第57食 能率! 効率! バスタイム!
♪テレレン↘、テレレン↗、テレレン↗、テン↑
♪テレレン↘、テレレン↘、テン↑、テレレレレン
《お風呂が沸きました》
――入浴開始。
「はぁ……」
知らなかった。
真昼間に入る家の風呂っていうのは、こんなにも気持ちよかったのか。
日の光がびしっと窓から入ってきて、なんだか爽やかだし、贅沢な気分。
まあ、風呂は自分で洗ったんだけどね。
でも、近所にコインランドリーがあってよかった。
シーツと枕カバー、全員分放り込んできちゃった。
60分もかかるんだね。
知らなかった。
効率よく動いて、待ち時間でお風呂でも入れば、なんて。
そう言ってくれた、秋風ノイチに感謝。
たぶん遠回しに『臭い』って、言われただけなんだけどね。
丸一日寝てたわけだし、そう思われてもしょうがない。
「ミツルぅ?」
「はぁい?」
「なんでもなーい!」
「なんだそれ!?」
「あはははは!」
笑ってやがる。
とは言え、シーツもそうだけど、普段はノイチさんがそうやって、洗濯やなんかを全部やってくれてるわけだから、感謝しないといけない。
「ミツル、生きてるぅ!?」
「うるっせぇ!! 生きてるよ!!」
「あはははは!」
ちょっとしつこいところもあるけど、そういうところも含めて――
「あ!! ミツル、ヤバい!?」
「どうした!?」
「ここに石鹸、置いておくね?」
「焦らせんじゃねぇ、この!!」
「あはははは!!」
しつこいよ、ほんと。
あぶねぇんだよ。
演技が上手すぎて、そのうち裸のまま出てっちまうよ。
……さて、もう行ったね?
シルエット、無し。
それじゃあ、石鹸を取りましょう。
この石鹸が非常にボタニカル。
普通の白いやつと違って、ちょっとだけ泡立ちが悪いっていうのは難点だけど、とにかく肌に合う。
今まで使ってたボディソープは、ヌメヌメがずっと取れなくってね。
それでも安いから使い続けてたの。
なんでそんな話題になったのか忘れたけど、その話をしたら『これ使えば?』なんつって、ノイチさんがこの石鹸を勧めてくれたの。
シャンプーとかにしてもそうなんだけど、どこで情報を仕入れてどの店で買ってくるんだろうね、こういうの。
とにかく、ギャル特有の美意識の高さには救われております。
ただ、バスソルトだけはダメ。
同級生のマサト君のお父さんが言ってたんだけど、バスソルトとか入浴剤っていうのは毒だから。
毒。
田舎特有の強い表現。
毒。
小学生の頃の話なんだけど、今でもよく覚えてるわ。
マサト君のお父さんは、そういうお仕事をされている方で、夏休みとかで会ったときに、よくそんな話をしておられました。
なんか、そういうものを使うと、配管とか浴槽を痛めちゃうんだって。
会うたびに、おんなじ話しかしなかったな。
あのオヤジさん、元気かな?
今月末の試験が終われば、夏休みに入るし、久しぶりに鉾田帰ってみっかな?
いや、帰んねぇな。
それにしても、大学の夏休みって、なんであんな長いんだろう。
8月9月、全部休みだもん。
意味わかんねぇくらい長い。
「ミツルぅ?」
「なにぃ?」
「これ、どっちがいいと思う?」
「見えねぇよ! たぶんどっちでもいい!」
「なにそれ!? ひどいよ、ミツル!」
対応、間違えちゃった。
いや、ひでぇのは向こうなんだよ。
見えない二択を、今迫るなっていう話。
いい加減、こういう理不尽を許してはならない。
甘やかすのは、相手のためにもならないからね。
心を鬼にして、びしっと言ってやらないと。
「ごめんごめんごめん! 上がったら、よく聞かせてくれる? 今、お風呂入ってるから」
「はやく出て」
「わかったわかった。もうちょっとだけ、待ってて」
「待てない」
「泡だらけだから、今! ちょうど夏休みのこと、考えてたの!」
「夏休み?」
「そう! 出かけたいところとか、向こうで調べておいて!」
「……わかった」
ふぅ。
今年は、たくさん思い出が作れるといいね。
……なんか、J-POPの歌詞みたいになっちゃった。
カフェオレだけお留守ばっかりさせるのもかわいそうだし、猫オーケーの施設も探してやらないと。
そうは言っても、本人が、いや、本猫が出かけたい感じを出してないのが難しいところだね。
家が大好きで、病院が大嫌い。
俺と一緒。
問題はノイチだよ。
だって今日だけでも、このあと唐揚げ屋行って、ネギトロ丼のテイクアウトして、なんかゲーム一緒にやろうって言うから、お菓子とかそういう無駄なものをいろいろ買って。
予定を、ぶっ詰めすぎなんだよ。
ぶっ詰めると言えば、ずいぶん溜まってたな。
ウカウカ先輩からの未読メッセージ。
あの人も怖いよ。
俺が目覚めた途端に、ピロポロポロン♪って。
通知音が、止まんねぇんだから。
怖くて見れてないよ、まだ。
またなんか『城落とせ』って、無茶言われても困るし、二度とやりたくない。
しばらくは無視しちゃおう。
悪い人じゃないんだけどね。
……さて、これ以上待たせても、また騒ぎ出すから、もうそろそろ上がりますか。




