曇天の決着、中編
本日の投稿…次でこの戦いを締める予定です。
この章のメインはボス戦じゃない筈なんですが…こんなにも引き伸ばされるとは予想外でした。
――ドクンッ!――
その〝鼓動〟が己の耳に届いた時…己は…赤く輝く〝核〟から感じる〝視線〟に気が付いた。
「ッ〜!?」
その視線に、驚き半分…喜び半分の感情がせめぎ合い…だからだろう…己は、その瞬間迫りくる〝拳〟に殴り飛ばせれた。
――ドゴッ!――
鈍く響く…しかし、不思議な事にダメージは無い…その一撃に我に返った己は、空中で体勢を立て直し…其処を〝ソレ〟に視線を送る。
「――〝残り時間が少ない〟のに、何時迄も呆けてちゃ駄目でしょう?」
その視線に、其処に居る〝ソレ〟…〝ソイツ〟…〝その娘〟は…そうクスクスと笑いながら、己を覆い隠す〝ベール〟を取り外し…地面を突いた。
――ドゴッ!――
ソレは、強靭な馬の蹄を備え。
「さぁ…やろうか〝老羊〟…此処が〝最終決戦〟ね♪」
――ギチギチギチッ!――
その両腕は、細く…しかし、まるで…凄まじい量の筋肉を閉じ込めているかの様に…腕全体を軋ませ――。
――ギランッ――
その眼光は、赤く、紅く…狂気とも呼ぶべき〝衝動〟を、双眸から発していた。
――ザッ…――
「ッ♪(クイクイッ)」
互いに構え…その娘が〝挑発〟する。
――バチッ――
その〝挑発〟に乗って、己は〝最速の一撃〟から…この最終決戦の先駆けを請け負った。
●○●○●○
――ボンッ――
大地が爆ぜた、ソレを…かの娘はその双眸に捕らえていた。
――ブンッ!――
光が先行し、音が後を追う…ソレは容易く彼女の視覚を逃れ…彼女が動くより早く〝必死の一撃〟を見舞った。
――ドッ!――
確実に屠ると心に決め、コレで終わらないでくれと密かに願う…その一撃は、彼の強者としての矜持故に一切の〝手加減〟は無く…放たれた雷光を纏う蹄が、彼女の背面を打ち据えた。
「ッ…!」
その一撃に、彼女は反応し…抵抗の拳を振るう…しかし、ソレが彼の顔に触れるより早く…蒼い雷光が、彼女の胸に大きな穴を空け…空洞の先から土砂降りの大地が覗く…しかし。
「――フフッ♪」
――ガッ!――
その瞬間、信じられない事が起こる…胸部に大きな損壊を受けた娘の身体がゴキゴキと音を立てて、背を向けたまま老羊の蹄を掴む…その異様に彼が驚くのも束の間、彼女はそのまま片腕で老羊を掴み上げ…地面に叩き付ける。
――バコンッ!――
「言ったでしょうッ、油断大敵だって!」
鈍い痛みが奔ったのと同時に…その身体は遠く遠くに投げ出され…彼は空中から、己を叩き落とした彼女の姿を目視する。
――ゾッゾッゾッゾッゾッ!――
其処には、大きく開いた胸の大穴を、ものの数秒で直しながら…此方へ駆ける姿が有った。
――ギュンッ!――
「――フッ!」
「――メェッ!」
――バチンッ!――
大地を削りながら着地し、迫る拳を前に老羊は頭突きを放つ…対して紅目の娘は、その拳に固めた魔力を応戦に放ち…頭突きと拳が衝突する。
――ドゴッ――
鈍い音と共に魔力は弾け…老羊の額からは血が流れ出る。
「ッ――メェッ…!」
その痛みと、揺れる視界に彼は呻く…対して。
――ドパァッ!――
彼女の振るった拳は、濃密な魔力の衝突と肉体の負荷に耐え切れず破裂し、砕け散る…内部を模していた赤黒くい肉塊や、細長い管、硬質化した細胞が飛び散る様はそのダメージが如何程かを如実に語り…形成は彼の手に傾いた様に見えた。
「――〝メェ!〟」
……だが。
――ギュドォッ――
「ッ!?」
「――ン♪」
老羊が追撃に駆け出したその瞬間、破裂した腕の傷口から、蠢く肉塊が噴き出し…ソレは瞬く間に〝彼女の腕〟を作り上げ…追撃を溜めていた老羊の頭部を殴り飛ばす。
――ザザザッ――
「――まだまだッ♪」
「ッ――メェ…!」
間合いが離れ、彼女は駆け出す…そんな彼女の〝違和感〟に…改めて老羊は、彼女を観察し…そして、気が付いた――。
――ドクッ…ドクッ…ドクッ…ドクッ…――
彼女の足元に広がるる…〝脈動する血管〟に。
○●○●○●
――ズガンッ!――
「―――チッ惜しい、後もうちょっとでその頭かち割ってやったのに♪」
間合いを詰め、拳を振り抜いた私は…そう言い、背後の〝彼〟へそう告げる。
――ビリッ――
――ブシュッ…!――
その瞬間、私の身体の至る所に無数の裂傷が現れて血が流れ出す…回避の間際に〝斬り裂いた〟のだろう…器用な真似をする。
――グジュッ、グジュッ…!――
その傷を治しながら…私は〝リミット〟を計算しながら、〝周囲のソレ〟を確認する。
(この傷を癒すのに〝小型2体〟か…小型の成長段階の奴は還元率が低いな)
其処に有るのは何時ぞやの〝花園〟…生まれ落ち、個を獲得した〝肉腫の植物共〟の姿…ソレ等は私がそう言うと、その中から2匹…まだ小さな〝肉腫〟がその瞬間急速に老いて枯れ、塵となる。
「残り〝20〟匹前後+現有魔力…ギリギリかな」
何て事は無い…ただ、私の身から生まれ落ちた物を〝吸収〟しただけの事。
どうせこの戦いには参加出来無い連中だ…用済みなら有効活用した方が面倒事解決出来て都合が良い。
「――殺るなら〝短期決戦〟で…って言うのは向こうも同じ…!」
そんなエコロジーな魔力供給を尻目に、私を捕らえる老羊のその視線を読み解き…私は益々笑みを深める。
「〝向こうも気付いた〟ね…私の戦い方に」
〝魔力吸収攻撃全振りスタイル〟…ステータスで負け、防戦一方でジリ貧だと言うのなら、いっそ回復力と攻撃にリソースを注ぎ込んで〝持久力〟で殴り勝とう。
それが、私の出したこの戦いへの〝勝ち筋〟である。
「殴って躱して殴って受ける…地獄の〝泥沼バトル〟と洒落込もうじゃないの♪」
私は、離れからも感じる〝強烈な戦意〟を前に…己も全身から〝殺意〟を撒き散らして答える。
「――メェッ!」
「――フッ!」
そして、同時にその場から飛び出すと…その瞬間。
――ドドドドドドドドッ!!!――
土砂降りも、雷雨も驚く程、凄まじく響く〝泥沼の殴り合い〟が…戦火の中心で繰り広げられた。




