穢れと悪意の失楽園
どうも皆様こんにちは、泥詑羅没地に御座います。
本日の投稿をば、そしてコレが今章の最終話…やりたい事を詰め込んだ結果、具沢山どころか完全飽和状態だけど、ままえやろ。
――ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…――
鼓動の音…生命の〝エンジン〟が鳴り響く音…生者にのみ、許された〝時の浪費〟…ソレが、暗闇の中、私の耳に届いていた…。
「――御託はいいわ…さっさと〝進化〟を始めましょうか」
其処は暗闇…祝福されるべきでない者達の〝孤独の箱庭〟…その中心に唯一立ち聳える私は、暗闇に居るのだろう〝ソレ〟にそう告げる。
――ブンッ――
その声に反応して、開かれるのは私の〝ステータス〟と、もう一つ――。
――――――
【マオ・ディザイア】
【原初の魔〈人間:槍使い〉】LV40/40(MAX)
HP:10200/10200 (10000/10000)
MP:12000/12000
満腹:121%
筋力:C+(C−)
速力:C+(C−)
物耐:C−(D)
魔耐:D+
知力:D+
信仰:F
器用:D
幸運:F+
【能力】
〈狩人の軽業〉LV6/10、〈健啖家〉LV8/10、〈生命の炉心〉LV6/10、〈変形〉LV7/10、〈生物変形〉LV7/10、〈無属性魔術〉LV8/10、〈看破〉LV9/10、〈契約〉LV3/10
【称号】
〈野蛮な獣〉、〈貪食〉、〈邪道の獣〉、〈ラック・パールとの繋がり〉
――――――
――――――
【進化先一覧】
【昇華】
・異界の触魔
――――――
次の器として、記された…〝魔物の名前〟と、その詳細のウィンドウ。
――――――
・【異界の触魔】
異界にルーツを持つスライムの変種、特筆するべき能力は何も持たないが、優れた再生力と繁殖力であらゆる時代にその痕跡を残している。
――――――
「――悩む余地は無いわね」
《【異界の触魔】が選択されました!――【昇華】を開始します!》
《【昇華】に伴い、幾つかの【能力】を統合可能です(〈変形〉、〈生物変形〉)、(〈健啖家〉、〈生命の炉心〉)――【統合】致しますか?》
「〝許可〟」
システムのメッセージにそう返し…私が全ての実行を許可すると、虚空に響く声は沈黙し…私を黒い〝穢れ〟が包み込む。
――ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ!――
聞き慣れた心臓の鼓動…近付く脈動の音と、肉体の感覚が曖昧になってゆく私の姿を第三者の視点で眺める…そして、その〝形〟が定まると…私はその視点を一人称に引き戻され…脈打つ鼓動と、黒い泥の海から浮上する――その刹那。
――ジィッ――
ほんの一瞬、記憶に残るかも曖昧な程の、時間の隙間…幾つもの視線が、私を捉えていた様な感覚に襲われる――そして、暗闇が私の意識をも飲み込んだ時。
《【昇華】完了――マオ・ディザイアの種族が【原始の魔】から【異界の触魔】へと変化しました!》
《【能力統合】完了――〈変化〉、〈生物変形〉が統合――〈異界の触手〉を獲得、〈健啖家〉、〈生命の炉心〉が統合――〈捕食生命〉を獲得しました!》
――パチッ――
私は、既に人の気配も聖獣の気配も失せた…〝ニュートの街の残骸〟に…舞い戻る……周囲に、食い荒らされた〝ベルゼの血肉〟と――。
――――――
【マオ・ディザイア】
【異界の触魔〈人間:槍使い〉】LV30/50
HP:23200/23200 (23000/23000)
MP:24000/24000
満腹:40%
筋力:B+(B−)
速力:B+(B−)
物耐:B−(C)
魔耐:C+
知力:C+
信仰:E+
器用:E+
幸運:D
【保有能力】
〈異界の触手〉LV2/10、〈捕食生命〉LV2/10、〈無属性魔術〉LV8/10、〈看板〉LV9/10、〈契約〉LV3/10
【保有称号】
野蛮な獣〉、〈貪食〉、〈邪道の獣〉、〈ラック・パールとの繋がり〉
――――――
私と言う、凄まじい力を内包した怪物の魔力だけが有った…。
「――って、感傷に浸るのは後…さっさとレイナを連れて離脱しないと!」
復活してきたベルゼが報復に来ないとも限らないし――。
――ゴポッ…バサッ!――
「―帰ったら早速、色々と確認しなくちゃね♪」
何かと、気になる事も出来た事だし…そう、心の中で呟くと、私は遥か向こうに聳え立つ〝霊樹〟の元へ向かう――。
《イベント達成おめでとう御座います!》
《イベント報酬により、魔獣側プレイヤーへ報酬:魔獣側プレイヤー専用エリア〈混成の失楽園〉を獲得及び、役職別称号を授与致します!》
道中私達に向けて贈られる運営からの祝福に耳を傾けながら…。
●○●○●○
《――新たな称号を獲得、【キムラヌートの支配者】を獲得しました!》
「――煩いッ!」
激戦の末に、望むものを手に入れたと言うのに…その男、〝貪食のベルゼ〟はその心中に蠢く憤りに呑まれていた。
「クソッ、クソッ、クソッ!…あの女…!」
何に荒れ狂っているかと思えば、その憤りの正体は〝女〟への憎悪ときた…いやまぁ、あれだけ痛快な裏切りをされたら、当人としては堪ったものではないか?
