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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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封印の代償

本日の投稿、そしてコレで今章は終了です。


次の章は、色々と忙しくなりそうでワクワクと震えが止まりませんね…フフッ、不安。


それと、夜にもう一本投稿する予定です。

――サッ――


「え?…アレ?…お姉さん?」

「あぁ、少しだけ我慢するんだよ?…〝アレ〟は、あまり直視するものじゃないから」


古くも、暖かさを感じるその部屋で…少女の目を覆うその人物はそう言い、事の流れを見守る。


「うん、うん…成る程…良し、もう良いよ」


そして、少女の目から手を話すと…其処に広がる〝ウィンドウ〟を閉じ…少女に視線を落とす。


「さて、本来の〝脚本〟なら…君はもう〝此処から出て行く〟筈だったんだけど…残念ながら、もう暫く此処に残る事になりそうだねぇ」

「?……此処に居ていいの?」

「そうだ、ほんのちょっぴり…もう少しだけ君は此処で夢に微睡む事になるね」

「そうなんだ……お姉さんは此処に居るの?」


そして、彼女は膝下の少女をベッドに降ろすと立ち上がり…少女の言葉に首を振る。


「実に〝残念〟ながら…私の〝仕事〟は無くなったからね、もう此処に居座る理由も無い…別の〝仕事〟に行かなければならないし、君とは此処でお別れだ」

「……そう…なんだ」


そんな彼女の言葉に少女はしょんぼりとした顔でそう言い、寂しげに口を閉ざす…そんな少女の様子に彼女は赤い目を細めて少し考え込む。


「ふぅぅむ……ん、そうだ」


――パチンッ!――


すると、何か考えが纏まったのか彼女は指をパチンと鳴らして少女の視線を誘う。


「僕はもう君と会うことは出来ないが、一人この部屋で夢に揺蕩うのも味気が無い…なので、此処は〝代役〟を立てようじゃないか」


そして、そう言いながら手を叩いた…その瞬間、其処に何も無かった筈なのに…気が付けば、其処に一人の少女が現れる。


「ッ…此処は、我は確か、あの玉虫色の――」

「はいはいはい、其処のシーンはもう済んだでしょ、ソレより君は暫く暇何だし、この子の話し相手になってあげてね?…お嬢さんも、良ければこの子の話し相手になっておやりなよ」


混乱する少女を他所に、彼女はそう言うと二人に背を向け…扉に手をかけ消えてゆく。


「あ、おい待て貴様――」

「それじゃ、ごゆっくり〜♪」


新たに姿を表した少女が、己を呼び出したその存在に説明を求めようとするも、そんな少女の様子をニヤニヤと一瞥すると、彼女は扉の奥に消えて行く。


「彼奴ッ……クソッ、何故我がこんな…ハァッ」

「あの…貴方は誰?」

「はぁ、何だお前は――ッ!?」


そんな彼女へ少女Bは悪態を吐き捨て…そして、最初から部屋に居た少女の姿を認めると、状況を理解したのか、顔を辛酸を煮詰めた様に顰め…長い長い沈黙の後、渋々ながら、ドカリと部屋のソファに腰掛け…少女を見据える。


「――クソッ、我に一体どうしろと言うのだ」


――ガチャッ――


「――あ、外の景色は繋いでおいて上げるから、暇ならソレを見て時間を潰すと良いよ」

「失せろッ、いや失せるな――」


そんな少女Bへ、先程立ち去った彼女が扉から顔を出してそう言うと、少女Bは彼女へそう言い、この状況をどうにかしろと怒鳴りつけるが…その言葉が聞き入れられる事は無かった。



●○●○●○


「――さて、これで〝第一の関門〟は問題なく解決したわけだが」


――パシッ――


今し方起きた〝奇妙な光景〟を華麗に無視して…黒衣はそう言い、その青白い手に握られた〝銀の宝玉〟を手慰みに弄ぶ。


「――〝コレ〟を、今のお前にくれてやる訳には行かないな♪」

「――何てすって?」


そして、私へそう言うと…ソレを懐に収め、指を鳴らす。


――パチンッ――


その瞬間…私の身体はバラバラに分解され…ソレは私を見下ろして〝告げる〟


「〝現状〟…今のお前では〝力〟が足りない…俺が何をしたのか、分からなかっただろう?…〝この程度の手品〟に対応出来ないのなら、〝レイナ・ハーレー〟を救うのは夢のまた夢ってもんだ」

