賞金首は捕らえられず
2本目。
「ッさせん!」
――ブンッ!――
両足を膨張させ…凄まじい推進力を背に駆け抜ける〝ソレ〟に、ヨミノが立ちはだかる。
――ガッ!――
「〝破脚撃〟!」
彼女は振るわれた拳に脚撃を放ち…その魔力を暴発させる…しかし、その拳に魔力が伝わり切るより早く――。
――グチャッ!――
「ッ!?」
その拳は形を失い崩壊する。
「――♪」
その様子を〝ソレ〟は歪な笑みを浮かべながら見つめ…当惑する彼女に手を伸ばす。
「ッ――!」
その行動に、ヨミノは辛うじて反応し後方に飛び退く…そして、〝ソレの攻撃〟を躱したと安堵した…その時。
「ッまだだ――〝硬めろ!〟」
「ッ!?」
「――♪」
後方から飛ぶ鋭い命令と、前方で捉えた〝弄ぶ様な笑み〟に…ヨミノは数秒遅れて動き出す。
――グジュジュジュッ!――
伸ばされた手は空を掠めた…かと思えば、その腕はボコボコと膨れ上がり…腕は腕の機能を一切捨て…肉塊の中から〝硬質化した粘液の槍〟が数本飛び出す。
――バツンッ!――
「クッ!」
辛うじて、ヨミノは身体を反らしてソレを躱す…しかし、無理な体勢から無理やり避けた為に、バランスが傾き、この局面において致命的な〝隙〟を晒す事に成る…。
「ッ――♪」
「ッ……!?」
声無く…しかし、〝ソレ〟は嘲笑を浮かべて空いた腕を振り上げる…その腕は膨張と変質を繰り返し、鋭い刃に変形すると、そのまま空を仰ぐヨミノの身体へと刃を振り下ろした。
――ゾワッ!――
「ッ――〝発芽しろ〟…〝血塗れの霊樹〟」
その一撃がヨミノの身体を真っ二つに切り捨てる…その寸前、その声と共に、彼女の身体からライツでも、ヨミノでもない魔力の反応が現れ…ヨミノの腹を突き破って…禍々しい血塗れの〝樹木〟が姿を見せる。
「ガハッ…ライツ……お前…!」
己の体内を掻き分け、抉り出しながら…自身の魔力を啜り急成長する〝霊樹〟に、ヨミノはライツを睨む…そんなヨミノの恨み節を涼し気な顔で受け流しながら…ライツは串刺しにされ、四肢を腹を頭部を貫かれた〝異形〟に視線を送る。
「――いやぁ、もしもの為にと取っておいた〝隠し玉〟…本当は懸賞金を独り占めする為に植え付けたが…結果オーライってね♪」
微動だにしないソレへ、視線を送りながらライツはそう言うと…地面に倒れる…腹に大きな穴を開けたヨミノを見下ろし…手を伸ばす。
「ッ…!?」
その手にヨミノは死を覚悟し、ライツへの怒り、裏切りへの屈辱…その他渦巻く負の感情を煮立たせて目を閉じる…しかし。
――ポゥッ――
そんな彼女を、優しい魔力が行き渡り…腹に空いた大穴が温かな熱と共に傷口を癒し始めると…ヨミノはライツを驚いた様に見上げる。
「――このままアンタを見殺しにして、懸賞金独り占めってのも悪か無いが……俺とアンタは相性が良い…諸々の損得勘定を考えた結果、山分けしてアンタと〝手を組む〟方向で結論が出た訳だが…さて、どうかな?」
そんなヨミノへ、ライツはその透かしたグラサン越しにそう戯けて言うと…ヨミノは少し呆気にとられ…ソレからフッと笑みを浮かべ…ライツに告げる。
「フッ…私に種を埋め込んだ事は許し難いが…良いだろう…お前と手を組んでやるぞ、ライツ」
「嬉しいね♪」
そして二人は手を伸ばし…その手を握る……。
「さて、そんじゃ〝懸賞金〟を回収しようか――」
そして、治療を終えて、メキメキと成長を続ける赤濡れた樹木の上…葉を付けない枝に貫かれた〝ソレ〟の姿を確認した…その時。
――コポッ、コポコポッ――
「――〝召喚〟――〝不可視の触腕〟」
