表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/34

帰宅しても休まらない⑤

「とにかく、今日はもう寝ろ。あと夜中にドア叩くなよ」

「はい」

「テレビの音も小さくしろ」

「はい」

「テッテレーも禁止」

サラは少しだけ黙った。

「……努力します」

「禁止だって言ってんだろ」

ハレは自分の部屋に戻った。

鍵を閉める。

チェーンもかける。

一応、ドアの前にしばらく立つ。

右にサラ。

左にリオン。

そして自分は真ん中。


「……俺のアパート、いつから異世界警備拠点になったんだよ」

ハレは壁に耳を近づけた。

いつもなら、隣の生活音くらいはかすかに聞こえる。

だが、何も聞こえない。

妙に静かだった。

反対側の壁も確認する。

やはり、何も聞こえない。


「……待て。壁薄かったよな、ここ」

ハレはしばらく壁を見つめた。

「防音まで強化されてんのかよ……」

地球側の協力者。

手配が細かすぎる。

その夜。

ハレはようやく一人になった部屋で、深く息を吐いた。

右にはサラ。

左にはリオン。

自分は二〇二号室。

完全に挟まれている。

「……寝よ」


ハレは床に敷かれた布団に倒れ込んだ。

その瞬間、身体が沈んだ。

柔らかい。

妙に柔らかい。

いつもの薄いせんべい布団ではない。

ふかふかだった。

腹立つくらい、ふかふかだった。

ハレはしばらく天井を見つめた。


そして、枕に顔を埋める。

「布団も良くなってんなぁ、ちくしょー!」

声は、厚手のカーテンと妙に強化された防音に吸われた。

隣からの反応はない。

外にも漏れない。

ただ、ハレの叫びだけが、やけに快適になった八畳の部屋に虚しく響いた。

「……防音、効きすぎだろ」


翌朝。

ハレはノックの音で目を覚ました。

コンコン。

「ハレ、起きていますか?」

サラの声。

反対側から、別のノック。

コンコン。

「ハレ殿、起床時刻です」

リオンの声。

ハレは布団の中で目を開けた。

「……包囲網、朝から機能してんな」


しばらくして、三人はアパートを出た。

目的地は、ハレ行きつけのアウトドアショップ。

キャンプ道具の補充。

ロープの買い足し。

熊よけスプレーの再購入。

それから、スリングショット用の小物や携帯食。

本来は一人で行くはずだった。

だが当然のように、サラとリオンがついてきた。


「いや、何でついてくるんだよ」

「昨日、買い物に行くと聞きました」

サラは真面目に答えた。

「地球の道具を知る良い機会です」

リオンも頷く。

「護衛として同行します」

「買い物に護衛いるか?」

「昨日の時点で、ハレ殿は警護対象です」

「俺、いつからそんな偉いものになったんだよ」


サラは少し楽しそうに街を見回していた。

車。

信号。

コンビニ。

自転車。

横断歩道。

この前、初めてハレの部屋へ来た日曜よりは驚きが減っていた。

それでも、サラの目は忙しい。

リオンはリオンで、すれ違う人々の持ち物を観察していた。


「地球人は武器を携帯していないのですね」

「普通はしない」

「では、襲撃時の初動に不安があります」

「街中で襲撃前提で生きるな」

そんなやり取りをしながら、三人は小さなアウトドアショップに着いた。


大通りから一本入った場所にある、古い店。

大きなチェーン店ではない。

だが、安くて良いものが多い店として、アウトドア好きの間ではそれなりに知られている。

店先にはザック、トレッキングポール、ロープ、ランタン、クッカー、防寒具などが所狭しと並んでいる。

看板には、少し色あせた文字でこう書かれていた。


アウトドアショップ源。


ハレにとっては、大学時代から何度も通った店だった。

カラン、とドアベルが鳴る。

店の奥から、低い声がした。

「おう、晴良」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