荒野の闘争は西部劇の様に
本日の投稿…今日は2本目も出す予定(10時〜11時辺り)!
――パラパラパラッ――
『〝岩山の大洞窟〟のボス、〝岩精霊〟を討伐しました!』
「――ん、流石に第一エリアのボス程度じゃレベルは上がらないか…」
砕け散った岩石から覗く、キラキラと輝く結晶、金属を回収しながら、私はそう言い…立ち上がる。
何故、私が初期エリアに居るのか…ソレはズバリ、〝エリア開放〟の為である。
「〝第三エリア〟に行くには手間だけど、エリアボスを討伐しないとなのよねぇ…面倒だわ」
(いっその事、同格ボスを倒したら無条件で次のエリアに行けるようにならないかしら?)
「――まぁ、それは今後に期待するとして…さて」
回復も終わり、目ぼしい物は全て回収した後、私はコレ以上の探索を止めて、翼を開く。
――バサッ!――
「――それじゃ、サクサクっと次のエリアボスを狩りましょうか」
そして、新たな〝蹂躙〟の為に…空を飛び回るのだった……。
「……」
そんな私を……見捕らえていた〝無数の双眸〟に、気付かずに…。
●○●○●○
――ペラ…ペラ…ペラ…――
洞穴の拠点…にしては、やけに整えられた一室で…少女は無数の書物をなぞりながら、頭の中では異なる思考を巡らせていた…。
(……〝魔術〟や、〝書物〟の情報は、覚えている…どんなに複雑な術式でも、使おうと思えば問題無く使える)
試しに、自身の手の平に〝蒼い炎〟を創り出して見ると…その手の平には脳内で思い描いた通りの〝蒼炎〟が揺らめいていた。
――フッ――
「――……〝私〟は……〝何者〟なの…?」
〝知識〟は有る……なのに、〝記憶〟は無い…生まれ出て、今日に至るまでの〝私〟が…私の中には存在しない…それがもどかしく、虚しくて…不快だった。
『――』
○●○●○●
――バサバサバサッ――
「クェェッ、クェェェェェッ!」
「良い加減面倒…ねッ!」
空を飛び回り、一心不乱に逃げ回る〝荒野のエリアボス〟へ、新調した〝兵士の鉄槍〟を投げ付ける。
――ズゴォンッ――すると、その槍は凄まじい勢いで空を舞う禿鷲の羽根を打ち抜き…禿鷲は、打ち抜かれた羽根をバタつかせながらユラユラと墜落して行く…〝ゲームオーバー〟だ。
――ザシュッ!――
『水枯の荒野のボス、〝死肉漁り〟が討伐されました!』
首を刈り取り、その生き血を啜る…コレで、予想外に手間取らされ、消費していた食料値の回復も済んだ…全く、とんだ手間を取らされた物だ。
「啄みと爪以外は大した攻撃を持たないくせに、一丁前に移動速度は速いなんて、害悪も良い所ね、全く……時間が掛かって仕方が無いわ」
愚痴を吐きながらも素材やら何やらを回収し…いざ、次のエリアボスを探しに向かおうとした…その時だった。
――ピリッ――
不意に、私を突き刺す様な鋭い視線が襲い…その視線に内在する〝敵意〟と〝殺意〟を受けた私は周囲の気配と、物音から直ぐに〝防御反応〟を取る…それから間髪入れず…〝ソレ〟は来た。
――ポンッ、ポンッ、ポンッ!――
そんな軽い物音と共に…不格好な…何か〝粘液質な皮膚〟に何かの種を縫い付けた様な塊が三つ、私の足元に転がる……その軌道、その射出音…そして、微かに香るその匂いに、〝ソレ〟の正体を連想した…その刹那――。
――カァッ!!!――
3つの〝塊〟は…眩い閃光を放ち、衝撃と轟音と爆炎が…私と熱烈な抱擁を交わした。
●○●○●○
「――〝目標直撃〟、やったぜ兄弟!」
「油断すんなよ、そのまま全部ぶち込めて!」
爆風と土煙が立ち込める〝爆心地〟を遠巻きに眺めながら…彼等〝魔獣の群れ〟は、その指示に皆手に握る〝手榴弾〟を投げ込んでいく…。
――ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴンッ――
投げ入れられた〝手榴弾〟は、盛大な音を響かせて爆発し続け…その爆音が絶えずに数分鳴り響き続けた後…彼等は漸く…その身に纏った〝土色の擬態服〟を取り外し…姿を表す。
「フランケンの旦那謹製〝爆油種榴弾〟を在庫分まで…そんなに大盤振る舞いして良いのか相棒?」
「構わん…標的を殺せばそんな物は任務中の必要経費として処理出来るんだ、構わず使い切れ」
其処に居たのは、二足歩行の痩せ細った犬の集団…その顔には皆同じ様なガスマスクをしており、大半が同じ装備を着込み、その腰に着けた〝手榴弾〟を標的目掛けて放り投げていた…。
そんな襲撃者による爆撃は、彼等の持つ手榴弾が尽きるまで続けられ…数分に至る爆撃は、辺りに夥しい破壊の痕跡を残し…その爆破音が鳴り止む頃には、火薬臭い匂いと肉の焼ける匂いが充満していた…。
「アルファチーム、死体の確認を…残りはそのまま警戒態勢を維持」
そして、犬人間達が洗練された軍人の様に標的の死亡確認を執り行わんとした…その時。
――ゴボッ――
そんな異音が…土煙の先から発せられ…ソレに彼等が反応するより早く…土煙を切り裂いて無数の触手が鋭い刃を生み出し、犬人間達目掛けて乱れ飛ぶ。
「ッ!」
その〝強襲〟に…寸前で対応出来た数人は、辛うじて装甲を刃に当てて斬撃を殺す事が出来る…しかし、哀れにも反応が遅れた者達は殆ど無抵抗のまま、迫り来る触手の乱斬りの餌食となり、肉片と血溜まりに成り果てる…。
――パチャッ…パチャッ…パチャッ…――
「――全く…こんな見晴らしの良い所で〝奇襲〟なんて、予想外も良い所ね…危うく死にかけたじゃない」
その肉片と、血の水溜りを踏み抜いて…姿を現したのは背から触手の刃を生やし…全身を黒い鱗と魔力の障壁で覆った〝黒髪の女〟…。
――パラパラパラッ――
その女は、黒煙の中から姿を表すと…その身体に生え並んだ黒い鱗をポロポロと落としながら…元の整った顔立ちに戻ると…その赤い瞳に興味と怒りと、愉悦を含ませて彼等を見やる。
「さて――何者なのかしら…貴方達」
その視線を、彼等は感じ取ると…その刹那、無数の犬人間達がその手に握られた〝鉄の筒〟を彼女へ向け……その〝引き金〟を引いた。