掠れた、不気味な声と…爛々と光を失わない赤い視線がそう言い魔力を発する…その瞬間。
――ゴゴゴゴゴゴゴッ――
空間が歪み…彼等は行動に起こす間も無く…不可視の〝何か〟に押し潰された。
●○●○●○
――ピロンッ――
何処かから、そんな音が聞こえる…あぁいや、〝私〟の頭の中からか。
――グジュッ、グジュジュジュジュジュッ――
『レベルが上がりました!』
《〈無属性魔術〉の昇華を確認――〈不可視の触腕〉を獲得しました!》
「――フフッ、フフフフフッ!」
自身の身体を融解させる…本当に、〝ギリギリだった〟…。
〝HP残り10%〟の目の前に広がる〝潰れた肉塊〟を捕食し、飢えを満たしながら…漸く肉体に追いついた〝実感〟が私に甘い〝悦楽〟を運び…その身悶えする程に心地良い〝快感〟に笑みが自然と零れ出す。
「フフフッ、アハハハハッ!」
――アッハッハッハッハッハッハッ♪――
ともすればソレは〝狂笑〟と成り、この暗い月の無い夜に木霊する…ソレは少しの間続き…漸くこの身に余る〝愉悦〟を吐き出すと…私は、新たに手に入れた〝力〟へ意識を向ける。
――――――
【不可視の触腕】 レア度☆☆★★★
能力系統:任意型
消費魔力:250(基本値)
無属性魔術から派生し、またどの系統にも属さない〝固有の魔術〟…魔力で構築した不可視の触手で敵を押し潰し、薙ぎ祓い、絡め取り、防ぐ。
――――――
「――フフフッ、無属性魔術とは燃費が段違いに多いけれど…〝攻防両立〟できて、且つ〝細かい操作〟も可能…伸縮、拡縮、分裂…基本操作は〝異界の触魔〟と変わらないのも良い調整ね」
まさに求めていた〝魔術の発展型〟…言う事無しね♪…。
「あぁ、楽しかった!……それはそうと、レイナの方はちゃんと〝脱出〟出来たかしら?」
自身の身体の傷を埋め直しながら私はそう言い、喧騒のすっかり静まり返った〝山岳〟の先を見る…そして、遙か先に居るだろうレイナの動向に意識を咲いていると。
――ピカッ!――
不意に私の腕に刻まれた紋様が輝き、私を怪しい紫の魔力が包み渦に飲み込まれてゆく。
「ッ――あら、ちゃんと〝生きてる〟わね…良かった良かった♪」
「――満足したし、此処に用は無いわね♪」
その渦の中入りながら私はそう言い…目を閉じる――。
「――それじゃあ、暫くはサヨウナラ♪…また〝遊びましょうね♪〟」
その場を立ち去る間際に…此方を遠巻きに眺め、しかし挑むことはしない〝彼等〟へ、そう言い捨てながら。
そうして、賞金首と私達の〝追いかけっこ〟は〝私達〟の勝利で幕を下ろした…しかし。
『特殊クエスト発生』
勝利に酔う私を、遥か暗い〝暗闇〟の中から覗いていた存在が居ることに…私は、気付く由もなかった。
《〈〝無名の忌子と忘却の魔女〉を受注しました!》
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【マオ・ディザイア】
【異界の触魔〈人間:槍使い〉】LV33 /50
HP:23500/23500 (23500/23500)
MP:24300/24300
満腹:61%
筋力:B+(B−)
速力:B+(B−)
物耐:B−(C)
魔耐:C+
知力:C+
信仰:E+
器用:E+
幸運:D
【保有能力】
〈異界の触手〉LV2/10、〈捕食生命〉LV2/10、〈不可視の触手〉LV1/10、〈看破〉LV9/10、〈契約〉LV3/10
【保有称号】
〈野蛮な獣〉、〈貪食〉、〈邪道の獣〉、〈ラック・パールとの繋がり〉
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