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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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剥がれ落ちた心臓

本日の投稿、今日は2本目も投稿する予定。

――ベチャッ――


少女に手を伸ばした部下が死んだ…そう理解するのに、リーダーたるドッグガンは少しの時間を要した。


――バリッ、ムシャッ…ゴキュッ…――


咀嚼音が響き渡る沈黙の中…月光が全てを見下ろす夜の世界で、その場に居合わせた者たちの視線はただ一つの〝ソレ〟に向けられていた。


「…」


撃ち殺した筈の〝少女〟…〝では無い〟…その少女の身体…胸元から零れ落ちた〝黒い肉の泥〟…蠢き、口を、舌を、牙を生やし…今、己の部下を貪り喰らった…〝悍ましい怪物〟へと。


――ゴクンッ――


ソレは喰い殺した犬人の血肉を飲み込み…己の糧へと変えると…その顔を上げて匂いを嗅ぐような仕草で周囲に首を降る…そして。


――ギュムッ、ゴポッ、ジュルジュルジュルッ!――


その不定形の化物の身体に〝目玉〟が生え…ソレが彼等〝犬人間〟達を捉えると…。


「オナ…カ……スイタァ…!」


底冷えする様な、不気味な声色で…彼等へ大量の触手を差し向けた…。



○●○●○●


――バリンバリンバリンバリンッ――


展開する〝魔力障壁〟は、絶え間なく浴びせられる光条によって砕かれる…。


(展開した側から砕かれる…この姿を維持して守るのは難しいか)


――ドロォッ――


擬態を解き、自身の本来の姿に戻る…コレで人間の様な皮膚は失い、〝(弱点)〟は突かれ易くなったが、複雑な構造も無くなり、自己修復も素早くなる。


(とは言え…このまま再生に物を言わせて戦うのも、魔力残量が厳しい…)


特に…あのライツだったか…アレの魔力量は厄介極まる。


(〝無尽〟に思える魔力量…種族特性か、固有の能力か…恐らく、大地や周囲から魔力を吸収し…魔力回復量を異常に引き上げている)


そうやって生み出した膨大な魔力を、自己強化、魔術、敵への異常付与に使い…敵を狩る戦闘スタイル。


(サポート性能もさることながら、単体性能で見てもかなりのやり手…接近戦で削り殺すのが無難…だけど)


そんな彼を守り、接近戦で驚異を発揮する〝彼女〟…ヨミノ…コレも厄介だ。


(優れた接近戦技術、純粋な自己強化に火力を担保する〝破脚撃〟…コレの所為で再生のコストが高く付く)


既に半分以上魔力を消耗した…このままじゃ魔力量のゴリ押しで負ける…!


「フフフッ……〝窮地(ピンチ)〟ね…♪」


敗北の足音が如実に迫っているこの状況に、私は微かな焦りと…急速に高まる〝充足感〟で満たされる…このまま満足して、負けを認めても良いと…一瞬でもそう、思考し――。


「さて、〝どう勝とう〟…?」


そして、その思考を否定し…光条の隙間から覗く〝敵影〟を睨み…そう、思考を重ねる。


(敵の数を減らすのが先決…減らすなら…〝前衛〟から)


でも、そうするとライツがバフと回復でヨミノを強化する…だったら。


(ライツのバフが届く前に、ヨミノを即死させる…)


肝心のやり方は――。


「ッ〝魔力障壁〟――フフッ、〝物は試し〟…ね♪」


少し、〝賭けて〟みましょうか♪



●○●○●○


――キュィィィィンッ!――


凄まじい魔力の熱が、夜を閃光で埋め尽くす…その光の筋は一点へ集約され、その先に居る〝驚異〟を焼き尽くさんと迫る。


「…まだ死なないのか」


依然健在な〝気配〟に、ライツは苦々しく言葉を綴る…数分、この攻撃を維持している…相手が幾ら格上であろうと、この物量ではジリ貧だろう…卓越した戦術視野を持つライツはそう踏み、〝相手〟が行動を起こすと踏んでいた。


