第27食 『カルマ』 清らかな歌姫
肩を寄せ合い、町へと消えてゆく一組の男女。
目的のデカ盛り弁当をセルフレジで購入し、まさかの帰宅をした主人公とヒロインである。
現場に残されたのは、弁当屋の前で睨み合う闇野入鹿と鵜飼卯花、そして――。
「まぁ、大変♪」
騒ぎを聞きつけ飛び出してきた『キッチン歌姫』の店主、プラーヴァ姫咲。
「ラララララァ~♪ タラリラ~♪」
年齢を重ねたからこそ、磨きのかけられた調べが美しい。
それにつけても、主人公は不在。
どうしよう。
こうしよう。
あとは任せた、プラーヴァ姫咲。
前代未聞。
前人未踏の歌劇方式でのバトルが、今、始まる――。
「――さあ、準備はよろしい?」
※深呼吸をするプラーヴァ姫咲、金髪の縦ロールを揺らして微笑む。
「さぁあ~♪ 私のオペラで~♪ 華麗にぃ~♪ 仕立て上げてましょ、おぉぉぉ~♪」
※開幕。祈りを奏でるのは、歌姫・プラーヴァ姫咲。
暗黒の西、潜むは魔のイルカ。
どうしてそんなに、濡れてるの?
東は毒の沼地、薫る花の美しさよ。
装いは暗色だけど。
――あぁ、神よ。
聖なる商店街に根差す希望よ。
我らの御身を、お守りください。
我らの御身を、お守りください――
一点の曇りもない、希望の光を――――。
「をぉ~♪ はゎゎゎぁをぉ~♪ はゎゎゎぁをぉ~♪」
「そこまでだ、いっくん!」
※ガチヒーロー、飛鳥御光が対峙する二人の前に登場する。
「!!」
※眉を上げて歓喜する歌姫、祈りのさえずりはなおも続く。
「――鍛えられた、二つの肉体♪ 一つは光、一つは闇♪ 男たちは、白昼堂々さらけ出す♪」
この商店街に、どうか平和を。
振り撒きたまえ、光の汗を。
振り撒きたまえ、光の汗を――。
「アスカ! また邪魔をする気か!」
「私たちに争う理由などない! 収めてくれ、いっくん!」
※どこからともなく集まった商店街の店主たち(コーラス担当)
《この商店街に、闇の飛沫を!》
《邪悪なる者どもは誰一人、正義からは逃れられない!》
《馴れ合いは終わりだ!》
《我らの怒りの炎が最初に焼くのは、悪のイルカだ!》
《焼き尽くすのだ、飛鳥御光!》
「ならば、こちらから仕掛けるのみ!」
「くっ……」
――なんてこと。
彼の心は、幼馴染の罰し方を知らない。
ああ、真実の愛よ。
どうか、彼に届いて。
「アスカさん! イルカに言ってやらないと!」
「ダメだ、博士!」
真実の愛を知るのは、毒の花だけ。
あと、もう少し。
どうか、彼に教えて。
そうすれば、この商店街に平和が戻ります。
悪戯なまなざしの毒の花よ。
どうか、彼に届けて。
そうすれば、あなたの胸の中も
そして祖国も光を得ることでしょう。
《まだ戦わないのか!》
《その悪に、早く炎を!》
――あぁ、早く届けて。
私が彼に、祈りを捧げたように。
《正義の炎よ、やってしまえ!》
私が彼に、すべてを捧げたように。
《正義の炎よ、やってしまえ!》
私が彼に、祈りを捧げたように。
《正義の炎よ、やってしまえ!》
私が彼に、すべてを捧げたように――。
「――ゾンちゃんと、付き合うことにした」
※共通の幼馴染、クリムゾン仲邑との交際を宣言する飛鳥御光。
「な……」
※三十年越しの片想いが砕かれた闇野入鹿、膝から崩れ落ちる。
「猫耳プレイもしたんでしょ?」
※鵜飼卯花の追撃に、闇野入鹿は意識を失う。
――ああ、今、彼のもとに。
《やったぞ、正義の脳焼きだ!》
私がすべてを捧げたように、彼のもとに。
《よくやった、飛鳥御光!》
ああ、今、彼のもとに――。
ああ、今、彼のもとに――――。
※終幕。商店街には、静かな余韻と変態ばかりが残る。




