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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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老いて尚、未だ敗れず

本日の投稿…もしかしたら2本目がある…かも。

――グンッ――


「――シィッ!」


振るわれた槍は、私の身から発せられるエネルギーを余すこと無く利用し…轟音と共に〝ソレ〟へと放たれた。


――ドゴォンッ――


「ッ――外れ…!」


その一撃は、確かに最良の一撃であったが大地を砕く感覚と、虚空を薙ぐ音に私は己の一撃が外れた事を理解する。


――ピリッ――


「ッ――!」

「〝メェ〟」


瞬間…背後から発せられた殺意と言葉に裏拳を振るう…しかし、そんな私の行動よりも一手早く…老羊は私への攻撃を繰り出した。


――ゴスゴスッゴスッ!――


「グッ…やるッ…!」


その一撃は、決して重くは無く…その膂力を推し測るにやはり〝老齢〟故の力の喪失を感じさせる…しかし、私の経験がその一撃を〝軽視するには恐ろしい一撃〟であると警鐘を発した。


――トンッ――


振るわれた拳は空を切り…気が付けば少し離れたその場所に〝老羊〟は立っていた…その一連の動きに、私は蹴られた頬に手を当て…思考する。


「速い…訳じゃない……洗練された動きと、高度な知性から来る〝動きの先読み〟…ソレが宛ら〝高速移動〟、或いは〝未来予知〟の様な〝敵対者とのリズムのズレ〟を生み出している」

(対応するには、此方も彼のリズムに追い付かないといけないけれど…そう一筋縄では行かないわね)


私が対応すれば、彼は更にその先を行く、追い付けば追い抜いての堂々巡り…コレを覆すには、相手の対応が遅れる程の速度で相手のリズムに適応するか…〝奇策〟を用いて、相手の意表を突きリズムを崩させるのが正答…しかし。


「メェ?」

「手強いなぁ、コレは」


挑発的な声と仕草、老獪な好々爺の様な雰囲気でいてその瞳の奥には冷静冷徹な〝戦闘狂〟が潜んでいる…並大抵の揺さぶりは時間の無駄か。


「さて、どうしt――」


相手との戦いを如何に制するか…思考を奔らせる…その刹那、私は不意に自身の視界が揺れ、頭部に鈍い力が巡るのを感じる…そして。


「あぇ?」


――パァァァンッ――


そんな音と共に、私の頭部は凄まじい勢いで破裂し…視界がブラックアウトした。



○●○●○●


『仕留めた』


並の生き物との闘争であれば、そう考えていただろう…しかし。


「メェ…」


頭部を破壊したにも関わらず、己の瞳に映る〝ソレ〟の生命には…まだ確かな〝余力〟かあり…一撃必殺の初見殺しに等しい己の一撃が、その本懐を果たせなかったのだと知り、ソレは思わず驚嘆を紡ぐ。


「メェ、メェェェッ!」


しかし、ならば追撃するまで…と、頭部を失くした〝ソレ〟へ視界が消えた内にと奇襲を駆けようとする…その時。


――バッ――


そんな己へ向けられた手の平が蠢き…ギョロリと、不気味な赤い瞳が生え…己の追撃に対応するべく奴は蹴りを己へ放つ。


――ジャキンッ――


「ッ!」


その鋭い殺意に塗れた一撃を、己は追撃の機会を代償に躱し…体勢を立て直す。


「FUMU…Fuむ…〝ナルホど成る程〟――〝電撃〟を内部へ浸透させて暴れさせる〝内部破壊〟…筋力の低下を〝魔力、魔術で担保する〟…ソレは考えておくべき〝想定〟だったわね…失敗失敗」


そんな己へ紡がれるのは〝称賛〟…自らの頭部を焼き、破壊した己へ向けられた一点の曇りもないソレは…この闘争の只中に於いては…ましてや、ソレを身に受けた筈の〝生物〟が持つには余りにも異質だった。


――グチュグチュッ――

――ゴキゴキゴキッ――


頭部が〝再生〟する…まるで元通り、何も起きなかったとでも言うように…しかし。


「〝確実にダメージが入っている〟…えぇ、模倣する物が複雑であればあるだけ、再生に使われる魔力量は多くなる…実際少なからず〝核〟にもダメージは入っていたし…一撃で体力の7割を奪われたのは流石に驚いたわ」


そう言う奴の魔力は言葉通り、大きく〝萎んでいる〟…少なからず己の攻撃は奴にとって〝有効打〟になり得るのだろう。


――ブチッ――

――グチュッ――


自身の手の平の瞳を引き抜き…其れを自らの空の双眸に嵌め込むと…その娘は歯を見せて笑う。


「――やっぱり、〝挑戦〟はこうでなければ♪」


その娘の瞳には〝狂気〟が有った。


「――メェッ…!」


その瞳に…己の中で、久しく感じなかった〝モノ〟が、微かに込み上がって来るのを感じ…今度は己から、奴へと攻撃を仕掛けた。


●○●○●○


――ダァンッ――


ソレが泥濘みに己が足を突き刺した時…その身体に纏う青雷が大地に走る。


――バチィィンッ――


その電撃は、凄まじい速度で戦場を駆けて私の足元に来ると泥濘の泥を撒き散らしながら、恐ろしく強力な電撃で周囲一体を焼き焦がす。


――ドチャッ!――


「危ない危ない、このフィールドで雷は相性が良すぎるわね」


しかし、その場所には既に私は居らず…青雷が周囲に広がる中…私は瓦礫の山に飛び乗り、大地を走る雷撃を防ぐ。


「さて、それじゃお返しに――〝コレ〟はどうかしら?」


――ゴキッ、グチュッ…ゾゾゾゾゾッ――


そして、見上げる〝ソレ〟に、私はそう言うと…変形と共に自身の右腕を変形させ、堅牢な骨の籠手と…その手に〝ある玩具〟を握り…目の前の彼へ向かって投げ付ける。


――ギュンッ――


ソレは彼の目にはただの〝土塊の塊〟の様に見えた事だろう…微かな魔力だけしか籠もっていない、脆弱な攻撃の様に見えた筈だ…。


「ッ…メェッ!」


与えられたのは〝避ける〟か〝潰す〟かの二択…しかし、彼は〝避ける〟を選ばなかった。


――バチィンッ――


電撃が彼の身から放たれる…その電圧は凄まじく、彼の目の前にまで迫ったソレは、彼へ触れるより早く雷鳴によって焼き殺される。


「ッ♪…〝避けない〟か♪…なら――」


――ボロッ――

、その瞬間凄まじい勢いで乾き固まった土塊がヒビ割れ…姿を表した〝ソレ〟へ…老齢の魔羊は、興味と疑問を浮かべ、一瞬あっけに取られる……其処に有ったのは――。


――ゴポッ!――


小さな骨の欠片をその身に埋め込んだ…蠢く〝肉塊の化物〟の、姿だった。


「――ボンッ♪」


ソレが外の空気を取り込み、外の眩さに目を開いたその瞬間――。


――カチャンッ――


その肉塊は膨張し…骨の破片を周囲に撒き散らした。

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