして、ファニルは数奇な因果の果て…〝神に使える信者〟と、〝神の血族〟としての地位を済し崩しに手に入れたのだった。
「――さて…と、我が子ファニルよ、お前に言っておかねばならんな」
「ん?…何だ親父殿?」
この時…ファニルは気付く由も無かった…。
「――先ず、目覚めたら必ず父に報告する事、そして必ず1度は父に顔を見せに来る事、撫でさせてくれたら尚良し、それからそれから――」
「――」
……己の運命が…この神との邂逅によって、数奇で、珍妙で、受難の運命へと決定付けられてしまった事に…。
「ガンバレー、新しい弟〜」
「あぁ、〝加護〟を通じて我が子等と会話出来る様にしておいたぞ!」
「ハハハ、アリガトウオヤジドノ」
〜〜〜〜〜
「うわぁ…僕〝アレの力〟を注入されてたの?」
「性格はどうあれ〝神としての力〟は一級品だからな…〝ホラ〟」
――ドロッ――
「うわっちょっ!?――大丈夫なのボス!?」
「流石〝呪詛の蛇神〟…割と真面目に組んだ対呪詛防御でも本場の呪詛は防ぎ切れんか…よっと」
「あ、ちゃんと治せるんだ…だったら良い…のかな?」
〈この作品の邪神性格コーナー〉(元ネタとは一切の関係は有りません、全てこの作品作者の設定です)
ツァトゥグァ:怠け者な性格、割と大雑把でお腹が一杯の時は大分寛容、逆に空腹だと余程お気に入りの信者でも無い限り動く御飯判定で食われかねない…ちゃんと神。
イグ:信者には超寛容、非信者には寛容or中立、裏切り者と敵対者は死ね。
基本的に中立者には信者になる様勧誘して来る、拒否れば洗脳からの信者化か、信者になるまで勧誘して来る面倒臭い神様。
メンタルは地雷どころかデーモン・コアレベルの不安定さで、個人的には一番関わりたくない邪神(傍目から鑑賞する分には楽しい)…〝ツァトゥグァを信仰する裏切り者の蛇人間達を文明ごと呪い殺した〟と言う側面がこの作品のイグに多く配合されている。
理不尽さはギリシャ神話と同レベル。




