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第22食 バカには勝てない! ヒーローの求めるもの!

 

 関東を中心に展開するペットショップ『アモーレ』。


 その最奥部にある犬猫コーナーで、まさかの再会を果たすミツルたち。



 なぜここに。


 一緒じゃないのか、クリムゾン。


 ナーン。



 再会早々、ミツルたちからの質問責めにあうアスカであった。





 英字プリントTシャツにハーフパンツ。


 今日も今日とて、海外セレブを思わせる、くそださコーデに身を包んだガチヒーロー、アスカ。


「今日はゾンちゃん、お仕事だからいないんだ。残念だけどね」


 彼が最初に応じたのは、ノイチからの質問であった。


 単純に、クリムゾン仲邑関連のものは彼の中で優先順位が高かったためである。


「その代わり、彼女には買い物を頼まれていて。それでちょうど、ここに来ていたところだよ」


 遅れて返したのは、ミツルからの問い。


 残すは最難関の『ナーン』のみとなる。


「その猫ちゃんは、君たちの家族かい?」


 しかしそこはガチヒーロー。


 相手が猫であっても、等しく歩み寄る。


「はい、そうです!」


 ノイチは元気いっぱいの笑顔をイケメンにみせる。


「……触っても、いいかな?」


 その時、アスカの正義の勘が働いた。


「もちろん!」

「ナーン……」


 ノイチと本人の許可を得て、手を伸ばすアスカ。


 彼が触ったのはカフェオレ大福もち丸の首元。


 もっと言えば、首輪だった。


 その裏に刻印された文字を、正義の目が捉える。



【Dr.Ukai】



 思わせぶりに、クスリと笑うアスカ。


「な……なにか、問題でも?」


 ワンダーランドのトップ層が見せた不穏な動きに、ミツルは不安そうに尋ねる。


「いや、なんでもない。可愛い猫ちゃんだ。それより、君たちの方こそ、何か問題があったんじゃないのかな?」


 民間人のお悩みはスマートに解決。


 それこそが、ダークブレイカーアスカの真骨頂。


「そうなんです。私たち、この子に必要なものを買うつもりなんですけど、このままだと持ちきれない量になっちゃうって……ミツルが」


 さすがの責任転嫁をみせる、民間ギャル・ノイチ。


「コラコラコラ。アスカさんには、関係ないでしょう?」

「でも、アスカさんなら、重たい荷物も運んでくれそうだし」

「ダメダメ! 絶対ダメ! ヒーローはお忙しいんだから!」


 危ない人に借りを作ろうとするんじゃない。


 遠回しに、そう願いを込める民間聞こえし者・ミツル。


「お気遣いは結構! 幸いにも今日は車で来ているからね! 喜んで、お家まで荷物を運ばせてもらおう!」


 純粋な親切心が、ミツルの警戒心を破壊しかける。


 それでも彼は、食い下がる。


「サタン様……いや、仲邑さんに、頼まれた買い物があるのではっ!?」

「確かに……しかし、なかなか見つからなくってね。良かったら、君たち、手伝ってくれないか? そのお返しとして、私が荷物運びをするというのは、どうだろう?」


 あまりにも完璧すぎるその言葉は、ミツルに沈黙という肯定を与えた。


「ナーン……」


 猫は喋った。


「素敵!」


 ノイチは目を輝かせて、その提案を受け入れた。


「決まりだね! それじゃあ、お願いするとしよう!」


 かくして、三人と一匹のピュアどもによる、協力プレーが始まった。


「何を探しているんですか?」


 先陣を切ったのは、もちろんノイチである。


「はっはっは! ものがわからなくちゃ、探しようがないもんね! 私が探しているのはこれだ!」


 そういってアスカが取り出したのは、ヒーロー専用のセルフォン。


 その背面には『Dr.Ukai』の文字が、うっすらと刻印されていた。


「はわわわわ……」


 セルフォンの画面を見て、言葉を失うノイチ。


 それどころか、彼女は赤面していた。



 ポルノか?



 一瞬そう思ったミツルも、顔を寄せて画面をのぞき込む。


「…………」



 ――やっぱバカだ、この人。



 猫耳カチューシャと尻尾。


 どちらも人間用。


 クリムゾン仲邑という、色気の塊がそんなものを何に使うのか。



 耳はまだいいけど、尻尾って。


 どこに入れる気なの?



 そんなことを想像するだけで、ポルノよりも煽情的な気分になる。


 そこをぐっと堪えて、ミツルは事務的に説明した。


「そのぉ、ここはペットショップなので、そういうのは、コスプレ専門店とか、爆安の宮殿とか、そういったお店じゃないと、置いてないかと……」

「えっ!? そうだったのかい!?」


 天然ぶりを見せつける、ガチヒーロー。


「……残念ながら」


 内心で、ヒーローの私生活を羨む男子大学生。


「ナーン……」


 もう飽きたので、帰って昼寝がしたい猫。


「はわわわわ……」


 ピュアがゆえに、スケベな想像をしてしまったギャル。


 三者を乗せた帰りの車の中では、ちょっとだけ気まずい空気が流れていたという。

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