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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第四章:喪失するは人の記憶、崩壊するは人の境界
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逃走と闘争

――バサッ!――


彼女の姿が、消える…。


「〝速さ〟は中々、素の機動力じゃ勝てそうにないわね」

「ハァッ!」


分析を脳に刻み付けながら、私は意識を耳に集中させ…迫る〝風切り音〟に腕を振る。


――ガッ!――


瞬間、背後に回り込んで来た彼女の拳をその手に受け止め…驚く様子の彼女に、私は言う。


「――でも、〝一撃の重さ〟は無い…機動力によるヒット&アウェイ、〝奇襲〟による敵の意表を突いた攻撃…成る程、成る程?」

「ッ――〝破脚撃〟!」


その言葉を遮る様に、彼女はその術法の名を紡ぐ…すると、脚部に魔力が集結し…ソレが私へ触れる前に…私はその場所を退く。


――ドガァァッ!――


穿つべき敵を失った脚撃は、大地へその憤懣を解き放ち…その残響を周囲へ散らす…全く恐るべき〝威力〟だ。


「――〝決定力の無さ〟を補う〝一手〟…〝攻撃と共に魔力を敵へ送り込み、内部から破裂させる〟…〝貫手〟…〝発勁〟の亜種…魔力による擬似再現って所かしら?」

「……数分で其処まで分かるのか…」


小脇にレイナを抱えながら、少しの攻防を重ねる私達は互いに互いを評価しあい…互いに〝やる気〟を滾らせる。


「――良いじゃない良いじゃない♪…〝試行錯誤と切磋琢磨〟の〝集大成〟…練り上げられた技術の持ち主と殺し合うのは大歓迎よ♡」

「――厄介、そして〝善き好敵手〟だな!」


バチバチと、互いの魔力を衝突させ…敵意と殺意を交差させながら…再び〝攻防〟が再開されようとした…まさにその時――。


「〝強制成長(フォース・グロウ)〟――〝樹根の捕縛者(トラッパー・ウッド)〟」

「「ッ!?」」


一瞬地面に奔った〝第三者の魔力〟と…紡がれるその声に私達は寸前でその場を飛び退く…すると、数秒と待たず〝ソレ〟は起きた。


――ドドドドドトドッ――


ウネウネ、グニャグニャと大地を突き破り…デタラメに掘り進みながら暴れ狂う〝樹木の根〟達…ソレが奇妙な光景を生み出しているのをレイナと私が呆然と見据えていると…その〝攻撃〟に巻き込まれそうになった彼女、ヨミノはその声の主に抗議の言葉を叫ぶ。


「人の獲物に横槍を入れるとは、感心しないな〝樹霊の詐欺師〟」


その言葉に対し、声の主はこの奇妙な…樹木が樹木を倒すと言う質の悪い冗談地味た光景の中から、悠然と姿を見せる。


「おーいおい、〝同業〟のくせに随分な酷評じゃあないか、ヨミノちゃん?…俺はこんなにも人畜無害で、今の今まで誠実正直に生きてきたっていうのになぁ?」


其処に居たのは、ヤケに目立つ白いスーツに、その顔にグラサンを掛けた怪しさの塊の様な男…そんな男は自身の脚から周囲に延びる〝木の根〟を操りながら右目と左目に、其々の姿を記憶する。


「良く言う…さっきの対空砲火もお前の差し金か?――可哀想に、お前に〝種〟を植え付けられた連中はもう助からんな」

「ハテナンノコトヤラ…ソレは兎も角、悪いが此処は譲ってくれないヨミノちゃん?――ほら、後でお礼はタップリと――」


二人の〝襲撃者〟が私を尻目に言い争う…その隙に、私は踵を返し…その場から離脱しようと試みる…だが。


――ズドッ!――


「おぉっと、逃がしゃしないよ〝お嬢さん(懸賞金)〟」


その瞬間、地面から鋭く細い木の根が突き出し…私の脚を貫く…とうやら、微量な魔力で少しずつ地下を進んでいたのだろう…だが。


――ブチッ――


〝狙いが私〟なら、なんら問題は無い。


「〝眷属作成〟――〝先に行け〟」

「ッ!?…マオさ――」

「「ッ!?」」


両腕を千切り…その腕に魔力を注ぎ〝核〟を作り出す…創り出された核は千切れた腕を取り込み、私の意思を通じて肉腫の鳥を創り出すと、レイナを掴んでこの場所から遠ざかって行く…コレで、〝レイナ〟は居なくなった。


「――仲間を逃がしたのか…仲間思いな奴だな」

「う〜ん…中々良い魔力してたし、〝養分〟にしたかったが…コイツは厳しいか?」


集い揃うのは、有象無象を突出した〝精鋭達〟…魔力もステータスも申し分無し。


――ドクンッ!――


脈打つ鼓動に伝播して…黒い魔力が私を包む…その魔力に充てられた肉体は、細胞一つ一つを促進し、千切れた腕を、貫かれた脚を修復してゆく。


「――全く、予定通りとは行かなかったけれど…もう一つの〝目論見〟は上手く行ったわね♪」


自身の身体を変化させてゆく、骨で覆われた四肢…空を舞う黒い翼…太く強靭な〝蜥蜴の尾〟…鋭く研がれた〝獣の牙〟…無数の獣の特性を継いで接いで、形作るのは、尤も〝闘争〟に特化した姿。


――ガキッ――


北方に雑魚しか散らさなかったのは〝選別の為〟だ…感の良い、聡い敵が欲しかった。


「懸賞金の制度は良いわね…何せ、〝金を詰めば積むほど〟…優秀な〝猟犬〟が標的を地の底まで追い掛ける」


懸賞金が引き上げられでもしたのか、彼等二人の目の色が変わる…より一層…私へ向ける〝殺意〟が濃くなる……それで言い。


「有象無象じゃ〝糧〟には成らない…でも、〝猟犬〟ならどうかしら?…聡い知恵を持つ者は?…優れた〝肉体〟を有する者は?……言うまでもなく、きっと素晴らしい〝(経験値)〟になってくれる筈よね?」


〝逃走〟が功を奏するならそれで良し、そうでなければ――。


「選りすぐりの〝御馳走(強者)〟を平らげるだけ……〝単純で良いわね〟」


複雑怪奇な思考は要らず…ただ殺す、ただ倒す……ただ〝生きる為に〟…。


「さぁ、美味しい美味しい〝御馳走〟達……私の〝飢え〟を満たしてね?」

「言わせておけば…!」

「やれるものなら、やってみせな…〝マオ・ディザイア(懸賞金)〟」

「―――ッ♪」


三者の魔力が高鳴り爆ぜる…渦巻く穏当消え去る不和の暴風雨が、緊張感を高める中…栄え有る〝先駆け〟…その一手を担ったのは――。


――ダンッ!――


「そう、なら遠慮無く♪」


2匹の猟犬に追われる…〝哀れな獲物()〟だった。

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