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怪物達の狂想曲〜彼方の獣達は電脳の夢を見るか〜  作者: 泥陀羅没地
第三章:魔人と魔女と人街の悪夢
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堕ちた霊樹と触禍の花

――ゴシャァッ!――


「フフッ♪」

「グハッ!?」


空から迫る〝翼の獣〟を叩き落とす。


――グシャッ!――


「フフフッ♪」

「ガッ!?――クソッ!」


大地を駆る、〝毛皮の獣〟を殴り殺す。


特別な武器も、何も必要無い…ただこの膂力と殺意を以て…〝蹂躙〟する。


――ガッ!――


「グゥァッ…ガッ…ァァッ!」

「ハァ♪」

「――ッ、舐めんな…この、化物がッ!」


そんな私へ、彼らは〝殺意〟を以て応える…迸る殺意を、敵意を…その身その得物に宿し…私の命を、心臓を突き貫こうと試みる。


――ガブッ!――


「――ッ!」

「グルルァッ…!(どうだ…!)」


あぁ……〝堪らない〟…。


――グチュッ…!――


「グルゥッ!?」


喉笛を噛み千切った、聖獣の顔が見る間に驚きに変わる…その赤茶けた瞳には、噛み千切られた喉笛が異音を奏で、肉と血の泡を吹かせながら変形し…其処から生えた触手と牙が…獣の頭部を食い千切った。


――ドサッ!――


「ハァッ!……さて、次は――ってあら」


崩れ落ちる死骸を放り捨て、私は周囲の獣達を一瞥し…そう言葉を吐く…しかし、その言葉に返ってくる他の生き物の声は無く…見れば其処には、何十何百を超える獣の骸がその頭部の尽くを潰された状態で転がっていた。


「――もう品切れ?…残念ね、もう少し楽しみたかったのに…」



遠巻きに私を見詰める〝獣〟達に、私は軽く一瞥する…するとその獣達はジリジリと後退り、私の視線から外れようと動き出す…その様はまるで、恐怖に駆られ逃げ惑う〝被食者〟の様に…〝つまらない〟物だった。


「……ハァ、結局【指揮官】が居なきゃ【兵士】は役に立たないか」


――ドクンッ!――


「――でも、まぁ…〝良い暇潰し〟にはなった…さて」


そんな戯れも程々に…一度、街の侵食を留めていた〝大樹〟が…大地に広がる血を啜り…そう強く鼓動を鳴らす…その鼓動は心臓の様に、大樹全体へ瘴気を巡らせ、大樹の侵食を活性化させる。


――メキメキメキッ――


「オーライ…このまま街全体をすっぽり包めば〝ゲームセット〟…でも、流石にそう簡単な幕引きじゃ、〝オーディエンス〟は満足しないわよね?」


それと同時により一層色濃くなる瘴気の燻りが街に伸びて行く…それと同時に鳴り響くのは〝祝鐘(ファンファーレ)〟…。


《通達します、イベント終了まで残り1時間となりました!》

《【終盤戦(ラストゲーム)】への移行により、【兵士】プレイヤーにステータス強化、【指揮官】プレイヤーのリスポーンタイム撤廃及びステータス強化、【王様】プレイヤーのステータス強化が実行されます》

