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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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茶番劇と裏切り

2本目でぇす…やったぜ。


一応今話で、今章のメインディッシュは締めで御座います…後1話、デザート的な話をチョチョイと詰めてしまおうかと考え中。


何より次の章ですよ次の章!――次の章はどんな展開を刻もうか、今から楽しみですねぇ…。

――バサッ――


羽音と共に、鴉が街角を曲がる…ソレを追って己も曲がれば、鴉は既に遥か先へと進んでいた。


「どんな速さだよ…!」


最早他の事に意識を挟む間も無かった…その後を追い掛けるだけで手一杯で…我武者羅に走り抜けた。


それから…恐らく数分程走り抜けた頃……不意に、鴉の静止した姿が己の目に止まった…。


「ッ――追いかけっこは終わりかよ?」

「…」


その問いに、鴉は答えない…代わりに、俺を一瞥すると…フッと…影に溶けて消え…一本道を残して、俺を独り…孤独の中に放り込む。


「……何が狙いだ?」


疑りながらも歩を進める…不思議とその先は白い光で覆われ、奥の光景を見ることは敵わない…コレもこの場所によるものなのか?…と、そんな事を脳の片隅に置きながら…此処まで来たら仕方無いと、境界を越えるように…白い光の先へ進む……その瞬間。


「あぁ、良かった…!」


不意にそんな声がしたかと思うと…其処には無数の子供達と…一人のカソックを着た青年が…廃墟とかした教会の残骸から姿を表した。


「ッ――生存者、いや…!」


その姿に一瞬、生存者かという希望を抱く…しかし、この意味の分からない場所と、先程己を此処へ導いた鴉の存在に…万が一の〝可能性〟を考え…自然と手に力が籠る…しかし。


――ドサッ!――


矢面に立って此方を見ていた青年は、俺の姿を認めるとグッタリと地面に倒れ込み…教会を覆っていた薄い魔力の膜が割れる。


「ッ――おい!」

「「「「お兄ちゃん!」」」」


その姿に、俺は慌てて駆け付けると…中から数人の子供達が姿を現し…青年に駆け寄り不安げに声を掛ける。


「どいてろチビ共ッ――おい、大丈夫か…!?」


その姿に警戒と武装を解き、倒れた青年を抱え起こすと…青年は疲労一杯の顔で俺を見つめ、ポツリポツリと言葉を呟く…。


「私…は……〝教会〟の…神官です……貴方は」

「レリック、ニュートの街のギルドマスターだッ」

「冒険者ギルド…!……それは…何と僥倖な…!」


その言葉に、青年は一瞬疲れを消し飛ばした様な力強い視線を送ると…グラリと、疲労した身体に鞭を打って、俺の手を掴む。


「お願いです…後ろの子供達を…どうか、冒険者ギルドへ…!」

「当然だ…だが、何があった?…此処は…?」


そして、力強く懇願する青年に俺が疑問を紡ぐ…しかし、その問いに答えたのは青年では無く、背後の子供達だった。


「綺麗なお兄さんが助けてくれたの!」

「〝これはげーむだ〟って言って、僕達とお兄ちゃんをこの教会に運んだんだ!」

「さっきまでね、怖い魔物達が襲ってきたんだ!」


少年少女達の、精一杯の説明に…頭を働かせる…すると、青年は弱々しくも、その説明に付け加える様に、俺へ告げる。


「この教会には、〝人間を礎にした結界術〟の魔道具が置かれていました…あの男…いえ、〝何か〟は私に言ったんです――『直に〝救済者〟はやって来る…それまでに君は、この廃教会で子供達を守らなくてはならない…〝自己犠牲は美徳〟なのだろう?…神官君?』…そう言うと…奴は姿を消して…それからずっと、あの地獄の中、結界を維持していました…!」

「……成る程」


その言葉に、完全な理解とは言えないまでも大方の事情は把握し…俺は、青年を背負い…武器を捨てて、四人の子供達に手を伸ばす。


「――取り敢えず、事情は分かった…お前達を冒険者ギルドに運び、転移魔道具でこのまま退避する…詳しい話はその後だ…お前達、俺の腕に掴まれ!」

「「「「ッう、うん!」」」」


色々と、本当に色々と気になる事は有るが…ソレを一先ず胸の奥に押し込み…俺は〝生存者の救助〟と言う目的を優先する…。


――ダッ!――


「離すなよ!」


そして、彼等を両手と背に乗せたまま…教会の外に歩を進めると…まるで何かが外れるような音と共に、世界に〝悪意と生命〟が注がれ、俺達は〝地獄の世界〟に舞い戻る…。


そんな事を脇目にも振らず、俺は只管に駆け抜ける――。


――ガチャンッ――


『――♪』


その背後で、捨て去った己の愛剣に手を伸ばす…〝人影〟がいた事に、気付くこと無く…。



●○●○●○



「――どうやら、〝向こう〟も決着が着いたらしいですね?」


霊樹の中心…大きく脈打ち、その姿を見せ付ける、〝霊樹の心臓〟が、凄まじい音を立てて…瘴気を氾濫させる…。


――ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ!――


『全プレイヤーに通告――【聖獣の王】が討伐されました!』


ビチャビチャと、泥の様に固まった瘴気の塊が霊樹の中を満たし…地面に広がって行く中…そんなアナウンスが脳に響く。


「レオナルドが、殺られたか…」

「――〝霊樹〟が完全に育ったのなら…私の役目はもう終わりですね…マオさんも、上手くやっていると良いのですが…」


一歩、一歩…此方へ近づいて来る少女をその目に捉えながら…私は問う。


「君と……〝マオ・ディザイア〟の目的は…何だ?」

「……その問いに答える意味が?」


その問いに少女は、冷たい赤い視線で私を見下ろすが…その後、少し考える様に顎に手を当て…まぁ良いか、頷き、私へ答える。


「――まぁ、構いませんか…私達のもくてきは…とどのつまり〝力〟ですよ…力を得る為の舞台、力を得る為の〝策〟…全ては私達の〝利益〟の為に…この戦場を、聖獣を、魔獣を利用しただけに過ぎません」


