主無き大舞台
本日の投稿、今章のクライマックスが見えてきた…何とか上手くまとめられるか作者…。
2本目は、未定(鋭意制作中)…!
――カランカランッ!――
鈴の音が鳴り響くと同時に、空目掛けて白靄の〝大群〟が飛び迫る。
「――ッまた…!」
「うぅむ…厄介な状況だね…!」
その白靄の霧は、周囲を取り囲む様に二人を包み込むと…その瞬間化けの皮を剥がし、〝亡者の蒼肌〟を晒す。
「――〝古き五元の緑〟…〝罪翼斬る裁刃〟」
しかし、ソレが姿を表した瞬間…其れ等を払い除けるように膨大な魔力と共に緑色の魔力の息吹が爆ぜ、周囲の亡霊を風の刃が裁断する。
「――ふぅむ…こう大量の亡者を召喚されると此方としても対応に困る…かと言って、召喚者を狙おうにも――」
――キュィィンッ――
ドクターはそう言い、自身の魔力で構築された槍を…〝霊樹〟の根元に佇む少女へと飛ばす…だが。
――バリンッ!――
「ハッハァ!――させねぇよ!」
殺意を常に垂れ流す〝鬼〟の男が彼女の側を離れず、その拳に莫大な魔力を込めて放たれた魔術を打ち壊す。
「――〝彼〟が行く手を阻んで来る…か…」
(このまま、悪戯に時間を消費し続けるのは悪手だね)
ドクターの視線が、この街で唯一未だ侵食の届いていない〝時計塔〟へ注がれる…その分針は既に半分を周り…彼等の攻防がそれだけ進展も後退もない…ジワリジワリと浪費しているだけという〝無意味〟を知らしめる。
「こうなれば、〝賭け〟になるが…〝特攻〟して無理やり盤面を打ち砕くしか無いかな?」
天秤に掛けるのは〝時間〟の代価、対に乗せられるのは〝生命〟の価値…ドクターは周囲の状況を忙しなく取り込みながら、思考を加速させ、純化させ…〝煮詰めて行く〟…。
その思考の最中…不意に、アークが疑問の声を上げる。
「…可笑しい」
「ん?……どうしたアーク君?…何が可笑しいんだい?」
その言葉にドクターがアークへそう問い掛けると…アークは周囲をキョロキョロと見渡しながらドクターへ言う。
「〝マオ・ディザイア〟が居ない…何処にも見当たらない…奇襲の為に隠れているのかとも思ったけど…まだ周囲に生き残っている眷属以外で、彼女の〝魔力〟が欠片も感知できない」
その言葉に、ドクターも周囲を探ってみる…すると、確かに…魔力の気配は小さな反応が無数に密集し…強力な反応が数個点在するだけで…その場所には…〝マオ・ディザイア〟と言う…【魔獣の指揮官】の魔力反応が1つ、欠けていた…。
――パチンッ!――
その疑問にドクターの脳が加速する…〝何故マオ・ディザイア〟が居ないのか、その理由に尤も符合する物の推論を作り上げ…現在の状況に当てはめていく。
「魔獣側の、このゲームのクリア条件は〝2つ〟…1つは〝街の侵略〟を完成させる事…つまり、この〝霊樹〟によって…街全域を取り込む事が1つの勝利条件」
ならば現状、潤沢に揃えられた〝物量〟と敵の〝指揮官〟を抑える〝駒〟が十二分に配置されたこの盤面に、余分な戦力を投下する必要性は…無い。
ならば、彼女の狙いは――そこまで、思考に至ったドクターは…その瞬間…轟音を奏で、街を更地に変えん程の〝王の戦い〟へと視線を送る……そして。
――ガツッ…ガツッ…カツッ…――
それは、幸運にも〝彼女〟の存在を意識していたが為に視界の端に捉えた〝一瞬の姿〟…轟音と魔力の大瀑布が溢れ出す戦場〟へと、足を伸ばす〝黒髪の女〟が見えた。
「ッ――見つけた…狙いは〝金獅子〟だッ…!」
ソレを見た瞬間、ドクターはそう叫ぶ…ソレにアークがその意図を悟ったその瞬間。
――ブワァァァンッ!――
不意に、〝霊樹の戦場〟でも…〝王達の戦場〟でもない…二つの戦場の中心に…今までの物とはまるで毛色の違う〝魔力〟が…ユラユラと噴き出した…。
●○●○●○
「〝戦場は停滞した〟」
鳴り止まない騒乱は、〝無為の殺戮〟へと変わり果て…ただ悪戯に〝生命は消え、獣達は黄泉帰る〟
「〝秩序と邪悪〟、〝聖獣と魔獣〟、〝護るモノと壊すモノ〟…〝悪意と慈悲〟、〝滅びと救済〟は無尽に繰り返され、その〝境界〟は融解し…全ては〝混沌へ同衾〟する」
無為、全ては無為であり…最早〝この舞台〟は〝正常〟を逸れ…顛末は〝狂気〟を孕んでいる。
「〝永劫に終わらぬ踊りは踊りでは無い〟」
「〝永劫に終わらぬ歌は雑音に成り下がる〟」
故にこそ〝永劫〟は〝停滞〟であり、その先に待つは〝腐敗と消失〟である。
――ズズッ――
……ならば。
「――〝新たな混沌〟を、産み落とそう」
私は自身の魔力を巡らせ…懐から取り出したる〝欲望の羅針盤〟を掲げ…虚空へ〝語らう〟…。
「〝羅針よ示せ〟――〝我が欲望の先〟を」
「〝穢れよ集え〟――〝己が寄る辺〟へと」
クルクル、クルクル…ガタガタ、ガタガタと…羅針盤は狂った様に捻れて回り…その身から悍ましい〝魔力の膿〟を溢れ落とす……そして、ソレが地面へと辿り着いた時――。
――〝ガチャンッ!〟――
〝大舞台の配役〟は…決定された。
○●○●○●
――ゾロッ…ゾロッ…ゾロッ――
その瞬間…この街全体に異変が起きた…。
「ッ…な、んだ…こりゃ…?」
大地に染み渡るソレが、死肉に屯し…蠢くソレが…不意に、その動きを止め…〝空へ延びてゆく〟…いや、〝空〟へ…では無い。
――ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ――
いつの間にか、空に〝居た〟…1人の〝人影〟…翼を生やし、蟲の殻を鎧とし…異形の腕を尤も黒髪の妖婦が…この街に満ち、満ちていた〝瘴気〟を束ね…〝形作る〟…。
――ギュムッ、ギュムッ…ギュムッ!――
脈動し、胎動する〝黒い汚泥の塊〟は…ドス黒い〝槍〟と成り…ソレを彼女は手にし…〝視線〟を送る。
その…先には――。
「ッ…マオ・ディザイア?」
観客の居ない壇上で戯れていた〝魔獣の王〟が居た。
「ベルゼ?…貴方に〝プレゼント〟を上げる…私からの贈り物…〝主役舞台〟と…〝悪の王〟に相応しい〝力〟を…」
見上げるベルゼへ、マオ・ディザイアはそう薄らに笑いながら…ベルゼへ熱く視線を送り…その槍を構える。
「――〝受け取って〟…ね?」
そして、その槍は…ベルゼが何かを紡ぐより早く…〝投げられた〟…。