《それでは、自陣営の勝利を目指し御健闘下さい》


そして、〝冒険者ギルド〟と〝教会〟から…凄まじい〝黒白の気配〟が吹き荒れ…ソレに比肩するだけの〝衝突〟が…街の上空に響く。


「――♪…やっぱり、そう簡単に終わらせては来ないか♪」


祝鐘とは名ばかりの〝血濡れた贈り物(サプライズ)〟に、私はそう言い…言葉とは裏腹に此方へ急行する〝聖獣〟の気配に笑みを零す。


〝影の様に黒い狼〟、〝聖浄を振りまく白い鴉〟、〝虹色に羽根を染める梟〟に、〝周囲の有象無象を散らす蜥蜴と白猫〟…。


徒党を組みんで、足並みを揃えて…狙い定めるのは〝この場所〟…〝大樹〟の根元。


「――〝つくづく〟…ね♪」


その行動に思わず笑い…私は声に魔力を乗せて…〝ソレに〟に紡ぐ。


「さて……私もそろそろ〝動こう〟かしら…〝後の事〟は任せたわよ――〝私の子供達〟」


その声は血腥い死肉達に向かって紡がれ…私はソレに目もくれず…気配を瘴気の中に混じらせる……。


――……――


その後、沈黙が支配する場に延びる、悍ましい瘴気を孕んだ霊樹の根が…死肉を貪り養分にしようとした…その時。


――グチュッ、ズルルルッ!――

――グチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッグチュッ――


〝1つの切っ掛け〟を餌に…伝播する様に〝華〟は開いた。



●○●○●○


「……あぁ…不味いな」

「ギルドマスター!?…駄目ですよ、まだ動いちゃッ!」


同刻、周囲の魔獣聖獣達の気配が活性化し…どんどんと混沌が撹拌されていく戦場で…ギルドマスター〝レリック〟は…医務室のベットから起き上がりながら、職員の制止も利かず動き出す。


「おい、外に出てる連中全員中に入れろ…〝此処〟はもう駄目だ」

「ッいえ…まだ街に生存者が「馬鹿かッ!」」


そしてそう言うレリックの言葉に、職員がそう紡ぐと…レリックは大きくその職員を一喝する。


「〝場の空気〟が変わりやがった…あの馬鹿デケェ樹が街の霊脈を掌握し始めてやがんだ…このまま此処に居ても無駄死ににしかならねぇ」

「ッ!…ですがッ」


その言葉に尚も食い付く職員に、レリックはその顔を一瞥し…一瞬の閉口の後、職員に低く告げる。


「お前の言いたいこたぁ良く分かる…テメェの家族がまだ残ってるんだ、諦めたくはねぇだろう…だが、事此処に至っちまった以上、コレ以上はもう待てねぇ…良いか、テメェ以外にも家族を失くした奴、見つからねぇ奴は居るッ…〝1人〟を優遇して、〝全員〟を危険に晒す訳にゃ行かねぇんだ…!」

「ッ………すみません…」


その言葉に職員は顔を俯かせ、小さくそう言い…ソレにレリックは、複雑な面持ちで背を向けると…その場に居る職員全てに告げる。


「〝大型転移魔導陣〟を起動しろ…〝撤退〟だ…!」

「「「「「…了解ッ」」」」」


そして、レリックは…その場を後にする……。


「……」


沈黙の中に〝葛藤〟を携えて。



○●○●○●


――バサッ…バサッ…!――


「さて、改めて見ても凄まじい〝異様〟だね…!」

「凄まじい瘴気反応だ」

「正しく〝世界樹〟の様な迫力だ…尤も、その中身は邪悪の巣窟なのだがね」


白鴉(アーク)と、虹梟(ドクター)はそう言いながら、自身らの狙う〝霊樹〟と、その周囲に意識を配る。


「〝アレ〟は一種の〝炉〟に近い性質を持ち合わせているらしい…周囲の魔力を吸い上げてソレを〝瘴気〟に変換してばら撒く…〝ゴーレム〟系の魔物と仕組みは変わらない…規模はずっとずっと上だがね」

「なら、まだ未完成な内に叩き潰す…!」

「あぁ、ソレがベストだ……とは言え」


そんな二人が霊樹に近付いてゆくと…ドクターは不意に自身の感知に引っ掛かった〝ソレ〟を見て…アークに告げる。


「〝相手(彼女)〟も…ソレを安々とは許してくれない様だけどね」


その瞬間…二人は〝ソレ〟をその目に捉え…戦闘形態に移行する…其処には、空から迫る無数の影――。


――バサッ、バサッ、バサッ――


何十匹もの、〝聖獣の骸〟が空から大地から…清らかな力に引き寄せられて来ていた。

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