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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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荒野と湿地と不思議な出会い④

2本目ェ…!

――ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…――


2匹の魔獣が谷底の影を進む…代わり映えのしない景色、延々と続く谷の道にファニルが若干の飽きを感じ始めていた頃…不意に、先導する黒蛇がその進みを止める。


「キシャッ」

「ッ…〝此処で終わり〟…なのか?」


その様子にファニルがそう問い返すも、その顔は怪訝に歪む…訝しげに黒蛇が見る場所を観察するファニル…しかし、其処は相変わらず代わり映えのしない〝谷底の断崖〟であり…ファニルの目には、どうしても〝ただの壁〟にしか見えなかった。


「〝キシャッ〟」


訝しげなファニルの事を尻目に、黒蛇は先程の声とは少し違う〝不思議な鳴き声〟で壁に語り掛ける…その鳴き声が響き…沈黙が二人を包む中……数十秒の間を置いて…遂に、谷底に変化が起きる。


――ズッズッズッズッズッズッ――


〝壁が蠢く〟…壁に刻まれた模様は歪み、ズレ…不自然に動く…その差異が齎す違和感の〝延長〟に…ファニルの瞳は、違和感の〝カタチ〟を見て目を見開く…。


「――〝擬態〟か…!?」


愕然とそう呟いたファニルの言葉を証明するように、岩肌を模していた〝ソレ〟は、徐々にその姿を赤い鱗に変えて…黒蛇と、ファニルの方を注視する。


「……シャァァ」

「キシャッ、シャァァッ!」

「…シャァ、キシシィッ」


黒蛇と赤蛇が、まるで問答する様に交互に鳴き合う…ファニルには、その言葉がまるで理解出来なかったが…どうやら、赤蛇が引き下がったのだろうと言うことだけが辛うじてファニルの理解を掠め…その場から退いた赤蛇の奥にある〝入り口と思わしき空洞〟に…ファニルは息を呑む。


「……ヤベェな…」


軽薄な余裕の仮面を被る事も出来ず、ファニルはその顔を引き攣らせる…と言うのも、空洞は先が見えない程暗く…その奥底から感じる〝異様な圧迫感〟が、まだ入り口に近づいてもいないと言うのに、ファニルを気圧し、本能的な恐怖を駆り立ててくるからだ。


「キシャ…キシァッ」

「〝行けば良い〟…んだよな?」


同じ〝感覚〟を感じている筈だと言うのに、己と違いドンドンと奥へ進んで行く黒蛇に、ファニルは畏敬を覚えながら…自身も恐怖に怖じける足を奮い立たせ、一歩踏み出す――。


――〝ジッ〟――


たった一歩…しかし、その〝一歩〟…前へ進むだけで…ファニルには、場の空気が倍の圧迫感を放った様に感じ、呼吸が荒くなる…〝ナニカが己を見ている〟と…ファニルの理性が、そう確信めいた感覚を告げて来る。


「ッ……とんだ、〝藪蛇〟だ…!」


金獅子とやり合う方が遥かにマシだったと、ファニルはそう後悔を吐き捨てながら…ゆっくりと、その入り口に進んで行く。


「……」


――ズッズッズッズッズッズッ――


ソレを見送ると、赤蛇は再び入り口に取り付き…その肉体で蓋をすると…〝岩肌〟に擬態し…世界は、まるで何事も無かったかの様に、静謐で満ちていた。



○●○●○●


「「〝信者〟に…なる…?」」

「そう、〝ボクの信者〟になるんだ…〝君達〟が」


その言葉に、二人は顔を見合わせる…どうやら、ピンと来ていないのだと、少年は二人の様子を見て直感すると…横になっていた身体を起こし、胡座を掻いて二人を見据え…提案を続ける。


