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第67食 黙ってるタイプ、噴きつけるタイプ、漏れちゃってるタイプ

 

「うわ、重そう」

「手伝っては、くれないのね……」

「うん。応援してる」


 コンクリートブロックに砂、人工芝。


「こういうのもあるんだ。なんか面白いかも」

「見てるだけでワクワクする……」

「あはははは! 男の子じゃん!」

「なんで笑ったの!? 男の子ですよ!?」


 ジョイント式のスチールパイプ、目の細かい金網、金属波板。


「細かっ。ミツル、どれがどれか、わかるの?」

「サイズとかも全部、先輩が書いてくれてるからね……」


 ビス、結束バンド、アンカー。


「そういえば、うちの網戸、そろそろ変えなきゃ」

「うん……まぁそれは、今度やるとして」

「そうだ! 蚊取りマットの替えもなかったんだった!」

「それは、すぐに買おう」


 ドア用の蝶番に留め具、ダイヤル錠、防虫ネット、その他もろもろ。


 コゴロー先輩に渡されたメモにある商品と、自分たちの生活に必要なもの。


 それらすべてをカートに収めたミツルは、ふと思う。


「……いや、結局これ、手で持って帰れねぇ量になっちまったな!!」

「話は聞かせてもらったわっ!!」


 お車持ち、見参。


 その名も、鵜飼(うかい)卯花(うかな)。


 二人の会話を傍受しながら、彼女はずっと駐車場で待機していた。


「ウカウカ先輩! 来てくれたんですか!」


 この女の変態性を知らないノイチは、弾けるような笑顔を見せて、その登場を喜んだ。


「ありがたいんですけど……先輩の車に乗ります? これ全部」


 違う意味で彼女の変態的な一面を知っているミツルは、動じることなく話を進めた。


「大丈夫よ。トラックを借りてきたから。お会計、済ませちゃいましょう。カートは私が押すから、二人は並んで! 密着、密着ぅ!!」

「はーい!!」


 ウカウカ先輩の号令を合図に、ノイチがピタリと体を寄せてくる。


 ありがたく感じつつも、煩悩が体を硬直させる。


 ミツルは複雑な気持ちで、レジへと向かった。





 涼しかった店内をひとたび抜ければ、そこは呼吸をするのも嫌になる真夏の夕暮れが広がっていた。


 ウカウカ先輩の案内に従って駐車場を進み、小型トラックの荷台にまでたどり着く。


 強烈な熱の照り返しで、周囲には見事な陽炎が揺らめいていた。


「私はエアコンを効かせておくから、真菜君はジャンジャン荷物を積んでちょうだい。秋風さんはサポートをお願い」

「はい!」


 さすがは年上、テキパキと指示を飛ばしてくれる。


 ミツルはまず、大量のコンクリートブロックから取り掛かった。


「よっしゃ」

「はいっ」


 プシュー。


 背中がひんやりする。


「よいしょっ」

「はいっ」


 プシュー。


 首筋がひんやりする。


「さっきから『プシュー』って、なにしてんの、それ!?」

「サポート!」


 自信満々の笑顔を浮かべながら、ノイチが噴射していたのは制汗スプレーだった。


「一個一個そんなことしてたら、何缶必要になっちゃうの!? いらない、それ。あぶないから、やめて。ヒヤッとして『えっ?』ってなるから」

「あはははは! でも、すごい! なんでミツルって、私が言ってほしい言葉を、そのまま返してくれるの?」

「知らないよ、そんな……そうなの?」

「そうだよ! でも、まだワキだけやってないから、やらせて!」

「やめなさい、って言ってるでしょうよ……あと一回だけだよ? よいしょ!」


 プシュー。


「ほーいっ!!」


 この距離でも盗聴を怠らないウカウカ先輩は、車内で歓喜のひと鳴きをした。


「じゃあ、抹茶ラテ、買いにいこっか!」

「早いって! まだ途中だから! でも、忘れてた! それは、ごめん! 終わったら、また声かけて! お礼代わりに、先輩にも買いたいから!」

「オッケー! はい、結束バンド!」

「ちっちゃい、ちっちゃい! 大きいのから、積まないと!」

「あはははは! 楽しいね!」

「そうね……」


 たとえどんな環境であっても、ノイチが楽しそうなら自分も楽しい。


 そんな想いを胸に秘めつつ、ミツルは顔から流れ落ちそうになった汗をシャツで拭った。


 プシュー。

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