――コンッ!――


「〝貪食のベルゼ〟――彼の持つ莫大な〝生命(経験値)〟を…食らい尽くすための…〝茶番〟ですよ…全ては」




○●○●○●


――グシャッ!――


ソレは正に…一瞬の出来事だった…肉々しい何かが潰れ、硬い骨の砕ける音を響かせながら…レオナルドの姿は消え…代わりに、その全身に赤い返り血を浴びた美女が…ユラリと立ち上がり…熱に頬を染め…口端を歪め…笑みを浮かべていた。


「――いやぁ、危ない危ない…もうすぐで〝育てた果実〟を奪われる所だったわ…セーフ♪」

「…マオ・ディザイア」


その美女は、自身の手に掴んだ金獅子へそう視線を送ると…その手を異形の舌先へ変えて…血と肉の一片に至るまで、貪り食ってゆく…それと、ほぼ同時に――。


――ドクンッ!――


霊樹の方から、そんな脈動が響き渡り…街に〝黒い泥〟が蔓延し始める…。


「んー……祭りもいよいよ終幕ね♪…結果は魔獣の大勝利…街は魔獣の手に堕ちて、此処を起点に魔獣達は勢力図を拡大させてゆく…彼方の獣として、異種が徒党を組み、組織として、〝人類に仇なす者〟として…その長は…〝アナタ〟…綺麗に纏めるとこんな所かしら?…予定調和な結末ね?」


しかし、そんな事はこの場に居る2人には、成る程どうでも良い事で有った…ベルゼの視線が…其処にいる〝同胞〟を捉える…その――。


――ジィッ――


獲物を捕捉した、飢えた獣の視線を。


「えぇ、えぇ…何て素敵な結末でしょう、役目を終えた演目は、幕を下ろし次の舞台の備えをする…役者は掃かれ、舞台は閉じるは世の道理――だけれども」


――ジジッ!――


その視線の意図を認識した…その瞬間、ベルゼは残り僅かな力を用いて〝黒妖虫〟を彼女、マオ・ディザイアへ差し向ける…しかし。


「――〝講演料〟は、ちゃんと貰わないと、ね♪」


――ヒュヒュヒュヒュンッ!――

――バラッ!――


この一瞬の内に振るわれた触手の刃が、ものの見事にベルゼの眷属を塵芥に変えて…マオ・ディザイアは爛々と輝く赤い視線でベルゼを捉える。


「ッ…裏切ったな…マオ・ディザイア…!」

「〝裏切った〟…?――そもそも、貴方達と正しい意味で友達になった覚えは無いわね?…それに、貴方の計画にも協力したんだから、〝正当な請求〟であって、〝裏切り・背信〟とはまるで別じゃない?」


ベルゼの言葉にツラツラと彼女はそう返すと…艶めかしく舌を出し…ベルゼを見下ろす。


「――私の目的は、始めから何も変わらない…〝アナタ〟…〝アナタ達〟の〝生命(経験値)〟…ソレを手にする為、より良い状態で、最高のタイミングで〝喰らう〟為に…膳立てした、アナタを〝育てた〟――」


――カチンッ――


そして、徐々に迫るディザイアの手には、いつの間にやら怪しい黒いコンパスが握られ、彼女はソレを閉じるとベルゼの下半身に当たる蜘蛛の頭部を踏み潰しながらベルゼの前に立つ。


「〝コレ(コンパス)〟も…その一環よ」

「ッ!…フッ!」


悠々と迫る彼女に、ベルゼが抵抗の拳を振るう…しかし、その拳はその瞬間振るわれた触手の刃によって吹き飛ばされ…両腕が切り落とされるとベルゼは苦悶を顔に浮かべる…そんなベルゼの目の前に…マオ・ディザイアの顔が迫り…彼女はそんなベルゼを見て、依然変わらない…心からの笑みで、ベルゼに告げる。


「長話は程々にしましょうか♪…どうかしら?…普段〝食らう側〟で居る自分が…〝食われる側〟に回る感覚は?」


その問いにベルゼは答えられない…言葉に詰まり、焦りで必死の抵抗をするも、力を削がれ、身動きも出来ない状態では、如何に強力な魔物とは言え対応は出来ず…ベルゼの肩を掴み…マオ・ディザイアは言う。


「――って、言うまでも無いか……それじゃあ、ベルゼ…〝勝利〟を祝して――」


〝イタダキマス〟…と。



そうして、今生のベルゼが…最後に見た景色は…豊満な肉体を持つ美女の見目麗しい姿と…その奥底に眠る、〝悍ましい化物〟の姿…そして――。


――ハァァッ…!――


今正に、己の頭蓋を噛み砕かんと迫る…不気味で不定形な触手と粘液の怪物の…その歯型であった…。




――バクンッ――

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