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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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魔獣協定は、触災の下に締結せん

本日遅ればせながらの投稿…。


いやすみません、仕事が長引きました。

――ゴポッ!――


その姿を認識した刹那、私の手は可能な限り早く、且つ最高火力を発揮する形状を象り始めた…しかし。


――ガシッ!――


「おっと、待て待て…一旦落ち着けよ…無駄な争いをしてる暇は無いんだ」


そんな私の一手より早く、黒衣の人物がその手で私の腕を押さえ付ける…そして、その際に通じたその瞳から…私は彼が交戦の意志を持っていない事を確認し、1度ざわめき立つ心身を落ち着かせる。


「用件は1つだけ――」

「あぁ、〝レイナ・ハーレー〟…あの娘を返せって言うんだろ?…勿論そのつもりだったんだが…ちょいと面倒な事になった」


そして、私がそう言うより早く…まるで心を読んでいたかの様に私の言葉を先回りして、その人物はそう言い困った様に顔を振って視線を向こうにやる。


「――どうやらあの娘、厄介な〝運命(シナリオ)〟を背負い込まされていたらしい…いや、ある意味で俺もお前も〝その一因子〟に成った訳だが」


男の言葉に疑問を呈する間も無く、男の指さすその方向に目を見やる…その刹那。


――バキッ、バキッ…バキッ!――


大地を押し退け、空を掻き分けて廃墟街から天へ向かって伸びる〝肉の泥触手〟が…私の視界いっぱいに広がっていた。


「アレは…私の〝眷属〟…?」

「あぁ、〝元眷属〟だな…覚えは有るだろう、レイナ・ハーレーに埋め込んでいた〝心臓モドキ〟だ…アレが暴れ出した」


その光景を整理する私の横で、その人物は淡々と言葉を紡ぎ上げる…どうやら彼は、この状況の全てを把握しているらしい…ならば。


「――知っている事を全て説明して、協力はその後考えるわ」


私は彼へそう言い、廃墟街に現れ…凄まじい魔力を纏ったソレの氾濫をその目に焼き付けながら頭の中でこの〝強敵戦(レイドバトル)〟の解法を模索する。


「オーケー、そういう訳だお前達…悪いが〝賞金稼ぎ〟はキャンセルしろ」


そんな私を尻目に、黒衣のソイツは私の背後から現れたコボルトの傭兵達へとそう言う。


「――生憎、依頼主はアンタじゃないな」

「アレの3倍は払ってやるよ、序にウチのスミスでお前達の装備も直してやる、その依頼は破棄しろ」

「…〝契約〟だな?」

「〝当然〟だ」


その言葉にリーダーのドッグガンが黒衣へ否を唱えるが、黒衣が援助すると申し出ると、ドッグガンはその申し出を受け入れ武装解除と共に待機する…ソレを尻目に、黒衣は私へ手短に状況を説明を始めた。


「先ず始めに断っておくが、コレは俺が意図した物じゃない…だが間接的に関わったのは事実だ…それもこれも全部はあのキノコ女の行動に端を発しているのだがな」


そのキノコ女が誰なのか…は知らないが、その人物の蔑称を聞いて渋い顔をしている面々を見るに、碌でもないプレイヤーなのは確からしい。


「さて、状況はシンプルだ…あの娘の中に有った〝心臓〟…正確には其処のマオ・ディザイアが埋め込んだ〝万能細胞〟が悪さをしている」

「その件だけど、何で貴方がソレを知ってるのかしら?」


そして続け様に告げられたその言葉に私が問い掛けると、黒衣の人物は何事でも無いように私へ言う。


「あの娘の魂とあの眷属が交じっていたのを〝視た〟からだ――それと、重要なのは其処じゃない、ソレはまた後で説明しよう…今はその〝細胞〟の攻略法を教えよう」


そして、彼がそう告げたその瞬間――。


――ドゴォォォンッ!――


膨れ上がった肉の泥が、一際激しい膨張の末に炎と衝撃を撒き散らして破裂する。


「――彼奴の弱点は〝炎〟と〝雷〟だ…そして面倒な事に〝物理攻撃〟は殆ど効果が無い…流動する肉体は飽くまでもガワ、その中にある〝核〟は話が別だがな」


ソレを背景にそう言うと、向こうから煙を纏った黒炭が男の方に飛んでゆく。


――クルクルクルクルクルッ!――


そしてソレは此方へ迫る程その姿を明確に晒し、黒炭の様に思えたソレが、獣の頭部である事に気付く。


「ウギャアァァァァッ!?」


悲鳴を上げながら吹っ飛んできた獣の頭は、そのまま黒衣に激突する…かに思えたが、瞬間、黒衣は振り向きもせずにその頭部を鷲掴みにし…片手で弄びながら、明らかに死んでいる様に見えるソレに話し掛ける。


「おいおい、予定よりタイムアップが早くないか?…何の為にお前に〝蒐集品〟を貸してやったと思ってんだ?」

「無茶言わないでくれるかねぇ!?――私は研究者であってバトルジャンキーじゃないんだよッ、寧ろ一人でアレを押さえてたんだから褒め給えよ!」

「たわけ、俺の部下ならこの倍は余裕だ」

「そりゃ君の部下が可笑しいんだよ!」


シリアスをシリアルに変えるその漫才に、私達の緊張が砕ける…それから一言二言二人は言い争うと…不意に狼の視線が私を向く。


「あ、マオ・ディザイア!…私のお目当てが居るじゃないか!――ねぇねぇ君、私に君の肉体をちょこっと採取させて――」


――グシャッ!――


そして、狼がそう言い…その言葉が言い終わるその前に黒衣はその頭部を握り砕き…砕いた死体は地面に蠢く〝影〟の中に消えていく。


「さて、馬鹿が最低限役割を果たしてくれた所で…戦闘前に最後の警告だ」


そして、男はそう言い…周囲の魔力を啜りながら拡大して行く〝肉泥の海〟を見て続ける。


「アレに〝喰われるな〟…アレは〝混血〟の劣化版だが、〝原種〟と同じ力を有しているからな…下手に食われちまえば彼奴の〝知性化〟と〝増殖〟が加速する…いざとなれば〝自爆〟して可能な限り餌を減らせ…オーケー?」


ソレを締めに黒衣は私達に背を向け、元眷属に相対する…そして、コボルト達へ指示を出し――。


「それじゃ――〝行ってこい〟!」


その瞬間黒衣の男の魔力がコボルト達へ注がれ…彼等はその魔力が齎す驚異的な肉体の活性化に面食らいながらも即座に順応し、元眷属へと向かって行く。


「変形――」


そして私も…〝眷属〟の討伐に向かおうとしたその矢先、黒衣が不意に呼び止める…。


「さて、〝マオ・ディザイア〟――少しだけ、話をしようか……このままお前を行かせるのは〝不公平〟だからな」


そして、黒衣はそう言い…私へ〝呼び止めた理由〟を…語り始めた―――それは――。

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