――パリンパリンパリンパリンッ――


しかし、幾ら待てども〝標的〟は微動だにせず…只管に迫る〝魔力の光条〟に、ただ魔力を消費し〝守り〟に徹する…ソレは〝悪手〟だと分かっているだろうに。


――グニャッ♪――


不意に浮かぶ…この戦闘が始まってから、攻防の隙間に見た…あの〝笑み〟を。


「……」


爛々と輝く赤い視線、抑えようとして、抑えきれなかった笑み…獲物を探す様な動き…その全ての行動から滲み出る…〝剥き出しの殺意〟…。


「……ヨミノ、警戒は解くなよ」


そんな〝戦狂い〟が、敢えて悪手に走る理由が理解出来ず…未知故に、ライツの警戒心は解かれることはない。


「言われずとも…!」


ライツの言葉にヨミノもまた、そう返し…光の集まる〝その先〟をジッと〝見据える〟…。




はたして、その時は訪れた。


――ズオォッ!――


何の変化もない停滞した〝戦況〟に、遂に〝変化〟が訪れる…。


――ズゥッ――


光の先から放たれた黒い魔力が、一層高まりその大きさに二人の視線が移ろったその瞬間。


――ブワッ!――


魔力の〝光条〟は、その濃密な魔力によって散り散りに砕かれ…その先から一人の〝美女〟が…姿を表す――。


――ドロッ――


先程までとは、異なる出で立ちで。


「……」


その姿は依然人間のソレに倣っていた…二つの脚で達立ち、下半身と上半身で繋がり、両腕を持ち頭を持ち…細部に至るまで、〝人間〟のソレを思わせるパーツが取り付けられていた。


ただ…その随所に…凡そ常理の人ならざる〝魔性〟の気が漏れ出していた。


――グニョッグニョッ――


身体の中に〝人でない部位〟が有る…粘性を帯びた泥が彼女の身体を包み…その泥からは絶え間ない触手が生まれては消えてを繰り返す…その様から感じ取れる〝印象〟は…ただ一つ。


〝不完全〟


ソレを心の奥底で感じながら、彼等は直ぐに戦闘の構えを取る…対してそんな彼等の心の内を見透かした様に…不完全な変形で現れた彼女は、クスリと笑みを浮かべ。


――グニャリッ――


その笑みを獰猛な獣のソレに変えて、二人…ライツ目掛けて突き進んだ。




○●○●○●


――バババババッ――


沈黙の夜を殺す、乾いた銃声が響き渡る…しかし、其処に居た者達は声を上げず地に伏していた。


「何だ…何なんだお前は…!?」

「オナカ…スイタ」


――バクンッ!――


唯一生き残ったリーダーも、直ぐにその仲間となり…周囲にはただ何かの咀嚼音だけが残るった。


「……オナカ…スイタ…〝モッタイナイ〟」


ソレは、一頻り生命を貪り喰らった後…其処に残る残骸を一瞥してそう言い、その〝肉の泥〟の身体を使い周囲の〝血肉〟を取り込んで行く。


「……」


そして、その場に残った〝肉腫の鳥〟をジッと見つめると…ソレに〝肉片〟を注入し…自身の体内で浮かぶ〝少女〟の中へと戻って行く…。


――ドサッ!――


辺りは静まり帰り…落下の衝撃で、少女は目覚める…。


「うっ…此処…は?」

「〝―――!〟」


そして、目の前の〝肉腫の鳥〟を見ると、混濁する意識を取り戻し…直ぐに目的を思い出す。


「そうだ、〝此処から脱出〟しないと…!」

「〝――?〟」


すると直ぐに、少女と肉腫の鳥はその場を飛び去り…山岳の先を目指す……その様子は、まるでついさっき其処で起きた出来事を〝知らない〟かの様に。

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― 新着の感想 ―
…アンデッド的なやつだから…『人として』死ぬと思わない方が… どこかの悪魔も、『首は弱点じゃなくて、心臓が弱点』というものだったから…ね?
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