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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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手負いの獲物

本日の投稿…2本目は、鋭意制作中で御座います。

――バサッ!――


「〝破脚撃〟!」


――ブンッ!――


全快した翼を大きく震わせて…ヨミノの脚撃が私の首を刈り取ろうとする。


――チリッ!――


しかし、その回し蹴りは狙い通りに首を蹴り抜く事は無く…寸前、髪の毛一つ程の距離で躱される。


「ッ惜しい!」

「クッ!」


――ガシッ!――


攻撃が外れたと分るやいなや、立て直そうとするヨミノが羽搏き、後方へ飛ぼうとする…そんな彼女の足首を掴み…彼女の行動を抑止し、私の間合いに引きずり込むと…彼女は苦々しげな顔で、抵抗する…だが。


――ギュムッ!――


魔力で強化し筋力を調整した私の膂力が相手では、流石に振り切れなかったらしい…その抵抗では振り解けず、彼女は私の攻撃を許す。


「そぉれッ!」


――ブンッ!――


彼女の抵抗を尻目に、私は掴んだ腕を振り上げ…地面に叩き付ける。


――バゴォォンッ!――


「ッ――カハッ…!?」


その一撃は、地面に小さなクレーターを作り…彼女に不可避の衝撃とダメージを与えた…つもりだった。


「ッ――〝硬い〟」


しかし、その攻撃によって返ってきた感覚は想定よりも遥かに軽く、硬く…その違和感に私が目を凝らすと、彼女の肉体を包み込む様に発せられる〝別の魔力〟に気付く。


「――〝堅固なる種殻(シード・マナアーマー)〟」

「ッ――〝強化〟…厄介ね」


その魔力の持ち主は、私達から距離を取りつつ状況に応じて彼女へ魔力を、癒しを、力を与え…その合間合間の隙を突いて、私へ大きな一撃を披露する。


――ピキピキピキッ――


「〝生命変換(ライフコンバート)〟――〝放出〟!」


木々が捻じれ曲がり渦を作る…その空洞の奥には白く淡い色の花が蕾から開花し…その花が開くと共に周囲の大地は色褪せ…その空洞に魔力と色彩が集う…。


「面白い♪」


――ドゥンッ!――


そして、その魔力が強烈な光と熱を伴い直線上の全てを焼払う〝光の筋〟と変化する。


「〝変形〟――〝黒曜蜥蜴の鱗腕〟」


――ジュッ――


ソレを、私が持つ最も強固な護りを持つ腕で迎え撃つ…その衝突は一瞬、ほんの刹那の〝拮抗〟を見せるが…しかし、直ぐに戦況は傾いた。


――ジュゴッ――


強烈な光条が、私の腕を飲み込む…黒曜の腕は、月光を反射する美しい鱗を、脆く弱いボロ炭に変え…私の腕は焼け落ちる。


「――今ッ!」

「ッ!」


そんな私の隙を、対面のライツは見逃さず…直ぐに〝相棒〟へ合図を送る。


――ダンッ!――


風切り音、跳躍の音…迫り来るは……〝魔力と殺意〟―。


――ドゴォッ!――


気配を頼りに、隻腕で防御を試みる…その試みは確かに、1度目の〝攻撃〟を防ぐ役割を果たした…しかし、私は知っている。


「ッ…クゥッ!」


彼女の、鋭い脚撃が齎す〝破壊〟は――。


――メキッ!――


1度で終わりでは無いことを。


「ッ――〝破脚撃〟!」


――ズズズズッ!――


溢れんばかりの魔力を、彼女は私の身体へ注ぎ込む…満たされた異物はジワリジワリと私の肉を蝕み…埋伏の毒となり、発芽する時を待つ。


――ドッ!――


そして、彼女の言葉と共に…魔力は〝爆発〟する。


――ドッバァァァンッ!――


皮膚を突き破り、肉を撒き散らし、骨を粉々に…私の半身は、容易く爆ぜて散る…。


――ドゴォッ!――


バランスを喪い、半身を喪い…立ち直る術を失った私はそのまま空中に投げ出され…遥か後方の巨木を巻き込んで倒れ伏す…。



「……カハッ!」


明滅する視界、異物感で詰まる喉…不愉快な胸騒ぎ、抑制されているとは言え、小さく振り積もって送られてくる苦痛…其れ等を1度に味わい…思考を空白で埋める…しかし、そんな私の体たらくなど胃にも返さず…彼等から放たれる膨大な魔力の雨が…私の視界を眩く埋め尽くした…。



●○●○●○


「ッ〝蒼炎〟――!」


獣達がその濁った瞳で彼女を見下ろす…そんな彼等に抵抗するべく、彼女は自身の杖に魔力を流し…蒼い炎を奔らせる…だが。


――パァンッ!――


「アグッ!?」


彼女の腕を、乾いた銃声と其処から飛翔する鉄の礫が貫き…地面を赤で濡らす…患部に走る熱と痛みは、ジワリジワリとレイナの身体に広がり…彼女は小さな嗚咽と共に身を捩る。


「魔術師との戦いは慣れている…魔術を構築するまでの間に、触媒を奪うか、詠唱を留めてしまえばいいだけの話だ」


そんな彼女に、一人の…やや凝った装飾を身に着けた大柄な犬人はそう言い…遥か遠方で鳴り響く騒音に眉を寄せる。


「ライツの奴には出し抜かれたが、仕方無い…アンタの懸賞金なら今までの出費もチャラでお釣りが来る」


――チャキッ――


「ッ…!?」

「悪いなお嬢さん、依頼人からは〝生死不問〟で通ってる、そしてアンタは魔術師だ…生憎魔術師用の拘束具は高くてな、持ち合わせが無い…それに、生かして連れてくとあの悪趣味虫野郎が……っと、悪いな…兎も角、俺がお嬢さんにしてやれる慈悲だ…頭に卵を植え付けられねぇ様に、此処で死ね」


そして、見上げるレイナの額に銃口を突き付け…そう言うと、小さく溜め息を吐き…そして引き金を引いた。


――パァンッ!――


乾いた銃声と共に飛び散る血潮…同時にレイナの身体から急速に力が抜けて行き…レイナの目から光が失せていく…彼等はソレをただ見つめ、その大半は何の感慨もなく、帰り支度を整え…一握りの人員は、哀れな少女への追悼を送り…自身の行いに一抹の罪悪感を覚える…。


「死体を運べ、討伐の証明に要る……撤収だ」


追悼を終えたリーダー…ドッグガンはそう言い、己の部下に淡々と指示を出し、戦線から離脱する事に意識を割く…。


そうして、人知れず…彼等は自らの〝仕事〟を終え…哀れな少女を運び去る……。



――ドクンッ!――


それで、〝終わり〟の…筈だった。


――ヒュンッ!――


「…は?」

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