表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
146/170

渇望するは何故に

「何って…レイナを救いに来ただけだけど?」


私へ問うた〝ソレ〟に…私はそう答える…すると、ソイツは私の言葉に眉を顰め、否定の言葉を紡ぐ。


「偽りだ…それは必ずしも真実ではない」

「はぁ?…何を言って――」

「お前は、〝レイナ・ハーレー〟等露程にも気に掛けては居ない筈だ」


その否定に私が言葉を紡ごうとした時、ソイツは私の言葉を遮り続ける。


「お前があの娘に執着するのは、単にあの娘の魔術、知恵を利用する為だ…あの娘の為と嘯きながら、その実お前は〝自分の為〟に、レイナ・ハーレーを取り戻そうとしている」

「……」

「此処は〝精神の間〟だ…お前の〝策〟が生み出した世界の隙間…此処には己と…お前しか存在しない……〝レイナ・ハーレー〟は居ないのだ」

「…」

「〝無意味〟なんだよ、お前の今までの行いはッ、お前の費やした時間は全て、始めから無為に消える運命だったんだッ、分からないのか?…否、分かるはずだッ…お前は我の〝造物主〟なのだからッ!」


言葉を紡ぐ程、ソレの発する感情は荒々しく、複雑怪奇に捻じれていく…ソレは怒りであり、憎悪であり、嘲笑であり、侮蔑であり…そして。


「――えぇ、〝分かってる〟わよ?」

「――何だと?」


〝嫉妬〟であった。


「とは言え、始めから知ってた訳じゃないけど…レイナが既に死んでいる事も、貴方の〝本当の目的〟も良く知っている…貴方こそ〝嘘〟を吐いているんじゃないの?」

「ッ…何を」


私の言葉に、ソイツは語気を弱める…何時の間に舌戦は攻守を入れ替え…私がソイツへ声の刃を振るう。


「〝レイナが羨ましかった〟…そうでしょう?」

「ッ!?――馬鹿を言うな、我は――」

「〝レイナの心臓〟として、私が産み落とした眷属…ただソレだけならば、貴方はその役割を全うするだけで居られた…けれど、〝人間〟に混じってしまった為に…貴方は〝知性〟を得た」


ソレは私の〝計算外〟…〝人間という種〟が持ち合わせる特異性を、把握していなかった故の…半ば事故の様な問題だった。


「知らず知らずのウチに生まれた貴方は、レイナの肉体と混じる事で、〝擬似的な脳の複製〟を果たしてしまった…部品として生まれただけの細胞に〝知性〟――〝感情〟と言う、凡そシステムに組み込むには余りにも致命的な〝部品〟を持ち合せてしまった」


ソレこそ〝第一の問題〟…意図せず、偶然と偶然が掛け合わさって生まれてしまった〝数奇〟だ…そして。


「〝第二〟に…肉体の主導権が〝レイナ〟に有った事」


心臓としての機能を取り付けた事で起きた〝蘇生〟…死にゆく筈だったレイナは息を吹き返してしまった。


「どういう因果が関係しているのかは知らないけれど、状況としてその身体には〝レイナの意識〟と〝アナタの意識〟が混入し…〝レイナの意識〟が動いている間は…アナタは動く事が出来なかった…ソレが第二の〝問題〟…そして、第三…決定的な〝ミス〟は…〝レイナの知性〟をベースにしてしまった事…〝復讐と憎悪の魔女〟であり、〝純粋で無垢な少女〟の二面性を手に入れてしまった所為で、アナタは無意識に〝嫉妬〟を覚えた」


動けない身体で意識だけは存在する…だから、貴方は見る事しか出来なかった…〝私がレイナへ向ける慈しみ〟を…なまじレイナの記憶から引き継いだ〝愛〟の感覚を理解している為に…自分へ向けられない〝愛情〟を妬み…自己の存在を認知されない〝孤独〟と、自己を産み落とし、存在を忘却しておいて仲睦まじく過ごす私とレイナを〝憎んだ〟…。


「憎んで、憎んで…でも本当は〝愛を求めた〟…憎み過ぎて本質を忘れ…貴方は自身の目的を見失った…〝狂ってしまった〟…ソレが〝全て〟でしょう?」


私の言葉に答えは返ってこない…ソレは沈黙の肯定だったのだろう…ソイツは恨めしげに私を睨み付ける。


「――ほんと、レイナもアナタもとんだ大馬鹿ね……貴方達の目には私が〝聖母〟にでも見えてるのかしら?」


〝自分の為にレイナを救う〟…成る程、〝ちゃんと分かっている〟じゃないの。


「私は〝私〟…〝マオ・ディザイア〟と言う〝魔物〟…私は私の目的の為に動く…その為に人を利用し、人と手を組み、人を害する…ソレは例えどんな生き物でも変わらない…例えソレが貴方であっても、貴方が私の利益になるなら〝利用する〟…その過程で貴方が〝愛〟を求めると言うのなら…私はソレを惜しみなく注いであげる……ソレが〝答え〟で、ソレ以上もソレ以下も無いわ」

「ッ……」



そう言い終えると、空間が揺れ…私達の姿が薄れてゆく……そろそろ〝この問答〟も終わりだろう…私も私の〝目的〟を果たすとしよう。


「――さて、それじゃあお別れと行きましょうか〝元眷属〟――暫くの間、眠ってもらうわよ」



――バキンッ!――


薄れ行く意識の最中、私は此方を無表情で見詰め続ける〝眷属〟にそう吐き捨て――。


――パチッ――


「――〝銀の牢獄よ〟…〝開け〟」


現に戻ると、レイナへ伸ばした手に力を込めて…その先にある〝玉虫色の球体〟を強く握った。



●○●○●○


――バキンッ!――


その瞬間、砕かれた〝魔力の膜〟が周囲に飛び散り…一瞬にして、世界は霧に包まれた。


「ッ――!」


マオ・ディザイアは見た…霧の世界を抜けた先に有る〝ソレ〟を。


――ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ――


ソレは絶え間なく脈打ち、膨張する玉虫色の〝粘液〟であり、ソレはマオ・ディザイアと、周囲に居る〝肉の泥〟と〝魔石に覆われたレイナ・ハーレー〟を認識すると、玉虫色の〝腕〟を伸ばし、掴み掛かろうとする…だが。


――ゾクッ――


「〝おっと〟…〝捕まえるのはコイツじゃない〟」


その手がマオ・ディザイアを捕らえようとした刹那、背後から現れた〝黒い手〟が…玉虫色の腕を掴んでそう言うと、玉虫色の〝ソレ〟は、渋々と引き下がり、レイナと〝眷属〟を掴んで収縮する。


――カチンッ♪――


そして、何処かから秒針が鳴り響くと…先程まで立ち込めていた霧は、まるで始めから其処には存在していなかったかの様に消え去り…私の手には、銀色に輝き、赤と黒の紋様を刻まれた宝玉が握られていた。


「いやはや、〝おめでとう〟と言って置こうか…〝マオ・ディザイア〟……先ずは〝第一関門〟…〝レイナ・ハーレー及び眷属の封印〟完了だ♪」


そして、場が静寂で満たされたその時…背後から何事も無く現れた黒衣はそう言い…私の手から宝玉を掠め取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