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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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山岳と換金

本日の投稿、2本目は…恐らく無し。

――ズオォッ!――


「――〝ありがとうレイナ〟…ちゃんと、〝脱出〟出来たみたいね」

「はい、なんとか…」


僅かな浮遊感と共に、レイナの目の前に折り立つと…私はレイナを一瞥し、それから周囲に警戒しつつ…肉腫の鳥(眷属)に近付く。


「ご苦労さま」


――バクッ!――


そして、変形した腕で眷属を再び統合すると…僅かに回復したMPとHPで自身の姿を変化させ…レイナの手を取る。


「あら?…レイナ、服に血がついてるわよ?」


その時、ふとレイナの衣服の随所に血が付着しているのを発見する。


「へ?…あ、ホントだ…転んだ拍子に着いたんでしょうか?」


私の言葉にレイナもソレに気付き…原因を呟くと…魔術で衣服を洗浄し、私を見上げる。


「この程度なら問題無いですし…本来の目的に向けて、準備しませんか?」

「…――まぁ、そうね…それじゃあ夜になるまで何処か隠れられそうな場所で一休みして、朝になったら拠点作りを始めましょうか」


レイナの言葉に、私は肯定を示し…小休止の為に手頃な洞窟を探し出して、レイナを休ませる…。


「――さて、暫く暇だし、〝丁度いい〟わね」


そして、レイナの眠る洞窟を軽く巨石で蓋をすると…そのまま目を閉じ、〝其処〟へ行く。


――カランカランカランッ――


目を開けば其処は、相変わらずの〝宇宙模様〟…背後では小洒落た扉にドアベルがカラカラと小気味よく鳴り響く…〝奇妙不可思議の雑貨店〟……〝ラック・パール魔法店〟に辿り着く。


「お待ちして居りましたよ〝マオ・ディザイア(お客様)〟…本日は、〝貴金属類〟の高額買取を行なっています♪…フフフッ♪」

「……そういう事?」


入店して早速、顔馴染み?…な機械仕掛けの頭部をした店主が意味有りげにそう言い笑う。


「――それじゃ、都合が良いわ…〝お宝の換金〟をお願いしたくて…あと、〝記憶喪失の人間〟を治す方法とか、魔術、魔道具が欲しいのだけど…」


その笑みに私はそう返し…カウンターへ近付く…しかし、一定の距離に近付くと、私は何時も通りの機械頭をした店主では無く、カウンターに設けられた〝椅子〟と、其処に座る…と言うより鎮座する〝ソレ〟に意識が向く。


「……何で信楽焼?」

「あぁ、ソレはとある〝お客様〟が手掛けた一品でして…見事な出来ですので此処に飾っているのですよ」

「ふ〜ん…」


トレーダーの言葉を軽く聞き流しながら、横に座る信楽焼をジッと見詰める…コレを見てるとお祖父ちゃんの家を思い出すわね。


「……購入致しますか?」

「〝効果次第〟ね…特に何も無い置物なら、別に要らないかな」

「では不要ですね…それでは、手早く取引を済ませましょうか」

「オーケー、分かったわ」


他愛も無い会話をトレーダーと交わしながら…私はインベントリから必要な〝商品〟を続々と取り出して行く。


――ドサドサッ、ドササッ!――


「おぉ…コレはコレは…かなりの〝収穫〟で」

「精査は任せるわ…贋作何かも混じってるかもだけど、その辺りは私分からないから」

「お任せを、こう言うのは得意さ」


私がそう言うと彼はカウンターの下から、大きな秤を取り出し、ソレの上に袋を一つ一つ載せて、紙に何かを書き記していく。


「――それでは、査定の結果…総取引数6袋…合計買取金額は〝2400万z〟で如何かな?」


そうして記された数字を私は一瞥し…彼の言葉に少し考え…ソレを受諾する。


「ん〜…それで良いわ」

「では、〝取引成立〟と言う事で」


すると、秤と宝物の詰まった袋はパッと消え…同時に私のインベントリに記された〝所持金〟の桁が1つ増える…盗品の買取としては中々悪くなかったわね。


「さて…それではもう一つの〝取引〟ですが…ご要望は〝記憶喪失〟を治す手段…ですか」


そんなこんなで、此処に来た目的の内一つを達成したあと…私達は〝本題の方〟へフォーカスする。


「そう、うちの契約者が〝飛んじゃって〟ね…どうにか記憶を取り戻して、魔術をちゃんと扱える様にしたいのよ、出来る?」

「う〜む…手段は幾つか…魔道具や魔術にも〝記憶〟を操作出来るものは御座います…が、中々難しいですね」


私が状況を説明すると、彼は顎に手をやり難色を示しつつ、私へ告げる。


「〝記憶喪失〟から立ち返る手段は幾つか有るね…それこそ、自然治癒…時間を掛けて、過去の行動をなぞる事で記憶を取り戻すケースが有るし、〝強いショック〟を送ることで、過去の記憶をフラッシュバックさせ、記憶を取り戻させる事も出来る…その為の魔道具も有るには有りますが…その手の異常は大抵〝病〟として、罹患者自身が何らかの問題を抱えているのが殆どですね」

「つまり…〝自然治癒〟を待つしかない、と?」

「必要とあらば、その手の魔道具を用意致しますよ…〝悪夢を見せる枕〟や、〝記憶を映し出す鏡〟などなど…」


その言葉に私は、少し考え込み…それから首を横に振る…。


「いえ、魔道具は要らないわ…だったら、此方で頑張るわ……一応、その〝魔道具〟も、必要になったら買うわ」

「左様で…」


取り敢えず、此処でコレ以上の収穫は無いと理解した私はそのまま次の拠点に必要になりそうな物と、携帯食料を幾つか揃え…所用を済ませる。



「取り敢えず、コレで良いわ」

「ご利用、ありがとう御座いました…〝マオ・ディザイア〟様」

「えぇ…それと――」


そして、その場を後にしようとする私へ〝彼〟は恭しく礼をして私を送り届ける、そんな彼へ…私は店を出る前に一言告げる。



「〝トレーダー〟に化けるなら、もう少し〝口調〟を真似しなさいな…〝ウォッチャー〟」

「ッ!」


そして…私は魔法店を後にし…目覚めると…回復した魔力を使って、自身の肉片から〝眷属〟を創り出す。


「――さて、後は軽く周辺の状況を見て回りましょうか」





――ガチャンッ――


残された〝彼〟…トレーダー改め、〝ウォッチャー〟はそう言い立ち去る〝友人〟をジッと見送りながら沈黙する。


「――ふむ…どうやら〝彼女〟は、我々が考える以上に〝人を見ている〟様ですね」


そんな彼へ、この場には不釣り合いな〝信楽焼〟がそう言葉を紡ぎ…その姿を〝異様な人型〟へと変化させ…ウォッチャーと瓜二つな〝時計頭の男〟が現れる。


「――尤も、我々を〝人間〟と呼ぶかは、少々疑問の余地有りですが」

「……フフフッ、あぁ…そうだね〝トレーダー〟君……いや、まさか気付かれるとはねぇ…フフフッ♪」


トレーダーのおちゃらけにウォッチャーはそう言い、カチカチと秒針を揺らしながら…水晶に映る〝彼女〟を見据える。


「それに…フフフッ……〝良い目〟をしてたね…うん……うん♪」


その視線には…楽しげな、愉しげな…〝揺らめく熱〟が籠もっていた。

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