主役無き舞台の上で
2本目、3本目は未定です。
――カッ…カッ…カッ…カッ…――
「〝英雄譚は語れない〟、〝怪物は舞台に上がれず〟、〝綴る文字に意味は無し〟」
ご機嫌に、ご機嫌に…黒衣は、〝加速する世界達〟を踏み歩く…その口端から、悍ましい歌を奏でながら。
「〝消失、喪失〟…〝我は空洞〟、〝我は遍在する空虚である〟」
――カッ、カッ、カッ、カッ――
黒衣はそう言い、数多の〝世界〟を尻目に…その先にある〝扉〟に手を掛けて、開く。
「「ただいま(おかえり)――〝俺(私)〟」」
其処は、青々とした自然と、人の活気で満ち足りた〝人間の街〟の中だった。
「ソレじゃ、〝影武者〟は消えるぜ?…〝グルーヴ〟も悪かったな、急に身体を使っちまって」
そんな、街の…石造りの大部屋の中で…黒衣はそう言うと、そのローブを剥ぎ取り、テーブルに座る〝男〟へと投げ渡す…と、同時に、その黒衣の中からは…一人の、金髪の美女が現れ…ハッと、その意識を覚醒させる。
「――とんでもないですわ主様!、このグルーヴ…主様の頼みとあらば、この身体を明け渡しましょう!」
そう言い、溢れんばかりの忠義を見せる金髪の美女に…対面する男はクツクツと笑い、そのローブを身に纏う。
「――今回は助かった、悪いな…〝デート中〟に野暮用に巻き込んで」
男がそう言うと、グルーヴは頬を染め…豊満な四肢を捩りながら艶声を上げる。
「貴方の為なら喜んで、しかしあのクソキノコ女へは厳罰を――」
そして、その怨嗟を彼方に居る〝あるプレイヤー〟へ向けると…ソレを男は制し…グルーヴの方へと歩み寄る。
「それは止めておけ、アレで彼奴も〝プレイヤー〟だ…下手に手を出すと〝夢見〟が黙ってない…具体的に言うと〝カルマ値〟以下だと手出し出来ん」
「……あの女は、十分害悪ではないのですか?」
そんな男のその言葉に、グルーヴは?を浮かべて小首を傾げる…それに男は、彼女の手を取り…微笑みながら続ける。
「〝人間にとっては〟…だな、〝世界〟はまだ、アレを〝排斥するべき異物とは判断していない…〝執行者〟を送り込まないのがその証拠だ」
「ん…それは……仕方が有りませんわね…アレは生かしておきましょう」
「詫びと言っては何だ…〝彼奴等〟が戻って来るまで、お前に〝サービス〟してやろう…それで良いだろう?」
「ッ〜〜!?――本当ですの!?」
そして、彼女の首に軽くキスをしてそう言うと…グルーヴは分かりやすい程に興奮した表情でそう言う。
「無論だ…〝この世界〟では、〝お前を優先する取り決め〟だろう?…他の奴等も異論は出すまいよ」
「ッ〜〜〜///」
男の言葉に、彼女は声にもならない歓声を上げて喜ぶ…その様子に、彼は優しく微笑むと…その手に、魔力で包まれた書物を収める。
「――それは兎も角、喜ばしい〝収穫〟も有った、この地域の何処かに有ると踏んでいた〝友人の遺物〟を、運よく〝蒐集〟出来た…コレは、あの場で得たどの収穫よりも〝貴重な収穫〟だった」
男はその黒髪を揺らし、愛おしそうにその書物を…丁寧に掃除された豪奢な本棚に収める。
「?…その友人とは、何方なのですか?」
「――何、単なる〝戦友〟だとも…尤も俺は〝試練者〟として、奴に〝時間と知識〟を与えただけだが…結果として奴は、忌むべき〝邪神の戯れ〟をその身をもって打ち壊し…堕落の邪神…あのデブの愉悦を完膚なきまでに苦汁に染め上げてくれた……まぁ、彼奴が俺を〝友〟としてくれていたのは予想外だったがな…フフフッ♪」
そんな彼の、普段とは異なる様相にグルーヴはそう問い掛けると、男はそう言いながらクスクスと笑う…そして、振り返ったその時には…何時も通りの、胡乱な笑みを極上の〝美〟の上に張り付けて、グルーヴを紫の瞳で見据えていた。
「――ソレは兎も角、〝デート〟の続きだ…お前が仕事を頼まれている間に、埋め合わせのプランを用意した…折角だ、仕事前に一つ〝娯楽に耽る〟としよう…〝俺達の仕事〟は…もう少し後だからな♪」
○●○●○●
「あぁ、忌まわしい…〝邪神の匂い〟が染み付いたこの場所に、何故我々が赴かねばならんのだ」
――ザァァァァッ――
曇天の土砂降りが騒々しい…そんな中を、黒いローブを纏った一団がそう悪態を突きながら、廃材の山と化した廃墟街…〝今は亡きハリルの街〟の石畳を踏み締める。
「文句を言うなイザニア…我等の〝主〟が仰せ使った使命であろう…託宣に異を唱えるのか?」
そんな場所で、黒衣の一団の中…特にこの一団で異質な気配を漂わせる二人組の片割れが、悪態を吐き捨してる片割れにそう問い掛ける。
「ッ…分かっている…しかし、不愉快な物は仕方あるまいッ…この大地を覆う忌まわしき〝異界の雨〟、この土地に染み渡る決して消えぬ穢れの匂いッ…〝主〟により祝福を与えられた我が〝嗅覚〟が、其れ等を誰よりもよく嗅ぎ分けるのは、貴様も知っているだろう?」
対してその男は片割れの言葉に苛立ちを潜め…しかし、染み付いた憤懣を大地に吐き捨てる。
「あぁ…その〝嗅覚〟こそ、主の託宣を果たすには必要なのだ……この地に〝訪れた邪神〟は…何を企んでいるのか…お前ならば〝邪神の性質〟を嗅ぎ分けられるだろう?」
そんな彼を片割れは諌め、その言葉に男は渋々と…このハリルの街の残骸…その中を進み…残骸の中心に大きく広がる破壊痕に顔を近付ける。
「――ッ…〝混沌〟に属する者では無い?…〝何者にも属さない神〟…〝神であり神で無い者〟…〝英雄と怪物〟?――何だ、コイツは――ッ!?」
そして、その馬に満ちる気配に、男がそう言葉を紡いだその時…不意に、男は目を見開き…膝から崩れ落ちる。
「ッ…どうしたイザニア!?」
「あぁ、クソッ…何だコイツは…〝見ていた〟…〝知っていた〟…〝俺達が此処に来る事〟を…ッ」
その瞬間…イザニアは目と耳と鼻から黒い血を流し…喉をボコりと膨れさせ…ドス黒い血と共に凝固した〝血の塊〟をビシャリと地面に吐き出す。
「ッ――〝呪詛〟か…!?」
「ハーッ…ハーッ……クソッ…〝置き手紙〟を仕込んでやがった…アレを〝認識〟した瞬間…俺を介して〝手紙〟を…ゴフッ…この血、〝腐ってやがる〟…!」
そんな異常事態に周囲の部下が警戒する中…二人の男は、その視線を凝固した血の塊に向け…その中にある〝ソレ〟を見据える。
其処には――。
『〝旧き神へ、空洞の虚神より愛を込めて〟』
赤々と血のインクで書き記された、〝手紙〟が…凝固した血の中から覗いていた。
次話から新章に…〝この物語の主役者〟をそろそろ決めていかないとな〜…何て考えたりして。