「ッ…〝再生〟が…効かない?」


そう言い、膝を曲げて私を覗き込むと…黒衣は私の顔を持ち上げて、その顔を近付ける。


「〝ヒント〟をやろう♪…次の段階に進む為の、強さの目安の様な物だ♪――俺を〝見ろ〟…そして〝視ろ〟」


そして、そう言うと…黒衣の奥から光る、紫の瞳と目が合い…私はその瞳の奥をじっと見詰める…すると。


――ゾワッ!――


悪寒と共に、私の目の前に有る〝ソレ〟は…〝人間のカタチ〟を喪失した。


「ッコレは…!」


いや、ソレは恐らく〝錯覚〟だ…事実目の前に居るのは何ら変哲の無い〝人間〟が一人、しかし…そう認識して居るのに…己の認識に映るソレは、〝人間〟の域を遥かに凌駕した〝化物〟として警鐘を鳴らしていた。


ソレは〝混沌〟…或いは〝狂気〟…青く赤く、熱く寒く、明るく暗く…数多の感情を、相反する感情を同時に生み出し、混ぜ合わせ、姿形を変幻に変える〝混沌者〟…しかし、ソレだけでは無いと、私の直感がそう告げて…その混沌に覆い隠された更なる最奥を覗き込もうとする…その瞬間。


「――おぉっと、流石に蛮勇が過ぎるぞレディ…〝アレ〟を見て更に先を自身の意思で覗こうとするのは驚いたが…コレ以上先は、もっと〝育ってから〟だ」


黒衣は自身から私を引き剥がし…再び指を鳴らすと…私の姿は元に戻る。


「オーケイ、オーケィィッ、〝想像以上〟に君は〝才能〟が有るらしい…取り敢えず精神的な強度は問題無い…後は――〝肉体強度〟を高めると良い」


その言葉に私は己の身を確認すると…私の意思と相反するように、その身体はブルブルと震え…全力で目の前の男から逃亡しようとしていた。


「具体的には〝LV100〟辺りまで、ステータスを育てれば〝最低限の資格〟は手に入る」


そんな私を見ながら、彼はそう言うと…自身の足元から黒い〝影の手〟を生み出し…空間を引き裂く。


「〝条件を満たした〟なら、その時は〝俺の名前〟を呼ぶと良い…その頃には、俺がどういう存在なのか、理解しているだろうしな」


そして、その空間に片足を踏み入れた黒衣はそのまま立ち去ろうとする…だが。


「――待ちなさい」

「ん?……」


ソレを呼び止め私は、漸く自由に動くようになった身体を、黒衣へと向けて進ませる。


「何かなレディ?…何か聞きたい事でも?」

「無いわよ、でもまぁ…一応形式としては、貴方に助けられたとも言えなくはないでしょう?…だから、その〝礼〟をするわ」


そして、不思議そうに首を傾げるソレへそう言い…懐から〝ソレ〟を取り出し、彼へ手渡す。


「ッ…コレは…!」

「〝アレクサンドロ・ハルバッサ〟の日記よ…欲しがっていたでしょう?」


ソレを手に取ると、黒衣はピクリと身体を震わせ…その書物を慎重に開く。


「……コレは、確かに…〝彼奴の日記〟だ…やはり、あったのか」


そして、その古びて朽ちた日記を丁寧に己の魔力で包み込むと…ソレを懐に収め…私を見る。


「――感謝しよう、マオ・ディザイア…フフフッ…あぁ、今の俺は気分が良い…気分ついでに、一つだけお前に助言してやろう」


そして、黒衣はそう言うと、私の目を見て…美しい声を奏でる。


「〝この先の氷原を右へ〟…〝氷原の山々を越えた先に、人智の至らぬ霊峰が有る〟…其処に行けば、お前の目的に一歩近付くだろう」

「そう、ありがとう」


その言葉を最後に、ソイツはもう一度己の懐に有る〝日記〟を嬉しそうに撫で…私へ背を向け、暗闇の中へと消えて行く。


「それではまたな、〝マオ・ディザイア〟――今度会う時は〝茶会〟でも開こうか」


最後に、私へそう言い残して…。



そうして、廃墟街での〝災害〟は…幕を閉じた…〝レイナ・ハーレーの封印〟と言う代償を支払う事によって。

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