「実は、ボクはこの世界の神じゃなくてね…別の世界では神としてそれなりに信仰されていたし、信者も大勢居たんだけど…此方に来る過程で信者は居なくなったし、ボクも本来の力を封じられて此処に縛られてさ…今じゃ、ボクに感応する人間に夢を介して接触したり、ボクを倒そうとやって来る魔獣とか、人間を食べて生活してたんだよねぇ…でも、そんな生活だと信仰は集まらないし、信仰が無ければボク達〝神〟は力を得られない…だから、此処でも〝信者〟が欲しいんだよねぇ…」

「……成る程」

「まぁでも、君達がその程度の願いではいそうですかって承諾しないのは分かってるよ…〝対価が無ければ人は動かない〟…道理だね、だからほら…〝最初の信者〟になってくれるなら、ボクも君達に大サービスしてあげるよ?」


気怠げに見えながら、巧みに交渉を始める少年…その言葉に二人は若干の興味を持ち、少年から〝交渉の続き〟を聞こうと少年の目を見る。


「――具体的に、〝どんなメリット〟あるの?」

「ん〜…そうだねぇ…先ず、〝加護〟による恩恵で君達の器を強化しよう…この世界で言う所の〝ステータス〟かな、ソレを補正出来る…勿論信仰が増えて神格としての力も強まれば、それだけ加護の効力も上がる…後は…〝異界の魔術〟も教えて上げるよ…魔力の少ない者や、魔術師じゃない者にも扱える様な物から、高度な魔術まで…ボクの知る範囲でなら1つだけ君達に教えて上げられる…勿論コレも、ボクの信者として、〝信者の仕事〟を熟して〝信仰を集めてくれた〟なら…その働きに応じて褒賞として教えたりもするし…どうかな?」


チサトが問うその言葉に、少年は考える様な仕草の後にそう言い…自身の信者になるメリットを説明すると…二人はその内容に顔を見合わせ、肯定的な雰囲気を醸し出す。


「……んじゃあ神様、具体的に〝信者の仕事〟って何をすれば良いのかにゃ?」

「ん…先ず、やっぱり〝信者を集めて欲しい〟かな〜…やり方は好きにしてもらって構わないし、仕事の為なら〝ソレ用の知識〟も幾らか与えるから…〝信者〟を集めて〝教団〟を作るのが良いかな…後は、定期的に〝生贄(御飯)〟が欲しいな〜…定期的に数匹…出来れば〝人間〟が食べたいかな…ソレさえ熟してくれれば他には言う事はなし…好きに活動してくれて構わないよ」

「……それじゃあ、〝信者になるデメリットの方〟は、なんですか?」

「う〜ん…〝無い〟……と言いたい所だけど、説明の不履行は〝契約破棄の一因〟にもなり得るし…キチンと説明するよ……先ず、ボクの〝性質の影響を受ける〟事が有る…コレはボクとの繋がり…まぁ、〝加護〟の効果が強くなれば強く成る程大きくなる物だ…今の状態だと……〝満腹度の消費量が増える〟って所かな…ソレ以外は…後は〝敵対勢力〟に狙われる…一応〝邪神〟の括りだからね…この世界に根付く〝人間の神〟と、〝他の邪神〟達に狙われる事も有るだろう…恐らく彼等もボクと同じ様に〝信者〟を使って来るだろう……コレが〝デメリット〟に入るかな?」


少年の言葉に二人は頷き…情報を整理する…そんな二人の様子を欠伸混じりに眺めながら少年はぼーっと時間を潰していると…相談は終わったのだろう、チサトとニャミィは2人、少年へ向き直り言葉を紡ぐ。


「「その〝提案〟…〝承諾〟する(ニャ)」」


その言葉に、少年は依然として気怠げな…しかし、何処か嬉しそうな様子で2人を見つめ…胡座の姿勢から立ち上がり…2人へ言う。


「ん……ソレは嬉しいなぁ……それじゃあ、早速〝信者〟として、〝契約〟しようか」


そして、少年がそう言葉を紡いだその時――。


――ゾッ!――


少年の〝背後〟に…凄まじい〝力の塊〟が姿を表した…。

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