荒野と湿地と不思議な出会い②
2本目の投稿…後もう少しニャミィ・チサト&ファニルPartは続きます。
――ゴクンッ――
「何か用?」
「「ッ!?」」
その姿を認識した瞬間…二人が取った行動は……〝戦闘態勢を取る事〟だった。
「ニャミィ…ッ」
「うん…コイツ…ッ」
一見すれば単なる齢幼き小童の一人…藍色の髪に、濁った黄金色の瞳をしただけの少年だ…しかし、その姿が欺瞞である事を、二人は理解している…何故なら。
――ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ――
空気が重く、明るい筈の空間が重く陰り…大地を悍ましく黒い障りで満たしていたからだ。
「うん…うん…久し振りの生贄は美味しいね〜…何百年ぶりかな?」
警戒する2人を尻目に、その少年はそう言い…築かれた死肉の山に手を付け、骨ごとその血肉を食らい飲み込み…腹に収めていく。
――ゴックンッ――
みるみる内に、生贄は平らげられ…最後の肉片を飲み込むと…その少年は気怠げな目を二人へ向け…ジッと、何かを考える様に立ち止まる。
(来る?…やっぱり戦いになるのかニャ!?)
(分からない…けど、下手に動くと死ぬ…!)
二人は一瞬の視線の交差でそうやり取りを交わし…最悪を想定して相方を逃がす算段を頭で組み立てる…互いに互いを観察し、沈黙が死臭で満ちた地下堂を満たす中…始めに沈黙を破ったのは…その少年だった。
「ねぇ、君達…其処に転がってる〝ソレ〟…食べても良い?」
「「ッえ?」」
少年がそう言い指を指した先には…首を切られ、床に転がる怪し気なローブの人間達が居り、突然の質問に二人は一瞬面食らう。
「ッ…うん…良いよ」
しかし、その沈黙にチサトは嫌な予感を感じてそう告げると…彼はふむと、小さく呟き…ソレから、二人へ言う。
「ならもらうね?……それはそうと、流石にこんなお粗末な儀式場じゃまともな隠蔽も出来ないし、〝連中〟に勘付かれると悪いから――」
――パチンッ――
そして、その言葉と共に少年が指を鳴らした…その時。
――ブンッ――
「二人共〝ボクの寝床〟に招待するね?」
二人の視界に映る光景は一変し…其処には文明もクソもない…真っ暗な大洞窟が広がっていた。
○●○●○●
「――チッ、一旦距離を離せたのは良いが…このままじゃジリ貧だな…!」
荒野を抜け、麦色の茂みを掻き分けながらファニルはチラリと背後を見る。
――ゴゴゴゴゴッ!――
迫りくる〝金色の獅子〟の姿が、己に猶予が無い事を知らせ…ファニルは小さく舌を打つ。
「此処から先は崖か枯木の森…なら、逃げ易い枯木の森に――」
そして、己に迫る逃走の選択肢を数秒の吟味の果てに…ファニルが遠目に見える森の方に意識を向けたその時。
『シーシシシシィィィィッ!』
「ッ!?」
不意に己の首元を締め付ける様な感覚と共に、耳元からそんな〝音〟が聞こえ…ファニルはバッと手で首元を振り払う…すると。
『シャァァァッ!』
そんな音と共に、ファニルの足元に子供の腕程は有りそうな太さを持つ蛇が地面に投げ棄てられ…霧散する。
「ッ何だ…今のッ!?」
思わずそう呟いたその時、ファニルは己に向けられた視線にバッと顔を上げ、其処を見る…すると其処には――。
「……」
ジッと、遠くから己を見つめる緑色の目をした黒蛇が居り…ソレはファニルと目が合った事を確かめると、その視線をずらし…ファニルの背後を見る。
「ッ…!」
其処で気付く、己の失態…突然の事に驚き意識を散逸させてしまった為に、稼いだアドバンテージは消え…レオナルドが近付く隙を与えてしまった事に。
「どうしたファニル、急に立ち止まるとは…とうとうオレとやり合う気になったか?」
能天気にそう言い、獲物を見るような視線でファニルを見据えるレオナルドに、ファニルはチッと悪態を吐き…思考を巡らせる…。
(クソッ…不味った!――このままやり合うか?――絶対NOだッ…もう一発隙を作って逃げるっきゃねぇ!…だがどうやって!?)
その思考は数秒に及び、十数メートルの距離にまで彼我の差は埋まる…そうして、ファニルが半ば敗れかぶれに炎を纏い…闘争の構えを取った…その時。
――『シャァァァッ』――
またもファニルの耳元から、そんな声が響き渡り…ファニルが眉を顰める…その時、ファニルの目の前で不思議な事が起こった。
――ザッ!!!――
「ッ!?――何だ!?…身体が動かないぞ?」
「ッ!?」
ファニルへ肉薄していたレオナルドの身体がピタリと止まり…まるで金縛りに遭ったかの様に不動のまま、レオナルドは自身の身体に目を落とす。
(〝止まった?〟…動かない、なら一方的に殴り殺すチャンスか?――いや、ダメだなまだハッキリと原因が分かってねぇ…いや)
その姿に、ファニルは思考を巡らせる…そして、この状況で立て続けに起きた〝奇妙な出来事〟に推測の線を繋いだ時…ファニルは自然と、己の背後を振り返る…すると。
「〝シャァァァッ〟」
深い緑色の目をした黒蛇が…その双眸を怪しい黄色の光で満たしながら…そう鳴き声を上げる…その様子にファニルは理解する。
「ッ――〝炎の吐息〟!」
刹那、ファニルの口から放たれた灼熱がレオナルドを包み込み…凄まじい炎は前を見る事すら赦さない。
「ッ!――〝動ける〟!」
常人なら、焼け死ぬ様な炎の熱気…しかし、ソレを受けて尚火傷の一つも負わないレオナルドは、不意に解けた〝謎の金縛り〟に疑問を残しつつ、その剣を振るう…。
――ブンッ!――
「ッ――消えた…!?」
しかし、其処にはもうファニルの姿は無く…レオナルドは一瞬に消えた〝玩具〟に疑問を浮かべる。
「…何処に消えた…〝転移〟…は、無いよな?」
(流石にオレでもまだ届かない〝転移能力〟を持ってるとは思いたくない…だとしたら、瞬間移動…それとも――)
「〝隠密〟か?」
レオナルドの視線が注意深く四方を彷徨う…砂粒の後、風に乗る音、大地を駆る動き…ソレ等全てに注意深く意識を払いレオナルドは〝捕捉〟を試みる…だが。
「……〝居ない〟…本気か…完全に〝見失った〟…」
どれだけ注意深く探そうと、其処にファニルの姿は無かった。
「……あの、〝金縛り〟……〝アレ〟を掛けた何かが、原因か?」
目標を見失ったレオナルドは、崖と枯木の森の二つを見渡し…それから、その歩みを枯木の森へと進める。
(〝この身体〟に呪詛を掛けられる相手か…〝何者〟なんだ?)
その心中に…強い〝警戒〟を刻んで…。




