第109食 結果発表! そして、入隊おめでとう! なんかよくわかんない組織だけど!
無駄に長く、恥ずかしい内容のテストも終わり、続いては結果発表のお時間。
ミツルとノイチは固唾を飲んで、それを待ちわびていた。
ぼくのかんがえた最強の能力研究所。
通称『ぼく研』。
その所長を務める、うら若き金髪美女が、今、二人の能力タイプを口にする。
「まずは、秋風ノイチさん。19歳、女性から」
「はいっ!」
年齢と性別の公表は、今さらいるのか。
期待に胸を躍らせるノイチに対し、ミツルの頭には、そんな邪念が渦巻いていた。
「卯花、お願い」
前言撤回。
アルアル所長は、診断結果を告げる大役を、隣にいた妹のウカウカ先輩に譲った。
長い黒髪をたなびかせながら、先輩が一歩前に出てくる。
彼女のそのまま、手元にある資料に目を落として、内容を読み上げた。
「えー……気持ちで揺れ動くあなたには一貫性がありません。しかし、愛の力だけは真っすぐで強烈。なので、適性タイプは『愛』になります。正義のヒーローとしては、原点にして最強。ですが、強力すぎるがゆえに、自身の身を滅ぼすタイプとも言えるので、能力を決める際は慎重に考慮しましょう」
長い。
しかも、意外にちゃんとしている。
でも、もっとわかりやすく要約してほしい。
ミツルがそう思った、その時――。
「どういう意味ですか?」
ノイチが似たようなセリフを言ってくれた。
彼女のすぐ横で、ミツルはうんうんと頷く。
ほんのりとおバカな質問に、ウカウカ先輩も、彼女へと優しい笑みを向けた。
「安心して、秋風さん。能力を決めるときは、私がサポートするから」
「了解です!」
個人的には不安だけど、彼女がいいと言うなら、それでいいか。
内心ではすごく胸騒ぎを感じていたミツルだったが、色々とあってお疲れ気味だった彼は、ひとつの危険性を容易く見逃してしまった。
「それじゃあ、次は真菜君ね」
「はいっ」
あとで後悔しても、もう遅い。
どんどん進むぜ、超能力業界。
続いて、ミツルの診断が下される。
「あなたは……」
一体、どんなタイプなんだろう。
ミツルはごくりと生唾を飲み込み、先輩のプルプルの唇を見つめた。
「『無気力』人間です」
「……え?」
――分析開始。
なに? 悪口?
別に俺、無気力ではないでしょ。
「またの名を『お気楽』人間とも言います」
はい。これ、ただの悪口です。
いきなり米軍基地に連れてこられてさ、迷子の人助けたり、変な所長と無駄に戦ったり、クソ長いアンケートに答えさせられたり。
それで、結果はそれですか。
もう、帰ろうかな。
失礼しちゃうよ。
俺は決して、無気力人間なんかじゃないもん。
超能力なんて忘れて、真面目に働こう。
バカらしい。
「ことなかれ主義のあなたは、ヒーローとして、まったく適性がありません」
それは、あのー、当たってる。
そもそも、さっきから聞く『ヒーロー』っていう単語は、なんなんだろう。
ここって、『超能力研究所』なんじゃないの?
全然わかんない。世界観が。
ちゃんと説明しろよ、馬鹿ウカウカがよ。
「しかし、あなたの厭戦と慈愛の精神は、実に見事です」
……ね?
先輩って、いい人だから。
そうなの。
この基地に来る途中とかも、「トイレ休憩は大丈夫か」とか、ちょこちょこ聞いてくれたし。
ちなみに、今回立ち寄ったコンビニでは、限定おにぎりとフライドチキンをご馳走になりました。
「しかしながら、あなたの望む、平和な世界を実現させることこそが、我々『NEXT』の長年の悲願でもあります」
……『NEXT』って、なぁに?
「あなたの適性は『無気力』タイプですが、武力を執行することもある我が組織としては、放っておくことのできない、稀有なタイプでもあります」
……ぶりょく?
「従って、あなたを、この診断テストを作成した最高責任者・鵜飼アルテミスアルカナの強力な庇護のもとに置き、『NEXT』の一員とすることを、今、この瞬間から強制します」
「なにを勝手なことを!?」
――分析終了。
訪れたのは、絶体絶命のピンチ。
すでにヘロヘロの状態にあったミツルだったが、思わず椅子から立ち上がり叫んだ。
横にいるノイチも、さすがに心配そうな顔つきで事の成り行きを見守っている。
しかし、所長による金髪ファサッ、がすべての流れを断ち切った。
「仕方ないわ。初めての『タイプゼロ』だもの。まさか、こんなにもやる気のない人間が来るとはね」
「『タイプゼロ』って、なに!? ちゃんと説明して!?」
「テストが0点だった、ってことだけど?」
「あのクソアンケート、点数方式だったの!?」
もはや意味がわからない。
ミツルは文字通り、頭を抱えてその場に座り込んだ。
そんな彼に、そっと声をかけたのは、もちろんノイチだった。
「どうする? 帰る?」
「うーん……」
帰りたい。
けど、どうせ帰れない。
変な人物に、変な思想、そして変な用語。
ワンダーランドというのは、特殊なニオイがする。
それを嗅ぎわけたミツルは、無気力人間らしく、すっかり諦めきっていた。
「もし嫌だったら、秋風さんは帰ってもらっても構わないけど……ごめんなさい。真菜君の参加は『強制』だから」
とどめを刺したのは、ウカウカ先輩の言葉だった。
「……そういうことだね。ノンちゃんは、本当に、無理しなくていいから」
慣れてはいても、ノイチとの別れが辛くなった彼は、彼女の方を見ずにそう告げた。
ところが、次の瞬間――。
右手、ぎゅっ。
その感触は、あまりにも柔らかく、温かいものだった。
ノイチが、ミツルの手を優しく包み込んでいた。
「私も残る。『頑張る』って、自分で言ったから。それに、みちゅも一緒だしね?」
スーパーヒロインが、一人の男の孤独を救った。
その名は、秋風ノイチ。
後に、とんでもねぇ私利私欲の能力を思いつく、愛に飢えた女でもあった。




