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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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造物主と被造物

(何故、何故、何故!)


響く轟音、弾ける肉…焼ける苦痛と満ちる疑問がその腸を埋め尽くす。


莫大な力を得た、崇高なる知性を得た…最早、雑多な塵芥には抵抗の予知は無く、造物主でさえ殺してしまえる程の力を得たッ…筈なのに。


――ギュンッ――


「――フンッ!」


己の攻撃は空虚を切り、奴の一撃が身を削る…己の一撃が敵を穿ったとしても――。


「――チッ…ボス、先に上がるぜ…!」


――ズドォォォンッ!――


己が喰らうより早く、奴等は自らを〝捨て石の刃〟とし己の身を抉り裂く礫となる…。


狂っている、イカれている…正気の沙汰とは思えない…自らの生命を容易く捨てる等…常軌を逸している。


生命であるならば、〝死〟は忌避するものだ、己の喪失…自己の忘却、存在の消滅は何より恐るべき〝絶望〟だろう…なのに、なのに何故奴等は〝死〟を恐れない。


〝生物として何かが歪んでいる〟と言う他に無い。



取り分け――〝この女〟だけは、到底許容出来無い。


「アハハッ♪」


この戦場にあって、1度の恐怖も忌避も見せないこの女は…己の攻撃を食らえば決して無事では済まない筈のソイツが…まるでそんなものは驚異のきょの字でも無いと言う風に余裕な笑みを浮かべ、剰え楽しんでいる…その笑顔が…〝不快〟だ。


否――この〝マオ・ディザイア〟の起こす行動、その全てが不快に満ちた己の腸を更に掻き回す。



何なんだ、お前は…他のどの〝下等種〟と違う…この〝不快感〟は…ただ、〝造物主〟だからと言う訳では無い、コレは――。


「ッ――〝マオ・ディザイア〟!!!」

「「ッ!」」


思考の海に沈み掛けたその時、その名を呼ぶ声に我に返る…声の先には、犬の顔をした下等種が一匹…己の直ぐ目の前に居る〝その女〟へ言葉を紡ぐ。


「――〝ぶちかます〟…〝其処を退けッ〟!」

「ッオーケー〝ドッグガン〟!」


その瞬間、マオ・ディザイアがその場から消え…己は〝行動の選択〟に迫られる。


〝ぶちかます〟、〝ぶちかます〟とは、何かを振るうと言う意味だ、何を?…奴等は火を吹く武器を持っていた、爆ぜる玉を持っていた、であれば〝其れ等〟を用いた物か?


炎は構わない、この雨の中で有れば驚異では無い…爆風は耐えられる…礫では己の身を剥ぐことは出来無いだろう。


結論――〝コレは耐えられる〟……そう、己の中で導き出した〝結論〟は――。


――ギュオォォッ!――


「〝出力限界〟――〝兵装換装(ガジェット・チェンジ)〟――〝魔力収縮弾頭(マナ・バズーカ)〟…!」


ソレの〝濃縮された魔力〟を見た瞬間…間違いであったと悟った。


「〝発射(ファイア)〟…!」



●○●○●○


放たれたのは、所詮魔力を圧縮しただけの〝魔力弾〟…しかし、ソレはある意味で〝肉泥の怪物〟と、〝私〟の想定を遥かに上回る〝効果〟を発揮した。


――ゴッ!――


肉泥の外皮に触れる、その瞬間中に内包されていた魔力はその安定した魔力の枷を解き放ち、膨張に伴う破壊を辺りに撒き散らす。


――ドゴォォッ!――


ソレは〝破裂する音〟…肉が焼け落ちる音、骨が砕ける音、大地が割れる音、雨が蒸発する音、風が鳴き叫ぶ音…そして、その音に序に〝熱波〟と〝閃光〟が私達の視界を塞ぎ…数秒間、この〝闘争〟に〝空白〟が生まれる…。


「―――ッ♪」


唯一一瞬、視界端に捉えたのは…黒衣のローブが風に撓み…大きく開いたその奥に見える…〝享楽的な笑み〟…ソレも直に掻き消え…私は〝その時〟が来た事を認識し…〝駆ける〟…。


閃光が視界を白一色に染めるその刹那、大地を〝跳ぶ〟…瞬間前方からの風圧で身体が軋む…視界は白く、音は消えた…だが、その白一色の〝視界〟をキャンパスに直前に見た〝ソレ〟の姿を投影する。


コレまでの〝攻撃〟から、奴の構造は把握している。


〝筋肉と骨の多い不出来な模倣〟…外皮は流動する癖に、中身は半端に詰めている。


あの体躯から存在する〝核〟のサイズは人一人分程は有るだろう。


内側も内側…肉と骨の鎧に守られ、且つどの位置から攻撃されても護りの厚さは変わらない〝中心〟…核移動は肉と骨に覆われ不可能、硬質化を解き、核を移動させるだけの高精度な知性はまだ無い。


つまり、この状況下…〝内部構造〟はイメージと変わらない。


――グチュッ!――


腕部を更なる〝鱗〟と〝爪〟で覆い…その上から〈不可視の触手〉で自身の手に硬質化した鋭い魔力を巻き付ける。


――グニュッ!――


地面を踏む感触が変わる、ソレはつまり〝奴の間合い〟に入り…私もまた間合いに入った事を意味する。


「ッ――ハァァァッ!!!」


視界のホワイトアウトが薄れゆく中…拳を振るう…微かに映る視界の先には私の拳と、振り抜かれた先に有る、〝核〟――。


『……』


結晶化した赤い魔石の中に囚われたレイナの姿…同時に地面が泡立ち…何十もの触手が突き出ては私の肌を、臓腑を…頭部を貫く…其れ等は私を瀕死に追い込めばしたものの、致命傷には至らず…その僅かな生命が…〝結果〟を分けた。


――バキッ!――


放たれた拳は、結晶化した魔石を貫き、レイナの胸に開いた〝心臓モドキ〟へと伸ばされる。


――ガッ――


ソレを掴んだその瞬間、私の意識は一瞬虚空へて沈み…ふと、我に返った時。


「……」


私の目の前に見知った顔が現れ、彼女は私を冷たく見据えていた。


「レイナ…なんて、変なジョークは言わないでしょうね、〝元眷属〟」


似ても似つかぬ雰囲気に、私はレイナの姿を模した〝ソレ〟へそう告げると…。


「………〝マオ・ディザイア〟…お前は――」


ソイツはその時、始めてになってその瞳に〝理性〟を宿し…私へ問う。


「お前は…〝(なん)〟なんだ」


その瞳には、底知れない憎悪と嫌悪、私への怒りと、知性体特有の疑問が複雑に絡み合った人情的な葛藤を宿し…言葉を選ぶ様に、私へと問い掛けた。

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