「舐めた真似をしてくれる…!」
とは言え、コイツはソレを帳消しにして有り余る
利益を得た上…向こうの〝思惑〟を探ろうとしなかった落ち度を考えれば、決して非難される謂れはないのだが…。
「直ぐに報いを受けさせてやる…!」
とは言え、コレがそんな殊勝な心掛けをする様な人間では無いのは知っているので、敢えてソレを口には出すまい……しかし。
――カッ…カッ…カッ…カッ…――
ソレはソレとして……〝此方の仕事〟は果たさなくては♪
「ッ!――何者だ…ッ!?」
私の発する〝足音〟に…男は、下水道の先を睨み付ける…そして、私の姿を視認すると…まるで化物を見る様な目で、私を見据え…身体をビクリと震えさせる。
「ッ……お前…は…!」
心外だな…君と同じ顔を持ち、腕を持ち、脚を持ち、臓腑を持つ〝人間〟の姿そのものだろうに…その様ではまるで私が〝怪物〟の様じゃないか。
「……何故…此処に…!?」
ふむ?……また可笑しな事を言う、〝取引の内容〟を忘れない様にと再三言っていた筈だが、さては忘れてしまったのかな?
「ッ!――…い、いや待て…!」
あぁ、思い出してくれたか…重畳重畳…それじゃあ〝代償〟は支払ってもらおうか…と、言っても、私の〝蒐集品〟を回収するだけだが…。
「ッ…止めろ!」
五月蝿いな…〝お前〟は。
――ズガンッ!――
「ガ…ァッ…!?」
うん…良いね……〝拾い物〟だが、流石竜の素材を使っただけはある、威力は御墨付きだ。
――ザッ…ザッ…ザッ……グチュッ――
胴体の八割をザックリと開かれた、ソレの腹を弄り回す…苦悶の声を上げるソレの、まるで被害者の様な顔に、思わず呆れた笑いが出てきてしまうな。
〝蒐集品を貸し付ける代わりに、此方の条件を飲む〟事…〝贄の献上〟と〝不敗〟…その条件で契約を締結したのは君の方だろう。
その契約を違えたなら、与えた蒐集品は返してもらう…道理に則った行動だろうに。
――ズルゥッ!――
腸から、真っ黒な虫の標本が収められたガラスの容器を取り出し…回収すると…その瞬間、部屋の周囲にいた〝黒妖虫〟が塵となって消える…当然だ。
所詮其れ等は魔力で出来た〝紛い物の生命〟なのだから…。
「ぁ…グッ…ォォッ…!」
とは言え、腐っても魔人か…力の大元を失くしてもそれなりの力は有しているらしい…ちゃんと鍛えている様で感心だ。
――カッ…カッ…カッ…――
兎も角、コレで私の仕事は終わりだ…後は君の自由にすると言い…這いつくばるソレにそう告げると…私は下水道から消え……〝我が家〟に帰ってくる……その道中で。
『バサッ!』
穢れと瘴気の渦巻く街の上を羽撃く〝彼女〟の姿を横目に見ながら。…。
○●○●○●
――バサッ!――
「レイナ〜…迎えに来たわよ〜――って」
道中、妙な視線を感じつつも何事も無く霊樹の元に辿り浮く…そして、その根元の道を進み中へ入ると…私は、〝レイナ〟の姿を確認し、そんな声が漏れる。
「あっちゃ〜……〝油断〟したわね、レイナ?」
其処には、瘴気の泥の中に浮かぶ白い梟の骸と…その側で倒れ込む少女の姿。
――カバッ――
倒れ込んだレイナを起こし、様子を確認する…胸元に一発…貫通力の高い魔術による一撃が入っている…死に際にドクターが置き土産を残したのだろう…そして、レイナはその対応を誤った訳だ。
「――いやまぁ、ドクターが相手ならさもありなん…そうなる可能性は考えていたけど、想定の中でも嫌な方に当たったわね…」
幸いなのは損傷が少なく、死亡時刻が直近である事か…とは言え、理想的とは言い難い。
「――まぁ良いわ…さっさと〝直して〟帰りましょうか」
そんなレイナの死にたてほやほや死体を前に、私はそう言うと…早速〝処置〟を施して…その場を立ち去った…。
シレッと死んでるレイナさん、可哀想に…まぁ、死に際はメインキャラ最大の華、ソレをこんな雑に吐き捨てる訳が無いんですけどね。
メインキャラを殺すならもっと面白く殺したいし(ボソッ)




