ことわざコラム08(再来)
ことわざコラム04が評価システムの仕様変更に伴い、意味不明になったのでコラムを追加しました。
高校卒業後、2年経った佐保と弥生が、弥生の進学先で久しぶりに会話します。
「こんにちは。わたし佐々木 佐保だよ」
「やあ。わたしの名前は光岡 弥生だ」
黒髪を垂らした女の子が二人、どこか虚空を見つめながら、ペコンとお辞儀をする。
肩にかかるくらい長い髪をしているのが弥生、ボブが佐保だ。
「なんか急に呼びだされました」
「すごいな。約2年ぶりか」
二人は『2to2』という小説の登場人物だ。
訳あって、更新停止の検索除外中の身であるが、こうして表舞台に立てたのだ。
いつか更新してくれる日もあるのではないだろうか。(ない)
「ちなみに我らは、作者の高校時代をモデルに作られたらしいよ」
「なんというネタばらし」
「すなわち、実質は2年じゃすまないということだ」
「5年~7年ぐらいだな」
二人とも、そろそろ本題に……。
「年齢がばれるからやめて!」
「プロフィールの生年月日、公開してるくせに何言ってんだ」
◆しばらくお待ちください◆
「久しぶりだな、佐保。何年ぶりだよ」
「弥生、それさっきやった。……高校卒業してから初だよね。こうやって会うの」
「そうかもしれないな、トゥイッターは見てたけど」
「わたし、トゥイッターはブクマ用なので」
「この見る専が! もっと語れよ、オタクだろ!?」
「そんな怒られ方したの初めてだ。さすが弥生。さすやよ」
弥生の進学先の近くのカフェテリアで、待ち合わせをした二人。
そのままカフェには入らず、コンビニでお菓子とジュースを買った。
一人暮らしをしている弥生のアパートに帰ると、佐保は大げさに驚いた。
こいつのノリも久しぶりだな、と思いながら懐かしい昔話に花を咲かせる。
「今何してるんだ?」
「ニート?」
「おい。大学はどうした」
「やめたよ。一人暮らしができなくて精神病んだ」
「よく一人でこっちに来れたな。大丈夫か?」
「心配してくれたの!? ありがとう、弥生! ママンに送ってもらいました」
「ごめん、ただの事実確認だったわ」
「テンションだだ落ちした!?」
普段は話さないような人生の傷すら、弥生なら話せた。
敢えて素っ気ない口調なのが、逆に嬉しい。
ああ、これが弥生との会話だ、と思いながら近状の創作活動に笑う。
「ハマってるアニメとかある?」
「漫画だけど、これ、すごく泣けるぞ。おすすめ。読むときはタオル用意しとけよ」
「ああー、これよく見る奴だ。悪いけど、わたしサブカル系中二病を患ってるから、ごめん」
「なんだそれ」
「人気のものに食指が動かない人のこと」
「なるほど。マイナー主義か」
一通り話終わって、沈黙が流れるかと思われたその時。
佐保が本題を繰り出した。
弥生、覚えてる? と何かの必殺技みたいな感じに。
「高校の頃、放課後にことわざコラムしたの、覚えてる?」
「なっつ! ブルーアイズがどうのって話だろ。覚えてるけど、それがどうしたんだよ?」
「実は……」
深刻そうな顔で話し出す佐保。
長々と語り出すかと思いきや、話はすぐに終わった。
「ことわざコラム04を改稿する必要があるかもしれない、だって!?」
「リアクションありがとう」
「そりゃ、そんなカンペまで用意されたらなあ? 驚くに決まってるだろ」
「夜なべした甲斐があったぜ。夜8時には寝れました」
「規則正しい生活だな」
ことわざコラム04とは、ことわざコラムの存在意義を語る話である。
エッセイジャンルにことわざ集を置くのも相当変だが、ことわざ集に小説的なコラムが入っているのもなかなかに変だ。
中には、ことわざ集だけで十分で、コラムなんて要らないと思う人もいるだろう。
という訳で、そういう人からそうでもない人まで、すべての読者の方に、何故こんなコラムがあるのか、という話を長々3000文字ぐらいで伝えたのが、ことわざコラム04だ。
しかし。思わぬ仕様変更により、知らぬ人は意味不明な文章になってしまったのだ。
「ことわざコラム04って何の話だっけ?」
「作者が意地汚い評価クレクレだった、という話」
「よく分からない。もう少し詳しく説明してくれ」
「ことわざ集だと、文章評価やストーリー評価にポイントが入らないので、むりやり小説みたいなのを入れてポイントを嵩増ししようとした事件」
「ああ! そんな話もしたな。でもコラムなくても評価入ったんじゃなかったっけ」
「うん。ありがたい話でした」
虚空に向かってペコペコする佐保の姿を見て、弥生は心底安心した。
良かった、高校時代毎日見ていた佐保そのままだ、と。
あと、ここが自分の部屋で良かった、とも思った。
これをカフェでやられたら、他人の振りをして席を立ち、支払いを任せた可能性がある。
それはともかく、と続ける佐保。
「サイトの仕様変更によって、文章評価とストーリー評価がなくなってしまったんだ!!」
「ナ、ナンダッテー!?」
「リアクションありがとう」
「どういたしまして」
「評価システム自体は残ったけど、もはや全体を加味して☆5~☆1を付けるようになってしまった。つまり、ことわざコラム04の存在意義が消えてしまったんだ!」
「というかことわざコラム全体の価値も消えたな」
「まだ建前が残ってるから! 英訳のないことわざを紹介するっていう建前が!」
毒舌の冴え渡る弥生=サン。
久しぶりに弥生の皮肉洗礼を受けた佐保は、思わずひれ伏す。
弥生はますます、自分の部屋内で話していることに感謝した。
「つーか、☆5ってソシャゲかよ」
「密林とかじゃなくて、そっち? レア度ではないですよ?」
「☆5は出ないから、強化した☆4とか転生した☆3が強そう」
「ソシャゲから離れて」
佐保は、弥生をどうどう、とジェスチャーで押しとどめた。
狂犬のような弥生さんは危ないぜ、などと呟いていたら、しっかり聞こえていた弥生さんに突かれた。
突き飛ばさなかったのは、親友としてのなけなしの情けだろうか。
そうだと嬉しいな、と佐保はにんまりした。
なお、弥生はそんな佐保を見て、きめえと思った。
「で、どうすんの。改稿すんの?」
「まさか。めんどくさい。だいたいどう直すって言うの? 意味不明だよ」
「わたしにキレられても困る」
「という訳で、一応弥生に報告したので、この件は終了です」
「おい。まさか、この話をするためだけにこっちに来たんじゃあるまいな?」
「冗談。弥生にも会いたかったよ?」
末広がりになる一方で、二度と交わらないはずだった二つの人生。
ここで交差したことは、今後彼らの人生に影響を与えるのか。
「またね、弥生」
「ああ、またな」
親の車に乗り込む佐保を見て、少しノスタルジックな気分に浸る。
家族のことは好きじゃないが、生まれ故郷の市は別に嫌いじゃなかった。
佐保はきっと今も故郷の村に住んでいるのだろう。
もう少し先の未来で戻ってくるはずだった場所で、生きていくというのはどんな気持ちなんだろう。
大学時代の話を避けた佐保の表情を思い出して、彼女の幸福を願った。
願いかけて、いや、ガラじゃないな、と思ってやめた。しばらくは自分の人生で手一杯だ。
故郷と同じ時間に沈む太陽が見えた。
明日もそれなりで生きてこう。