第21食 ブレイクスルー! 勢いまかせの再会劇!
「…………」
変態性を失った変態ほど、悲しい存在はない。
鵜飼卯花は、まさにその状況にあった。
目の前のケージには、垂れさがった耳と丸顔が可愛らしい、ホーランドロップイヤー。
毛並みは近い。
だが、別に埋め合わせを求めてここに来たわけではない。
じゃあ、どうして?
彼女は自問する。
彼とは、たった一晩だけの関係だった。
彼の声、彼の匂い、彼の体温……。
瞼を閉じれば――
「ナーン……」
ほら。
あの、どこか間の抜けた低音ボイスが、寂しさの風をまた巻き起こす――。
「……ウカウカ先輩?」
マナミツルの声まで聞こえてきた。
今頃はあの彼女と、どんなえげつないラブロマンスを繰り広げているのかしら。
まぁ、全部録音してあるから、あとで好きなだけ聞いて、ちょっとアレだったらAIを使って自分好みに加工して……。
ついでに録画機能もつけておけばよかった。
まぁ、でもそれがなかったからこそ、タイミングよく二人にあの猫を押し付けることができたわけだし……嗚呼、猫ちゃん……。
「こんにちわ!」
秋風ノイチ。
ピュアなギャルは大好物。
イケメンマッチョとかじゃなくて、マナミツルになびくあたりが本当に大好き。
「ナーン……」
「ダメだ、野生のハシビロコウぐらい動かない。今日のところは、お暇しよう」
「なんだぁ、残念」
まぁ、私みたいな人間がコンパニオンアニマルを愛でるなんて、ちゃんちゃらおかしいわ。
けれど、たまにはこういうところに来てみるのも、いい気分転換になるかもね。
変態性を取り戻した変態ほど、残念な存在はない。
鵜飼卯花。
愛称はウカウカ先輩。
二十一歳、彼氏なし。
考えごとをしているときは、たとえ標的が話しかけてきても、スルーしてしまう。
ウカウカしがちなお年頃である。
「なんだって、こんな一番奥にあるんだ」
「別にいいじゃん。いろんなものが見れて、楽しかったし」
「ナーン……」
いよいよ、本題の犬・猫コーナーへと足を踏み入れたミツルたち。
そこにはフードから食器、トイレや砂、果ては爪に関するグッズまで。
カフェオレ大福もち丸の飼育には必須のアイテムたちが、すべて取り揃えられていた。
「あのさぁ……」
ミツルはここで、基本的な問題に気づいてしまう。
「どうしたの?」
「とりあえず、必要なものは全部買うじゃん?」
「うん」
「どうやって、持ち帰る気?」
「ナーン……」
「ミツルが運ぶんじゃないの?」
「おめぇ、俺を何だと思ってんだ!?」
お久しぶりです、鉾田弁。
「あはははは!」
こうなると、ただのファンガールになってしまうノイチ。
「あははじゃねぇんだよ!! 俺のこと、イケメンマッチョか何かと勘違いしてんのか!?」
「それは思ってない」
「否定が早い! 急に普通のテンションで。今さっきまで、笑ってたのに」
風呂上がりの自分は、ちょっとだけイケメンだと思っていた。
そんなミツルは、少しだけショックを受ける。
「あはははは!」
いくらなんでも笑い過ぎなノイチ。
またしても失禁か。
その時、二人と一匹の前に現れたのは――。
「やぁ、君たち! 奇遇だね!」
イケメンとマッチョ。
両属性を備えし、ガチヒーロー。
見参したのは、飛鳥御光だった。
「アスカさん!? なぜ、ここに!?」
「今日は仲邑さんは、一緒じゃないんですか!?」
「ナーン……」
「はっはっは! 質問は一人ずつにしてくれると、助かる!」
白い歯を見せながら、二人と一匹にサムズアップを決めるアスカ。
三十六歳、マルチタスクがきつくなってきたお年頃である。




