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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第五章:彼方の獣を誘うモノ
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曇天と雷鳴の主

本日の投稿を…2本目は未定です。

――ガラガラガラガラガラッ――


「――さて、長旅を終えて漸く辿り着いたねぇ…〝王都カティア〟」


大門から続々現れる人と馬車、其れ等を横目に…レリックと共に現れた博士風の男は、愉しげに王都カティアの石畳に着地した。


――バサバサッ――


「俺ァ王都の本ギルドに行く…暫くの間時間が空くだろうから、2時間後に冒険者ギルドに来てくれ」

「了解…それじゃあ僕達は観光でもしておくよ」


そして、レリックと軽く言葉を交わし、そのまま別れると…博士風の男…〝ドクター〟…アルス・アスクレスは己の側を飛ぶ白い鴉に問い掛ける。


「しかし、まさか第四エリアのエリアボスが直接馬車を襲撃して来るとは思わなんだ…お陰で想定より幾らか到着が遅れたね、アーク君」

「そうてすね…クエストの辻褄合わせとしての措置とは思いますがアレには驚かされました…まぁ、討伐に支障は無かったので良しとしましょうか」


学者風の男性と、喋る白い鴉は、瞬く間に民衆の注目を集め、周囲に人集りが出来る…。


「――君はこの後何処に行く気かね?」

「僕は〝教会〟に予定が有りますね…〝先行体験(βテスト)〟の時に居た〝友人〟が其処に居るので」

「ほう…私も〝魔術の師匠〟殿に会いに行く予定でね…それでは我々も1度、解散としようか」


そんな彼等は、足早に民衆の目を掻い潜り…片や、大通りの空を…片や薄闇の路地裏へと進み…其々の目指す場所へと進むのだった…。



○●○●○●


――パクッ――


「〜〜〜♪――やっぱり、硬い羊肉は煮込みでトロトロにするに限るわね」

「……普通の御飯…です?」


一先ず情報蒐集にと、捉えた兎娘を捕まえて尋問を始める…ついでに、倒した電気羊の肉を使って作った羊肉のスープも添えて…うむ、美味である。


「――それはそうと、今の所〝第四エリア〟から先に進出してる魔獣プレイヤーは居ないのね」

「(ズズズズッ)――そーですねぇ、単純にエリアに居る魔物達が平均レベル〝50〟帯と言うのも有りますが、ソレ以外にも魔獣狩りに勤しむ〝聖獣(pvpプレイヤー)〟や、冒険者、兵士も居るので…今は西のエリア攻略にベルゼさんも力を注いでいるみたいです」

「成る程…じゃあ此方は面倒な賞金稼ぎな相手はしなくていいのね」


二束三文にもなりはしない相手に時間だけは取られるのも不愉快だし、好都合ね。


「――うん、もう良いわよ…約束通り生かして帰して上げる」

「ッほ、ホントですか?…帰る最中に『やっぱり止めた☆』とか無しですよ?」

「ホントホント、どうせ貴女一匹殺した所で経験値なんざたかが知れてるでしょ?…ソレ食べたら帰ってね?」


私は、其処の兎娘にそう言うと…スープを平らげて器を洗い始める…。


「――〝妙な気〟は、起こさない様に」

「ッぃぅ…!?」

「……ね♡」


背後で〝粗相〟をするその娘にそう言うと…彼女は大人しく配膳されたスープを食べ、そのまま…文字通り脱兎の如く、この廃屋から立ち去る。



『ヒィィィッ、怖かったぁぁぁッ!!!』

「〝欲に正直〟と言うか…単なる〝お馬鹿さん〟と言うか…」


立ち去る彼女の声を聞きながら…私はやがて見えなくなる彼女の姿を見送り…獲物に手を延ばす……確かに私は〝殺さない〟…〝生かして帰す〟とも言った。


「でも…〝何もしてない〟とは、一言も言ってないのよねぇ♪」


彼女の気配は遠く遠くの〝キムラヌート〟へと向かって行く…ソレを私は…遥か離れた廃屋から…確かに〝視ていた〟…。


――プツンッ――


「後は〝あの子達〟に任せるとして…私もそろそろ御目見えと行こうかしら…♪」


――バサッ!――



●○●○●○


――ザァァァァッ!!!――

――ゴロゴロゴロゴロッ――


豪雨が、大地を穿っていた…雷鳴が、唸りを上げていた。


曇天に覆われた大地、乾く事を知らない泥と瓦礫の廃街で…その中心で…〝ソレ〟は待っていた。


――パチパチッ、パチパチッ…――


〝ソレ〟は…老いた羊だった…高原を駆け巡る血に飢えた羊達と比較して、余りにも小さな体躯…肉は萎み、毛は硬くザラつき、今にも死んでしまいそうな程に…ソレは老いさらばえていた。


――しかし。


――ギロッ――


その眼光は、周辺一帯のどの捕食者よりも鋭く…同種だろうと、彼の者にはおいそれとは近付く事は無い。


その出で立ちは、正しく〝圧倒的強者〟…そんな彼が放つ、歴戦の気配に…同種は畏敬と恐怖を込めて彼へ高原の地で採れた野草や果実、獲物の肉を捧げ…祀っていた。



……其処へ。


――バサッ、バサッ、バサッ!――


「――うん、うん♪…アナタ、とても〝強い〟わね♪」

「……メェッ」


一匹の〝侵入者〟が…舞い降りた。


「『雷老羊サンダーゴート・エルダー……レベル〝62〟…〝このエリアのボス〟で間違い無い…その姿からは想像もつかないほど…〝強い〟』」


その気配は、恐らく〝ソレ〟の、これまでの生涯1度も感じた事は無い気配だったのだろう…へばり付き、離れない…生暖かい〝不快な気配〟…そして、類まれな〝挑戦者〟の気配に…〝ソレ〟は始めて、自らの意思で立ち上がり…彼女を双眸に捉える。


「体躯は、私が戦ってきたどの〝電気羊〟達にも劣る…けど、〝雷鳴の力〟は…到底あの子達では敵わない〝精度〟…フフッ♪」


其処に居たのは、一人の〝人間〟…貢物に混じっていた連中に良く似た姿だが…〝ソレ〟は直感で、目の前に居るソレと、貢物のソレの違いを看破する。


――ドロッ、グチュッ…――

――ゴキゴキッ、メリメリメリッ――


その双眸に映るのは、人の姿をした〝肉塊〟…出鱈目で、境界が無く…ただ〝人間の形〟に押し込められただけの〝肉の泥〟としてしか、ソレの目には映らなかった…そして、ソレを彼女も理解したのだろう…ソレへ注ぐ熱い視線に、更に熱を込めて彼へ告げる。


「〝素敵〟ね…その視線、そんな目をする敵は片手で数える程も居ないわ……アナタの目に映る私は……きっと〝肉塊の怪物〟なのでしょう…でも、ソレは些事な事――」


そう言い、彼女は自らの得物に悍ましい瘴気を流し…その四肢を〝異形〟に変える。


「――今この場にいるのは〝(挑戦者)〟と〝アナタ(支配者)〟…それだけが、この場に必要な事実なのだから…ッ!」


――カンッ!――


そして、そんな彼女の戦意に…ソレが闘争の意思で返すと…彼女は美しくも恐ろしい〝赤い笑み〟を浮かべて…大地を踏み砕き――。


「――〝沢山〟…〝遊びましょう(殺し合いましょう)〟♪」

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