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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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瓦礫の街に潜む謎

本日の投稿。

――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ…――

――パシャッ、パシャッ!――


「う〜ん…凄まじい土砂降り…一種の滝行見たいねコレ」


しとどに濡れた瓦礫の道を進み…私とレイナはこの寂れた無人の廃墟街を軽く見渡す。


コレが晴れた日差しの中にあれば、かつて栄えた立派な街に、思いを馳せる事も出来ただろうが…この土砂降りの中にあっては、ただただ不気味な、陰惨とした霊障現場以上の感想はとても紡げなかった。


――ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――


「――取り敢えず、何処か探索出来そうな場所、領主館とか、図書館みたいな場所に行きたいわね…幾ら魔術で土砂降りを弾けるからってそう長く展開し続けると疲れるし」

「…そうですね」


周囲にそれらしい建物は無いかと辺りを見渡す…すると、この瓦礫の道の先に、まだ原型を留めている酒場を見つけ、一先ず其処に駆け込んでゆく。


――ギィィッ!――


雨露に蝕まれ、留め具をプラプラと揺らすソレを押し退けて中に入る…しかし当然、こんな有様では店内から香る酒の匂いも、低俗で粗野だが活気ある人の話し声も響く事はなく、素寒貧な〝静寂〟だけが此処に屯し、古ぼけた酒場を我が物としていた。


「此処なら暫く雨風は凌げそうね」

「…はい」


酒場に入り魔術を解く…まだ大した負荷でないとは言え、やはり展開し続けるのは神経を使うものだ…だが。


「どうかした、レイナ?…随分上の空だけど」


〝彼女〟…レイナのソレは、ただ単に魔術を使い過ぎただけが理由では無さそうだ。


「ッ…その」


私が問うと、彼女は困惑した様な顔で周囲を見渡し…おずおずと、私へ言う。


「何と言えば良いんですか…この街に入ってから、〝視線〟…の様な物を感じる様な気がして…」

「〝視線〟?」


そう言われて、この街に入り此処に至るまでの道を思い返す…確かに物悲しく、陰惨としていたし…お化けの1つ2つは出そうな場所だとも思っていたけれど…私の五感、知覚には、そんな気配は1つもしちゃ居なかった。


「――私にはそんなの感じ無かったわね」

「ッ…そ、そうですよね!…すみません、私の気の所為で――」


私の言葉に、レイナがそう結論を着けようとする……しかし、私はその結論に待ったを掛けてレイナへ続ける。


「待った…レイナ、直ぐに気の所為だって切り捨てるのは良くないわよ?」

「ですが…私もあまり自信がないんです…確信出来るだけハッキリとした感覚は無くて…」

「〝絶対こうだ〟…なんて、確信を持って動ける事なんかほとんど無いわよ、私だって基本的には今まで手に入れた情報、知識、経験、感覚、其れ等で繋ぎ合わせた…最も状況に則した推測を軸に動いて、答え合わせをしてるだけなんだから…こういう時こそ感覚は侮れないものよ」

「…そう、ですか?」

「えぇ…それに、こんな街がただ廃墟として有るだけなんてそれこそ信じられないでしょう?…滅びた理由は何なのか、何故人は此処を捨てたのか…此処で何が起きたのか…足を運んだなら調べてみないと♪」


私がそう言うと、不安気だったレイナの表情が少し和らぐ…どうやら、私の言葉が幾らか慰めになったらしい。


「はい…何時か、私の記憶も取り戻さないといけませんしね」


レイナはそう言い明るく笑うと…この酒場にも少しの華が広がって行く…そして、私とレイナで姦しく情報交換をしていると…幾らか雨脚は弱くなり、私達は魔力を回復し終えた状況で、再度この街を進み始めた。


