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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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雷に成った獣

本日2本目…例え実時間で日付が超えようと、私はコレを2本目投稿言い張る事を止めない。

――ピシャァァァンッ――


〝雷鳴〟が…けたたましく戦場を駆け巡る…その雷光は空から発せられ、類を見ない極太い雷霆はソレが〝呼び声の主〟が放った全力である事を物語る。


「……」

(〝雷〟…〝雷呼び〟によるもの?…恐らくその類なのは間違い無い…今までに見ない行動パターンね)


雷霆は周囲を焼き払い…近場の肉腫はその雷光に充てられ黒炭に姿を変える…それは〝老いた魔羊〟の、最後の抵抗…だったのだろうか。


「――ハハッ…まさか…ッ」


湧いた戯言を、嘲笑で切り捨てる…この期に及んで、あの〝魔羊〟が…老いた最強がそんな無意味な真似をする筈がない。


そう確信出来るのは、恐らくこの場この世界で唯一人…〝この私〟だけだろう。


私とアレは〝同類〟だ…〝死と戦争〟に魅入られ、ソレが腸に詰まりきった筋金入りの〝ロクデナシ〟だ…あの濁り切った瞳がソレを物語っていた。


「〝飽いていた〟…〝ただ生きる事に〟」


ソレが人の世では異端であると理解している故に、ソレが悪しきと教え込まれたが故に、己の秘めたる〝渇望〟を、育て上げた理性の殻で押し潰し。


〝最強〟に至った故に、畏怖の存在へ成り上がってしまったが故に…〝祀られるだけの偶像〟へと成り果ててしまった。


欲動を封じられ、ただ色褪せた日々の中で夢に夢を見る日々…そんな〝日常〟の中で…不意に〝現実に現れた色彩〟


「それはきっと……〝何にも代え難い希望〟…だった筈だ」


コレを逃せば、己は最早行きた屍に成り果てる…あと1つ、あと1度、あと1秒…求めて、求めて、求めて…その数瞬に如何なる法外な代償を伴おうと…ソレは〝今を生きて戦う〟為に…全てを賭してしまう筈だ。


私も……必ず同じ道を歩むと、断言出来る……私達(戦に狂った化物)は…そうでなければ生きられないのだから。


「―――ッ!」


だから、この〝雷霆〟は…単なる悪足掻きでは無い…それよりも、もっと…もっと悍ましく、浅ましく、醜く、純粋な――。


――『〝メェェェェッ〟』――


「―――ッ♪」


〝イカれた化物〟の…死にゆく〝産声〟であるのだろう。



●○●○●○


――パチパチパチッ!――


身体が〝軽い〟…当然だ、〝肉体〟は最早、この世に存在していないのだから。


――ビリビリッ、ビリビリビリッ――


力が満ちる…当然だ、ソレ以外の全てを…〝売り払った〟のだから。


「〝メェェッ〟」


畏怖は…つまらない、恐怖は、退屈だ…彼我の差を知り、忌避し逃走するのは生物として間違っていない…しかし、ことこの場に置いては…死よりもつまらん〝臆病風〟だった。


《〈雷呼び〉が昇華されました――新たな能力〈死にゆく雷精〉を手に入れました!》


――トッ――


大地に降り立ち、〝眼前〟を見据える…どいつもこいつも〝弱腰の小物〟だ……と、なればやはり――。


――ジィィィィィィィィッ――


〝あの娘〟が…この至高の闘争を締め括るに相応しい〝好敵手〟なのだろう。


――ピリッ――


「メ――」


そうと決まれば、時間が惜しい…肩慣らしがてらに、1度〝この力〟を振るってみよう。


「――ェ」


踏み込み、駆ける…1秒後、世界は止まる…2秒後…止まった世界を駆け抜け…停止した肉腫の植物達…その身に流れる瘴気の最も濃い箇所…〝核〟の在り処に打撃を加え…5秒後。


――トンッ――


己は、肉腫共に背を向け…此方へ歩み寄る〝好敵手〟へ視線を注いでいた。


――ドパァァァンッ――


その直後に、肉腫の花が雷霆と共に爆散したその光景に振り返ることも無く



○●○●○●


――――――

【無し】 〈状態/精霊化/狂化/必死の呪詛〉

【雷老羊】LV62

■■:■■■■

■■:■■■■

■■:■■―――。



――ブツンッ――


『看破のれへが上がりました!――〈戦技:自動識別〉』


看破から彼のステータスを覗くも、情報閲覧も束の間…圧倒的なステータスの差によって、己の能力は締め出され…反動か、或いは術として何らかの妨害を喰らったのか…私の右目が雷撃で焼け焦げる。


――グジュウゥゥッ――


「――正確な内容は推し量れない…けれどHPやMPの閲覧情報も修整された…つまり、単純なステータスは現レベル帯を大幅に超過していると見るべきね」


それは一種の死刑宣告の様にも思えるが、しかし…私はその本質を確かに〝捉えている〟…。


「〝時間制限付きの自己強化〟…〝雷呼び〟の上位能力の類と見た」


その言葉と共に向けられた視線は、嘗て老いたる魔羊だったモノの放つ威圧感と…ソレに覆い隠され、常人では看破するのも難しい〝肉体の変化〟…〝散り行く雷光〟へと向けられていた。


「――そうと分かれば〝早くやろう〟…良い所でタイムオーバーなんて冗談じゃ無いわよ?」


互いに、数メートル先に距離を取り…己等の戦意を湧き上がらせる…。


「「……!」」


互いに何も発さず、視線で牽制をし合う…攻めるか守るか、退くか受けるか、互いに戦に特化した知能を用いて幾重のシナリオを作り出し…そして、互いに〝最適解〟を作り出す…。


「――さぁ……〝来い〟…!」


構えと同時に〝奴〟は消える…ソレを認識した私の脳は、類まれな速度で私へ緊急事態を宣言し、私は防御の姿勢を取る。


ほんの一瞬…青白い影を視界端に捉え…しかし、その次の瞬間私を迎えたのは凄まじい衝撃と、背骨を折られた様な息の詰まる感覚だった。


――ズドォォォンッ!!!――


泥を撒き散らしながら地面を滑る、その姿勢を出来るだけ維持し…私はその姿勢から速度が落ちた一瞬で姿勢を整え〝継戦〟の意思表示をする。


「メェェェェェ…」


対して老いた魔羊は、そう溜め息を吐くように白く熱された吐息を吐き出し…此方の動きをじっと視界に押さていた。


「――凄まじい速度ね…油断したつもりはなかったのに一瞬で消失した…拳の一撃も以前と比べて遥かに重く鋭い…お陰で〝万全な防護服〟が、一撃でお釈迦……尤も…殴っている方も到底無事とは言わせないけどね」


そう言い、彼の視線を落とした先には…青白い雷鳴の化身と…その拳に巣食う〝私の呪詛〟がびっしりと染み付いていた。

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