この道を進みし者、一切の希望を捨てよ
本日の投稿、2本目は夜に投稿予定です。
『喰らう』、『喰らう』、『喰らう』、『喰らう』、『喰らう』
延々と続く飢えを満たす為に喰らう。
喰らい、取り込み、学び、増える…知性とはこれ程までに素晴らしい物だったのか…あぁ、何故今まで脳髄の機能を作らず、模倣しなかったのか!。
世界が変化した、色が付いた、輝いている!――ただ一片の肉片でしか無かった己は、ただ造物主の言葉を実行するだけだった肉の歯車で有った己は…最早〝造物主〟の声すら無視する事が出来る程〝知性〟は育っている、それが堪らなく〝心地良い〟…。
――ズズ…ズズズズッ!――
〝死肉の娘〟と融合した結果だろうか…この地に満ちる〝瘴気〟を嗅ぎ分ける事が出来る様に成った、この地の何処かに眠っている〝溜まり場〟を喰らえば、己は更なる〝拡大〟が可能になる筈だ…。
『探せ』
己が身体に命令する。
『さがせ』
大地を砕き、道行く〝瘴気の塊〟を喰らいながら。
『サガセ』
己が〝欲望〟の為に進み続ける…その為ならば、例え――。
――ゾワッ!――
「ッ――MImimimi…!」
「〝不可視の触手〟」
〝どんな相手〟だろうと…殺してみせる…!
「MIiia―――!!!」
「うっそぉ…?」
○●○●○●
――バサッ…バサッ…バサッ…!――
「どうなってんのよコレ?」
上空から、敵を見据える…相応の魔力を込めて放った一撃は、広がり続ける〝肉の海〟を叩き付ける、その身を押し潰した…だが。
――ゴポポポッ!――
押し潰された肉の海は、それが直撃した後間髪入れずに再生し…ものの数秒で何事も無く流動と拡大を続けていた。
「馬鹿みたいな量の魔力に物言わせた再生…燃費の悪い〈再生〉をあぁも使って何で〝魔力〟の底が見えないの?」
そんな敵の身体がボコボコと泡立ち、その肌に現れた〝人型の肉塊〟は…その目に不出来な眼球を揃えて私を睨み付ける…すると、その姿を認識した触手はその身から百を超える触手を伸ばし…その大部分を私へ飛ばす。
――ドッドドドドドッ!――
その触手達は重く…高密度に作り出され私を貫こうとするが…其れ等は私の周囲を護る〈不可視の触手〉によって防がれ、千切られ、形を喪い消えていき…その隙に私はヤツへ魔術を放ってゆく。
――バサッ!――
避けて、切り裂き、躱して潰す…そうやって繰り返し繰り返し迫る触手を潰し、隙を伺う攻防が続く中…不意に、空に伸びた無数の触手が黒い翼を持った〝黒衣の人間〟によって切り刻まれ、肉塊と化す…その変化に視線を向ければ、其処には〝黒衣〟が居て…ソイツは私の零した言葉に言葉を返す、曰く――。
「〝改造〟されたんだよ、この〝ゲーム〟に相応しいボスにな」
と…その、訳知り風な黒衣の言葉に私は無数の憶測を脳内で生み出しつつ、ソレへ問う。
「〝改造〟ってなに?」
「この街はかつて〝多くの死〟が広がっていた…その死は街が滅んで幾百年経とうが消えない染みとなって残り続けている」
その問いに黒衣が返したのは、何処かで聞き覚えのあるその言葉…ソレに私はこの街に有った〝ある男の記録〟を思い出し…黒衣へ返す。
「ッ…それは」
しかし、その言葉は長くは続かなかった…何故なら、黒衣の隙間から覗くその紫の瞳が…私の心を覗く様にジッと此方を見据えていたのだから。
