噂は風に流離って
本日の投稿、2本目は未定!
――ザワザワ…ザワザワ…!――
快晴な空の日差しが、上等な壇上のステンドグラス越しに室内を照らす…しかし、そんな穏やかな空気は騒々しく張り詰めた場の空気を和ませるには能わず…その場に集う重鎮達は、極めて深刻そうな面持ちで、其々に懸念を挙げていく。
「ニュートの街が占領されたと言うのは本当かッ!?」
「それも魔物にだと!?」
「言語を介する魔物が、徒党を組んだと報告が「「何ッ!?」」」
「今直ぐ兵を派遣せよ!」
「冒険者を集めるべきだ!」
それだけ、彼等にとって〝その事実〟は驚くべき出来事だったのだろう…半ば収拾がつかないほどの言論の嵐が吹き荒れ、会場が熱を帯び始めたその時。
「―――〝騒がしいぞ、お前達〟」
ピシャリと…不動の冷静さと気圧されてしまいそうな貫禄を含んだ一声が、騒乱の議場を巡る…その声に、先程まで混乱していた重鎮達は少しの落ち着きを取り戻し、己が仕える主へ視線を向ける。
「……お前達が懸念する事、理解出来ん訳では無い…中立都市として各国の交易を支えて来たニュートの街が占領された…その相手が組織立って動く〝魔物〟と言うのだ…神代の〝魔王〟の再来が如き凶報であろう……しかし、焦りに駆られ、感情に任せて叫ぶだけでは解決には至るまい」
そんな彼等の視線に、為政者を束ねる〝君主〟である…威厳と威光を兼ね備えた老齢の男はそう言い彼等の中の困惑、恐怖を理解し、嗜める。
「――報告では、〝ニュートの教会と冒険者ギルド〟…其処に避難していた民間人が転移魔道具によって離脱したと報告が有ったな」
そして、宰相にそう問い掛けると問われた男は肯定と共に君主の問いに応える。
「ハッ、ニュートの冒険者ギルドを管理していた〝レリック〟が、現在此方へ向かって居ります…並びに、昨今大陸中で、姿を現して居る〝聖獣〟も、レリックに同伴し向かっている様です」
その言葉に君主は頷くと…それから臣下達に視線と、指示を飛ばす。
「うむ……〝事のあらましを知る者〟がやって来ると言うのなら、その者達から情報を得た後に兵を集うべきであろう……それまで、ニュートの街近隣へは不用意に近付かないよう勧告し、周辺地域の防衛強化…並行して、〝陥落したニュートの街〟の状況を把握するために〝諜報部隊〟を6部隊派遣せよ…ダリア、直ぐに他三国に呼び掛け、協定を結べ」
そして、一通り指示を出すと…解散の間際…皆へ告げる。
「皆心せよ、コレは単なる魔物駆除では無い…〝魔物と人の戦争〟である」
……と。
●○●○●○
――カチンッ…カチンッ…カチンッ――
「ッ!」
――『カチンッ!』――
其処は、人の手が届かない〝桃源郷〟…花々が思い思いの生を謳歌する…〝自然の守護者の住まう世界〟……そんな自然の中に在っては〝不自然〟な…〝歯車〟の喰音が、不意に響き渡る…すると。
――サァッ――
「――やぁ、やぁ、やぁ……久し振りだね〝■■■〟……■■年ぶりかな?」
空間が歪むように揺れ…その中からそっと降り立った〝ソレ〟が…目の前の〝巨鹿〟を見て、友人に語り掛ける様に微笑む。
『……』
不意に現れた気配に、一瞬巨鹿は敵意を見せる…しかし、その存在の姿を一目見ると…抱いていた敵意は鳴りを潜め…代わりに呆れと、非難と、歓迎の気配をソレに送る。
「ハッハッハッ…〝アレ〟とは相変わらず仲が悪いのかい?…まぁ、無理も無いか…それでも、理性的に協力してくれるのは、〝此方〟としては有り難いね……〝君の同期〟は……何と言うか、〝我が強い〟から…少し手間取るんだ」
花畑に木が芽生え、ソレは男の腰掛ける椅子となる…その心遣いに男は感謝を伝えながら、物珍しさに集まって来る〝小さな生命〟を慈しみ…その褪せた瞳で〝友〟を見る。
「――そう怒らないでおくれよ…〝プレイヤー〟が起こした行動の辻褄合わせは此方で処理してるし……それに、〝この状況〟へ持ち込んだのはは双方の合意の上じゃないか」
『〝―――〟』
「むぅ、其処を突かれると私も痛いね…■■達の〝対処〟は…まだもう少し掛かりそうだ…だが、いざとなれば〝私〟が、何とかしよう…〝彼〟にも幾らか協力してもらうさ」
一人と一匹は互いに言葉を交わし合い…時を過ごしてゆく…そんな団欒も程々にと、その男は話題を変えて巨鹿へ告げる。
「――さて、友と語らう事は楽しいが…実は、今日来たのはそれだけが理由じゃないんだ…ほら、〝ニュートの街周辺〟が〝悪性〟で偏っただろう?…それで、このままじゃ〝秩序〟の子等が芽吹く前に芽を摘まれる…だから、少しばかり〝手助け〟したくてね…具体的には、〝安全地帯〟の確立に、少々手を貸してほしい……他の〝同期〟達には、協力を取り付けてある…交渉には骨が折れたよ」
男はそう言うと、軽く肩を竦ませる…その様子から、男の苦労を推し量ったのだろう…ソレは一抹の憐れみを添えて、沈黙する。
『……〝――〟』
そして、少しの思考の後…そう告げると、男はホッと一息を着いて、ソレへ言う。
「助かるよ…また今度、御礼に何か用意しよう」
そして、名残惜しげに男に張り付く小さな子等を優しく退けると…男は、その体を粒子に変えて消えて行く…。
「それじゃあまた……今度は直ぐに会いに行くよ」
そして、そう言い残すとその場には男の居た痕跡と…粒子が光に反射して舞う綺麗な光景だけが残る…。
『……』
ソレを見届けると、巨鹿は再び…戯れに飛び交う〝小さな生命〟の遊び場に戻り…その目を、眠るように閉じたのだった…。
●○●○●
――バサッ…バサッ…バサッ…――
空から大地を見下ろせば、岩ばかり転がる山道をかなりの範囲見通せる…。
――ゴロ…ゴロ…ゴロ…――
ゆっくりと動く〝岩の塊〟…土色の蜥蜴、群れを成して岩場を駆け抜ける〝赤い鼠〟…そのどれもが、その地に根ざした進化を遂げ…独自の生態系を作り上げていた…。
「――〝硬化〟」
私は、そんな土地模様を物見しつつ…御目当ての〝獲物〟を見つけると空から〝急降下〟を始める…。
――『……』――
其処には、山の中腹に少しだけある、開けた〝広場〟…その中心には大きな〝岩の塊〟が鎮座し…その領域に〝生き物〟が足を踏み入れるのを待ち伏せていた…。
――ゴキゴキゴキッ!――
そんな〝ソレ〟の姿が徐々に近付く中…私は右腕を振り上げた姿勢で…その手を硬く厚い〝骨の槌〟に変え――そして。
「せーえーのッ!」
その掛け声と共に、勢い良く〝殴り付けた〟…その結果は……言わずもがなでしょう?…。




