忘却の魔術師
と、言う訳で始まって参りました続章、今回はどんな物語が展開されるのか…楽しみですね♪……。
作者の趣味的には…そろそろ絶望成分を摂取したくなってきましたが…さて?…。
――グチュ、グチュグチュグチュッ――
暗闇の中に…私は居た。
(胸が…苦しい…!)
何故、自分が其処にいるのか分からなかった…けれど、ただ漠然と自身の胸に鋭い痛みが走り…胸を抑えたくなる…けれど。
――グッ、ググッ!――
(身体が…動か…ない?)
まるで金縛りに遭ったかの様に、私の身体はピクリとも動かない。
――グチュッ、グチュグチュッグチュッ――
痛みと、不快感と、恐怖が暗闇の中動けない私の意識を徐々に蝕んでいく…ジワリジワリと、その苦痛が痛みを増し、痛みは死への恐怖を呼び覚ます。
怖い、怖い、怖い…頭の中をソレだけが埋め尽くし上手く思考が働かない…痛みがピークに達した時…半ば半狂乱になっていたのだろう…不意に痛みが嘘のように消え去り、暗闇が晴れるように、眩い光が目に入った時。
――バッ!――
「あ、起きt――」
私は、跳ね起きる様に身体を起こし…その拍子に、目の前に居た…その人の顔に勢い良く頭突きをしてしまった。
――ゴンッ――
「ヘブッ!?」
「ッ――うぅぁッ…頭が…!」
衝突と同時に頭に鈍い痛みが走る…その痛みを堪えつつ、私は先程まで地獄の様な苦しさを感じていた胸に手を当てる…しかし、其処には何事も無く呼吸する私の胸があり、痛みの原因となるような物は何一つ見当たらない…。
「――あ、あれ?…何も…ない?」
混乱する私が、訳も分からずただその場で唯一存在する私以外の〝人間〟へ視線を向けると…その人は、頭のコブを押さえながら起き上がり…その赤い視線を私へ向ける。
「――イタタッ、コレがゲームじゃ無かったら鼻が折れてたわね……と、それは兎も角ちゃんと起きたわね?」
そして、私の意識が戻った事を確認すると…痛がる素振りを直ぐに止め、私の身体を触診し始める。
「あの――」
「ふんふん…怪我は問題なく治ってるわね、身体は…ちゃんと動く、脈有り、体温正常…オーケー、〝修復〟は問題なしね」
彼女は私の身体を弄った後、次は私の顔に手を伸ばし…覗き込む様に私の瞳に映り込む。
「その――」
「視覚は……うん、ちゃんと働いてるわね…音も聞こえているわね…オーケー」
そして、目を、耳を、鼻を、口を…まるで学者の様に隅々まで調べ尽くすと、綺麗な顔をした女の人は私から手を離し…私へ向けて言葉を紡ぐ。
「暫く此処に居てちょうだいね、生き物の蘇生は初めてだから、何か不備が有ると不味いし…拠点の構造は以前使っていた物と代わり無いから、好きに使ってちょうだい」
そして、伝えたい事を伝え終わると…その人は何処かに行こうとする…その様子に私は慌ててその人を呼び止めようと名前を呼ぼうとする……しかし。
「あの……ッ!?」
其処で、気付く……私の目の前に居るその人の〝名前〟を…〝知らない〟事に。
「ん?……どうかした?――」
あまりにも、不自然だった…その人が〝信頼のおける人物〟だと言うことは、微かに覚えている…けれど、この人に関する情報…名前や、何者なのかと言う情報は、私の脳からすっぽりと抜け落ち…それどころか――。
「〝レイナ〟」
私が〝何者〟であるのかすらも……私の中から、溶けて消えていたのだから…。
●○●○●○
奇妙な雰囲気のレイナに、私は呼び止めた理由を求める…しかし、レイナは私を呼び止めたものの、その後何かを考える様な素振りを見せ…その目に動揺と困惑を見せると…私へ告げる。
「貴女…は……〝誰〟ですか?」
「……へ?」
その言葉に…今度は私が困惑する。
「――〝看破〟」
そして、困惑を感じながらに慌ててレイナのステータスを確認すると、其処には今のレイナの状態が映る……ただ。
――――――
【レイナ・ハーレー】
【人間】
【上位魔術師】LV40/40(MAX)
HP:8000/8000
MP:12500/12500(12000/12000)
満腹:89%
筋力:E−
速力:E
物耐:F
魔耐:C+
知力:B−(C+)
信仰:F+
器用:D
幸運:E−
【能力】
〈魔力掌握〉LV3/10、〈四属性魔術(無/火/風/土)〉LV5/10、〈精神強化〉LV9/10、〈簡易制作:木工〉LV8/10、〈看破〉LV7/10
【称号】
〈魔女〉、〈才有る魔術師〉、〈殺人鬼〉
――――――
其処には、レイナの身に起きた〝記憶の欠落〟に起因しそうな何かは存在せず…ただ、謎だけが大きくなって返ってきた。
「……」
微妙な沈黙の中、私は目の前の少女を前に思考を巡らせる…少し前、レイナと会ったときは何も無かった…それから此処に来てレイナを起こすまでの帰還に何かされた、ないしはした…となればこの状況で考えられる原因は――。
「〝蘇生〟による、記憶の欠落……かしら?」
可能性は高い…何せ、レイナに施した蘇生は、損傷箇所を〝眷属〟で埋めると言う物、正規の魔術による肉体の修復でもなければ、試行回数の少ない〝確立されていない手法〟なのだから…むしろ、そう簡単に全てが丸く収まるとは思ってはいなかった……いなかったとは言え――。
「――うぅん…困ったわね…予想外の問題が私達の方針に割り込んで来た…」
「……あの…すみません」
「いや、こればかりは〝事故〟みたいな物よ貴女は悪く無いわ…そうねぇ、ソレじゃあ先ずは記憶の照合と…〝貴女の記憶を取り戻す〟事を最優先にしましょうか…一先ずは、そうね」
私は、困惑を飲み込んで行動指針を定め…レイナを見て告げる。
「レイナ…貴女〝魔術の使い方〟は覚えてるかしら?」
「〝魔術〟……はい、軽い物は、少しだけ…」
「結構…なら、〝魔力の扱い方〟は把握してる訳ね…ソレじゃあ、一先ず〝この拠点〟で待機しておいて…中に有る教材を使って最低限魔術を覚えてちょうだい…それと、何か不味い事が有ったら直ぐに〝私を喚ぶ様に〟…呼び方は、大丈夫ね?」
「……はい」
「オーケー、ソレじゃあ私は今から外に出て今後の予定を立ててくる…戻ってから改めて貴女の情報を教えるわ…良い?」
その言葉にレイナは頷くと…私は外へ向かい…入口に〝眷属〟を2、3匹生み出し…警鐘の役割を与えると…外に出る。
「――さて、どうしたものかしらね?」
その足取りは…決して軽い物では無かった。
1…2…ポカンッ、レイナは記憶を失くしてしまった!