「――ふむ、知ってるらしいな…俺としては是非その〝記録〟も蒐集したいが…今はソレを置いておくとして…〝コレ〟の問題だな」
そんな黒衣はそう言うと、眼下で繰り広げられる〝コボルト達〟の奮闘に視線を送りながら触手達を捌いていく。
「おい、〝油〟持ってこい!――この雨じゃ火は直ぐ消えちまう!」
「応よ!」
土砂降りの中では炎は効果が薄い…しかし、相応に兵士としての練度を持ち合わせた彼等は連携してある装備、道具を使いながら触手を相手に善戦を続けていた。
「――〝良い兵士〟だ、部下に欲しいくらいだな…だが、いかんな…やはり、奴等では拡大を抑えるだけで手一杯…物資が尽きれば処理が間に合わないか」
そんな彼等を見て、黒衣は称賛に熱を込める…私は、そんな黒衣に話を引き戻させる様に問い掛ける。
「…ねぇ?」
すると、黒衣はハッと我に返った様に私を見ると、その装いからも分かる様に微かに照れた様子で話を戻す。
「あぁ、悪い悪い…とどのつまり彼奴は街にある〝瘴気〟…〝不浄の魔力〟を啜り…自身を増殖させている訳だ…数ある街の中でも特に最悪な部類の〝立地〟な所為で、倒すのも難儀――」
そして、そう説明しながら…私を見て…微かに、愉しむ様な目を向けて言う。
「〝救う〟のも難儀…いや、単純に殺すだけなら救うより断然〝マシ〟だな♪」
〜〜〜〜〜〜〜
「――有り体に言えば、〝レイナ・ハーレー〟は…人間として見れば〝死んでいる〟」
「…は?」
ソレは、闘争が激化する以前の密話…黒衣のソレから紡がれた言葉に、マオ・ディザイアはそう呆然と言葉を漏らした。
「そう、〝死んでいる〟…見てくれは生きている風体だが、その本質は〝死人〟だ…肉体機能は殆ど機能していない」
黒衣はそう言いながら、ボトリと…懐から取り出したソレを投げ置く…ソレは……〝少女の腕〟だった。
「〝腐らない死体〟…〝心臓モドキ〟による肉体の修復が作用している…本物の人間の腕だが…腐った部位は心臓モドキの細胞に入れ替えられ、何れ肉塊に成り果てるだろう」
「……態々、ソレを言いたい為に呼び止めた訳じゃ無いでしょう?」
黒衣の言葉に、私は思考し…それから、そう黒衣へ告げる…するとソイツは手を1つ叩き、私の言葉を肯定する。
「その通り…お前は〝あの娘〟を救いたい…それこそがお前の〝勝利条件〟…しかし、当該の娘は既に〝死人〟…端から〝生存ルート〟は存在しない……それが、〝この脚本〟だ―――だが、それでは〝不公平だ〟」
そしてそう言うと、その影をグツグツと煮立たせる…いや、そんな〝錯覚〟が私の目に映る。
「〝資格者には公平な舞台を〟…それが世の在るべき姿であり、相応の〝試練〟の代価には当然…ソレに見合う〝報い〟は有って然るべきだろう」
その影は紫の目をした不気味な人型となり…その手に〝禍々しい箱〟を取り出すと…その箱を黒衣は手に取り、開く。
「〝脚本〟は変える…〝俺の舞台〟にな?…お前にくれてやろう、飛び切りの絶望を、飛び切りの希望を…〝公平な立ち位置〟から、〝不公平な道のり〟を…そして、決して価値の釣り合わない〝報い〟を、地獄を進む者に大いなる祝福を、普遍を歩む者には小さな恵みを…〝選ぶのはお前次第だ〟」
その箱の中には…〝玉虫色の宝玉〟が…煌々と輝いていた。
「〝救う〟ならば、〝コレ〟を…俺が俺のやり方で…〝レイナ・ハーレーを救う術〟を教えてやろう…無論、コレは〝地獄の道〟だがな♪」




