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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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ある司教の日記

本日の投稿、2本目は夜に。

――ペラッ――



■■■年■月■日


私の名はアレクサンドロ・ハルバッサ、今日からこの教会を取り仕切る司教として、〝肥沃のハリル〟にやって来た…コレを期に、習慣として日記を初めて見ようと思い筆を取ったが…正直な話、己に司教としての器があるのかと不安だが…成るように成るしかない。


兎に角、今日は就任式と方方への訪問があるので此処までにしよう。



〜〜〜数日後〜〜〜


相変わらず今日も忙しいが、就任当日程ではない…こうして少しは日記に触れられるのがその証明だろう。


この街は比較的平和で周辺の魔物もそう多く無い…稀に狼に襲われる者が出る以外では家事仕事等で起きる小さな傷を癒すか、教徒と共に祈りを捧げる程度の仕事だ…まぁ、私は書類仕事もあるのだが…コレも同胞を纏め上げるよう大任を任された者の務め、粛々と熟すとしよう…少しばかり疲労を口にするのは、主も許してくれるだろうか?


――ペラッ…ペラッ…ペラッ――


ソレから暫く、平穏な期日が続き…この日記の持ち主が司教として居着いて1年が経った頃…漸く〝進展〟が見えた。


■■■年■月■日


この街で司教を務めて1年、周囲の人々の助力もあって…私はすっかりこの司教と言う大きな肩書に振り回される事も少なくなってきた…まぁ、未だに小さなミスを起こすことはあるが…優秀なシスターや神官達が手助けしてくれている。


近況は兎も角、今日は領主殿から何やら話が有ると呼び出された…はて、一体何事だろうか。




領主殿に話を聞いた、何やらこの街に奇妙な〝一団〟が隠れ潜んでいるらしい…〝邪教〟の類らしく、人を拐い怪しげな儀式に生贄を用いている様で…近日その一団を捕縛し、拠点を改める際、高位の神聖術を保険として用意したいらしい。


この街の民が危険に晒されているならば、見て見ぬ振りは出来まい…コレに同行することを受諾した…3日後包囲制圧を実行する。



〜〜〜3日後〜〜〜


■■■年■月■日


邪教の制圧は完了した…が、やはり攫われていた者達は生贄として殺されていたらしい…何と惨い事だ。


死者は祈り清め、墓に埋葬した…捕縛した者達は領主殿が詰所へ運び、尋問と処罰を下すらしい。


彼等の根城を調査した折、邪教の教祖と思わしき男の部屋から奇妙な書物を手に入れた…名は……神代文字で書かれている。


どうやらコレは魔導書の類の様だ…魔導書自体から悍ましい魔力が滲み出し、周囲へと伝播している…コレを放置するのは不味いだろう、瘴気に耐性のない者は心を障られ精神が燃え尽きるだろう…一先ずコレを持ち帰り、解読と封印を始める事にした。


――ペラッペラッ…――


それから2年…何の変哲も無い日々が続いた記述が有る…そして、そんな日常は、ある日突然打ち破られたらしい。


■■■年■月■日


魔導書、解読を成功した…だが、何と言う事だ…コレは読み解くべきでは無かった…その内容は悍ましい物で満ちていた、悪徳の神、堕落の魔術、邪神の眷属や召喚の儀式…姿形もさることながら、その内容の全てが悍ましい…アレだけの瘴気を孕んでいたのも納得だ。


しかし、それ以上に恐ろしいのは…コレは単なる〝写本〟に過ぎないと言う事だ、それは原典となる書物がこの世界の何処かに有ると言う意味であり、この書物以外にも無数に〝悍ましき写本〟が存在していると言うことでもある。


直ぐに領主殿に伝えた…領主殿は深く考え込んだ様子だったが…直ぐに国王様へ報せると言ってくれた…、


何としても、原典の魔導書を探し出し、焼却しなければ…。


………


……………


…………………




■■■年■月■日


失敗した…我々が事実に気付くより早く…既に邪教はこの国全域に広がっていた。


私が気付いた時…既に領主館は正気を喪っていた…否、この街のみならずこの国に居るもののその全てが徐々に悪夢を通じて正気を削られているのだ。


聖なる神の加護故にか、我々の精神は未だ健在だが…それも時間の問題だろう…早急に対策を取らねばならない。



■■■年■月■日


国に悪徳の病が蔓延している…そう気づいてから半年経った…アレから悪夢はより深く精神に入り込み、心を掻き毟る…未だ解決策は、見つかっていない。


■■■年■月■日


1年…既に国は崩壊しつつある…多くの民が堕落と悪徳に侵され、政を統べる者達も皆、その心を邪心に染めてしまった…ソレが悍ましき〝邪教〟の手によるものであると知るのは…恐らくもう、私だけだろう…そして何れは私も……。



■■■年■月■日


ある日、悪夢を見た…いや、見るはずだった。


普段の様に悪夢に落ちた時…相変わらず悍ましい光景が其処に広がっていた。


殺人、暴食、邪淫、略奪、惰眠…其れ等が私の精神を侵す夢…しかし、そんな悪夢の中で…私は奇妙な男に出会った。


男は名乗らなかった…〝名乗る名は既に喪った〟と告げ…悍ましい悪夢を黒に染め上げた…あぁ、それだけで私の心は幾らか安らいだが、男はソレを無視して…その瞳に私を映し、告げた。


『この国は滅びる、お前も死ぬ…救いは無い』


その言葉は無慈悲だが、男の瞳は優しく私を捉え…無慈悲の中にある希望を語る。


『しかし、まだ足掻く事は出来る…少なくともお前はその〝権利人〟と成った』


その言葉に、私は問うた…〝何をしろと言うのだ〟…と。


『〝異界の賢者〟を探すが良い、〝天幕〟を降ろすのだ…かつて神が堕落に落ちた大地を空からの災禍で焼き払った様に』


男はそう言うと、私の胸に触れ…〝焼印〟を刻む。


『猶予は一月…お前に〝時間〟を与えよう…悪徳の夢、精神を穢す病は私が引き受けよう…ただ滅びるも、足掻いて死ぬも…選ぶのはお前次第だ』



男がそう言うと…私は夢から醒め…今まで感じていた疲労、精神の摩耗が綺麗さっぱり消えているのを実感した。


そして、私は夢の男に促され…この悪徳を終わらせる為に〝異界の賢者〟を探す旅に出た…。










■■(日付を書こうとした軌跡が有る)


――成し遂げた――私は成し遂げた――この身は雷雨と共に朽ち果てよう――悪徳の病と共に――友よ――異界の賢者■■よ、夢に生まれし空洞よ――明日を生きし人類よ――私は、アレクサンドロ・ハルバッサは――悪徳を断ち切った。


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