「それじゃ、早速調査に出かけましょうか」

「はい、この街に何があったのか…調べ尽くしてみましょう」



○●○●○●


――ペラッ、ペラッ、ペラッ――


「おっかしいなぁ…〝此処〟にも載ってない」


――バサッ!――


薄暗く、薬臭い室内で…白衣の女はそう言い、無造作に手に持っていた書物を机に投げ置く。


「現有する全ての魔物図鑑にも載ってないって事は変種かな?…プレイヤーが関与してるなら、それもあり得るかもだけど…」


そう言い、泥の様に黒い珈琲を流し込むと…無気力そうな表情の、瞳の奥に宿る強い〝好奇心〟を更に輝かせて、テーブルにある〝黒電話〟を手に取る。


「――〝世界の外〟から持ち込まれた生物の可能性も有るし…〝彼〟に連絡を、取ってみようか」


カチ、カチ、カチと、黒電話を慣れた手付きで操作すると…彼女はそのまま受話器を耳に添えて、応答を待つ。


――『もしもし?』――


すると、受話器越しに男の声が響き…男と繋がった事を確認すると彼女は彼へ言う。


「やぁやぁ〝蒐集者〟君久し振り!――〝前のバイオハザード〟以来かな?」

『あぁ、君か〝薬学者〟…その件については、互いに良い成果を得られたね』

「代償に〝面倒な奴等〟に目を付けられたけどね!」


彼女等はそう、旧友との歓談に耽り、暫しの時間を浪費する…そして、話に区切りをつけ、先に受話器の先に居る男が話を切り出した。


『ハッハッハッ――それで?…私に〝用件〟が有るのだろう?…今度は何を企んでいるんだい?』

「おっと、そうだった!――実は〝ある人物〟を追っている最中に、〝面白い物〟を見つけてね…少し君の知恵を借りたいんだけど…」

『ほう?…私の?』

「そうそう、〝異界の獣〟は君の専門だろ?」

『ふむ…手元に〝記録〟はあるのか?』

「勿論、〝映像記録〟を貰っているよ」

『成る程…じゃあ、少し〝目を繋ぐ〟よ』


本題に入り、二人は話し合う…そして彼へ用件を伝えると、その内容に彼はそう言い彼女に映像を再生する様に告げる。


――カチッ、ジジジッ――


ソレを彼女は瞬きせずに見据え…そのエメラルドの瞳を、紫色に染めてジッと見詰める…コボルトの傭兵達と、連中に囲まれ銃口を突き付けられている少女の記録。


『ふむ…ふむ……ふむ』


受話器越しに、男はそう言い…その場に居ないにも関わらず、その映像を観ているかの様に反応し…少女が包囲され、撃ち殺され、その胸元から姿を表した〝肉の泥〟がコボルト達を殺害する光景に言葉を漏らす。


『――成る程…〝面白い〟な…この娘がお前の狙いか?』


一部始終を見終えた男は、先程とは打って変わって口調も声色も変化させて、彼女へ問う。


「前までは違ったけど、今じゃ〝捕獲対象〟に入ったよ…それで、何か分かったのかい?」


そんな彼の問いに彼女はそう答え…停止した記録映像に映る、この世のものとは思えない、悍ましい姿をした〝ソレ〟を見ながら男へ問う。


『あぁ、〝知っている〟…いや、正確には〝知っている存在〟の近縁種か?…〝ルーツ〟はこの世界の物では無い、だがこの世界に〝順応した個体〟だ』

「へぇ?…その原種の名前は何?」

『〝■■色の泥〟、〝■■の奴隷〟、〝■■の細胞〟…呼び名仇名は数多いが…特にこの名は広く知られているな―――〝■■■■〟だ』


その問いに、男はそう答えると彼女は男の言葉を手近な紙束に書き記し、満足気に笑う。


「へぇ、成る程成る程」

『しかし、あの娘…中々〝奇妙な状況〟だな』

「ん、それはどういう意味かな?」


そして男は、受話器越しにそう言うと…彼女の顔は映像に居る少女へと向けられる、そんな彼の反応に彼女が疑問を問い掛けようとしたその時、彼女の問を遮って男は続ける。


『〝薬学者〟――此方で〝人員〟は用意しよう、そっちは何人かプレイヤーを引っ張ってくれないか』


そんな唐突な男の要請に、彼女は訝しげに受話器の男へと懐疑的な言葉を送る。


「……君は何を企んでるんだい?」

『なに、〝其処の娘〟に興味が湧いた…物次第では〝面白い物〟が見れそうだからな』


しかし、そんな言葉に男は…はぐらかす様に、悦を孕んだ言葉を紡ぎ、怪しい笑い声を響かせた

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