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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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古聖堂の聖女

本日の投稿…そして、アークのストーリー進行です。


次はDr.アルス・アスクレスのストーリー進行を予定中、本日中に出せたら良いなぁ。

――ザッ…ザッ…ザッ…――


土砂降りの中を歩く…未だ、その肉体は完全に治癒出来てはいない…それほど迄に、此度の闘争の傷跡は深かった。


「……で、何の用かしら?」


己が住処へ帰投する道程…不意に現れた〝ソレ〟に、私は立ち止まり、問い掛ける。


――ザッザッザッザッザッ――


『……』


其処に居たのは、私を囲む様に姿を現し…ジッと私を見据える〝雷羊〟の姿。


(数は…〝24匹〟、流石にこの数相手じゃ幾ら此方が格上でも打つ手が無いわね)


その姿に、私は拳を軽く握り…〝戦闘〟に備える…しかし。


「――〝メェェッ!!!〟」


そんな電羊達の中から、一匹が空に響かせる様に鳴き声を上げると…周囲の電羊達は、一斉に膝を折り…私へ頭を垂れる…。


「……そういう事」


どうやら、此処を取り仕切るエリアボス…あの雷老羊に打ち勝った事で、此処のボスとしてあの子達に認められたらしい。


「本当に…〝戦闘狂〟な種族ね」


私は、土砂降りを散らしながら…頭を垂れる彼等を尻目にそう言い…帰路についた。




●○●○●○



――バサッ…バサッ…バサッ…――


何処かの誰かが、曇天で激闘を繰り広げていた一方で…日も傾いて来た〝王都カティア〟の空を一匹の白鴉が泳ぎ…ある場所へと足を運ぶ…。


――バサッ…バサッ…バサッ…――


其処は、白い壁と花に彩られた〝大教会〟…その上空を泳いでいた鴉…アークは、その敷地内にある…人目には触れられないよう花園と石垣で覆い隠された〝聖堂〟に足を踏み入れる。


――バサッ!――


「――久しぶりだね、〝聖女イーファ〟」

「ッ……おや、コレはコレは…お久しぶりですね、彼方の聖獣〝アーク〟様」


内部には、古いながらもしっかりと清掃手入れされた質素な内装が備えられており、その部屋の中心で…祈りを捧げている一人の美女が居た。


「相変わらず、君は美しいね」

「ウフフフッ、褒めても何も出ませんよ?」


その娘は、目の前の聖鴉へそう言い…花の様な笑顔を浮かべると…彼の目の前に歩み…静かに問う。


「〝彼方の獣が現れた〟…その神託が届いてから、ずっと…アナタが来るのを待っていたんですよ?…全く遅いです」


その言葉は、優しく…穏やかだが、少しの毒気を混じらせたその言葉に、アークは肩を竦ませながら、彼女へ弁明する。


「耳が痛いな…生憎と、此方も色々と有ってね…出来るだけ早く、此処に来ようとは思っていたが…〝ごめん〟」


その言葉に彼女は、クスクスと笑うと…彼を連れて、祈りの間を抜ける。


「赦しましょう…私が〝聖霊〟となって〝たった50年〟で戻って来てくれたのですから…200年、300年は掛かると思っていましたが…存外に、早く戻って来ましたね」

「……〝たった〟…か」


一人と一匹はそう言いながら、回廊を進む…その道程で交わされる会話は…常人には馴染みのないものだったが…二人はまるで気にすることも無く、回廊を抜けた先にある…その部屋へと辿り着く。


「――それはそうと、アーク様…アナタが此処に立ち寄った理由は把握しています」

「メインは〝懐かしい友人と会う為〟なんだけど…〝アッチの方〟は、まだ使えるなら、それは有難いね」


其処は、清潔にされた彼女の私室…所々に置かれた信仰の品からは、彼女の信心深さが見て取れ…部屋を飾る姦しい物品は、彼女が年頃の娘で有ると言う事を物語る…そんな部屋の、応接用のソファに彼女は腰掛けると…対面に折り立つアークと、アークが発したその言葉に彼女は肯定を示す。


「勿論、〝導きの聖女〟としての力は健在ですとも…早速〝導〟を読み解しましょうか?」

「うん、それは有難いね…〝幾つ見える〟?」


そして、聖女はアークの言葉に目を閉じ…祈る様な仕草をすると…不意に目を開き…彼へ告げる。


「〝導きの光は2つ〟、〝穢れた獣がやって来る、手に逆十字と災の種を持って、穢れた獣の祈りの果てには無限の絶望と悪意が渦巻いている〟…2つ目は〝世界は救済者を求めている、遍く病を癒す獣よ、向かうならば〝聖都〟が良い、汝を求める者に着け〟…ですね」


その言葉にアークは顔を顰め、少女はクスリと笑みを浮かべる。


「〝凶報〟と〝吉兆〟の2つ…察するに〝浄化の力〟を鍛えるべし…と言う事かな」

「さてどうでしょう…私は〝導き〟を告げるだけですから…その意味までは分かりません」


少女はそう言うと、指を鳴らし…箪笥から1つ…古びた〝箱〟を取り出すと、ソレをアークに手渡す。


「〝聖都ブレシア〟は此処から北東に有ります、雪道も多く、過酷な旅になるでしょうが健闘を祈ります…そして、コレを」


アークはそう言い、その箱を開き中を覗く…そして、その中身を確認すると驚きに目を丸くする…其処に有ったのは…色褪せ輝きを失った…〝人間の片目のミイラ〟が鎮座していた。


「私の〝遺体〟…分類上は〝聖遺物〟に値するのでしょうか、この右目には〝導きの力〟が籠もっています…アナタの望みを叶える道筋を…この右目は教えてくれるでしょう」


少女はそう言うと、箱に収められた己の右目をアークの右目に〝移植〟し…言う。


「〝コレ〟は私からの贈り物…〝アナタの契約者〟…その一人として、アナタへの餞別にコレを与えます…有効に活用して下さいね?」

「……あぁ、勿論だよ」


少女の言葉にアークはそう言い…聖女イーファとアークは暫くの間見つめ合う…その交差する視線が何を思っているのかは、誰も分からない…。


「――それでは、コレで御開にしましょう…それでは、〝聖鴉アーク〟…良き旅を……また、〝此処〟に来て下さいね?」

「勿論、近い内に立ち寄るよイーファ…今度は、何年も待たせないさ」 


去り際に二人はそう言い、その場を後にする…寂れた聖堂の、その窓辺には…飛び立つ〝想い人を見詰める聖霊〟と…〝白い羽〟だけが…残っていた。

人から人外に成った娘が、再会を誓った相手を何年も待つシチュエーション、良いですよね…。



余談ですが、アーク君は〝聖女イーファの聖霊化〟に一枚噛んでおり…同時に〝彼女には人として生きて欲しかった〟と思っていたらしいですね。

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