悪意は根を張り、街は堕落に堕ちていく
本日の投稿。
あと10話以内には今章を纏めたい所ですなぁ…頑張ろう。
今日の2本目は未定です。
――メキメキメキッ!――
領主の館を崩落させて現れたソレは、メキメキと音を立てて〝拡大〟する、その威容は圧巻の一言につき、黒い樹皮とその溝を巡る、滴る血の様な赤がソレを〝生命の象徴〟では無く…禍々しい〝邪悪の象徴〟として人々に知らしめていた。
「ほぉ…〝アレ〟がお前達の〝礎〟か…中々に雄々しく立派な木じゃないか…林業を嗜むのも悪くは無いな!」
そう言い、震源の〝元凶〟たる、邪悪の大樹に戦意を滾らせるレオナルドに、無数の〝蟲〟達が立ちはだかる。
「――ならん、貴様は我が抑える手筈故な…この作戦が実を結ぶまで、貴様には此処で我と踊ってもらう」
そしてそう言いレオナルドの行く手を阻みながら自身の手に魔力の塊を持ったベルゼの鋭い黒い視線がレオナルドを捉え離さない。
「そうか…ならば、押し通るまで!」
そんなベルゼの行動にレオナルドはそう強気に吠えると、常人離れした機動力で強行突破を試み…幾度目かの〝衝突〟が轟いた。
●○●○●○
――ゴゴゴゴゴッ!――
「コレで〝核形成の第一段階〟は終了ね」
地面から伸び広がる〝黒樹の根〟を足場に…大樹の中心で脈動する〝黒い巨大な魔力の結晶〟を一目見ながら、進行する〝瘴気の拡散〟に言葉を零す。
「後は〝大樹〟が完全に成長し切るまで〝核〟と〝核〟の支配者である【王様】を護り抜けば〝魔獣陣営〟は勝ち……つまり、〝此処からが私達の腕の見せ所〟って訳ね♪」
「――私は、此処で〝核〟を守ります…マオさんは――」
「えぇ、【王様】と【他の指揮官】を使って状況を掻き回すわ♪」
そんな大樹の側でレイナと私はそう言葉を交わし…其々に役割を決める。
「〝いざとなれば呼んでちょうだいね?…それじゃあ、此処をお願いね?」
「はい、任せて下さい」
そして、私はレイナの元を離れ…伸びる木の幹に飛び乗り…街全体の騒乱に耳を傾け、景色を目で追う。
「フンフンフンッ…侵略状況は6割半完了って所かしら?…残す所は〝冒険者ギルド〟と〝教会〟…何方ももう時間の問題ね」
そして、今この街に〝人間〟にとって唯一寄る辺となる〝砦〟の状況を確認し、警戒対象から外す。
「盤面は上々、聖獣に残された勝ち筋は二つ…1つは【魔獣の王】を刈り取る事と、〝この大樹の核〟を、破壊する事――」
――ゴポッ!――
「グハッ!?」
そして、魔力を纏わせた槍を…大樹の麓に投げ飛ばすと…ソレは大樹の陰から此方を覗き見ていた〝斥候〟の身体を突き貫く。
――ザッ!――
「駄目じゃない、盤面が固まってるなかで独断専行は…それじゃ各個撃破されてゲームセットで盛り上がらないじゃない…のっ!」
そして、槍に突き刺さり、身動きの取れない彼へそう言いながら…その槍を引き抜き…軽く振り抜く、
――ブチィッ!――
「ガッ!?――畜生…め…!」
その瞬間、カメレオンの彼はその身体の半分以上を軽く抉られ…その体力を大きく減退させる…部位を破壊され、重篤な出血も負っているのにそれでも一命を取り留めているのは、流石〝指揮官〟と言った所だろうか。
「――さて、此処で貴方を殺してしまいたい所だけれども…生憎そうは行かないみたいね」
――ズガンッ!――
私が彼を見下ろしながらそう言うと…その瞬間雷鳴の如く鋭い轟音を奏でて一匹の〝大猫〟が頭上から現れ…私の腕に爪を振るう。
「――インビジブル、大丈夫?」
「クッフフフッ…なんのこれしき、拙者の再生力が有ればものの数分で塞がるでござるよ…!」
その乱入者も、並み居る聖獣とは比べ物にもならない気配を有し…私は〝この二匹〟を、【聖獣の指揮官】であると認識する。
「グッドグッドッ…コレは重畳…【残りの指揮官】が割れたのは喜ばしい進展ね♪…それはそれとして…」
そして、蛮勇な斥候の救助に来た白猫に改めて問いを投げ掛ける。
「どう戦うのかしら?…見た所カメレオンの彼は手負いで、奇襲者と割れれば警戒すればいい…君はシンプルな〝近接・強化〟型…その〝強化〟も…ベルゼの装甲が相手では有効打になり難い…」
私は、彼へ…彼女へそう言い、期待する様に視線を送る時間は此方の味方、依然不利な盤面で、彼女は何を見せてくれるのか――。
「アナタは…〝どうする〟つもりかしら?」
私がそう言うと、彼女は暫しの沈黙を浮かべる…そして、それから私へ呆れとも憐れみとも取れる視線を向け、言葉を紡ぐ。
「――全く…どいつもこいつも、アークもドクターも、ヴォルフも…挙げ句アナタも〝脳筋〟なんだから」
「ほう?」
その言葉に私が興味を向けると、彼女は私の瞳をそのアメジストの様に輝く瞳に閉じこめながら続ける。
「何も【指揮官】が【指揮官】を打ち取る必要は無いでしょう?」
その言葉が紡がれた…その瞬間…私は漸く気付く…。
「コレが正しい【指揮官】のあり方よ♪」
私の周囲、四方八方から感じ折れる〝聖獣の小さな気配〟…それが、徒党を組み地面を空を埋め尽くし…私は思わず感嘆の声を上げる。
「【兵士】の包囲…コレは――」
「〝包囲殲滅〟陣形…一応の退路は潰しておいた、そして――」
それだけに留まらず、猫の彼女はそう言葉を口にし自らの【権限】を行使する。
「〝駄目押し〟…ね♪」
――ゴオッ!――
そして、溢れ出す〝濃密な気配〟の濁流…雑兵紛いの有象無象が、その一手で決して塵と呼べない〝精鋭〟と化し…その刃は一切の迷いなく私へ向けられる…正しく、それは〝質で劣る者達〟の戦い方…。
「――良い〝指揮官〟ね」
私達の様な、上っ面な〝紛い物〟ではない…本当の〝兵法術〟の手腕を…私はこの双眸に捉えた…。
――ビキッ!――
「〝この子達〟なら…退屈凌ぎに丁度いいわね」
……それは〝極上の御馳走〟の様に、私の心に熱い〝高揚〟を与えてくれる。
「それじゃあ、私は貴方達に見せて上げるわ♪…ただの【兵士】や〝戦略〟だけでは埋められない…〝個〟の暴虐を♪」
その高揚に、私は彼等へそう宣言し…目の前に広がる〝御馳走〟へと手を伸ばし…戦火に身を投じたのだった。




