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第四話 新しい日常

「起きて」

「……、……」


 朝。凛は爆睡する湊を起こしていた。湊を激しく揺さぶる。


「早く起きて」

「んぁ……」

「起きなさい」

「あと三十分……」

「却下。起きなさい」


 だんだんと凛の表情は険しくなっていく。


(あー本当に嫌。この人、なんで起きないの?)


 凛は心の中で愚痴をこぼす。


「湊」

「……」

「怒るよ?」

「……」

「……起きなさいっ!私より年上なんだからちゃんとしてッ!!」


 凛は声を張りそう言うと、腕を勢いよく湊の腹に振り下ろした。


「ぐぶっふぁあッ!!」

「起きた?」

「ぉ……起きました……」

「ほら。用事あるんでしょ?さっさと着替える」

「はい……」

「私はもう行くから。二度寝しても知らないよ」

「はい……」


 凛が強めにドアを閉めながら部屋を出ていった。


「ふぅ……」


 湊は身体の力を抜き、クローゼットを開いて、服を選び始める。手に取ったのは、黒のデニムカーゴパンツに、黒のワイシャツ。

 着替え終わると、白色のウエストポーチを持ち、部屋を出る。


◇◆◇◆◇


 湊は、街を歩いていた。

 十分ほど歩くと、今まで暮らしていたアパートにたどり着く。そして大家の部屋のインターホンを鳴らした。

 すぐにドタバタと音が聞こえ、ドアが開いた。出てきたのは七十代ほどの女性。


「あら湊くん!どうしたの?」

「こんにちは奥田さん」

「上がっていく?」

「いや大丈夫です。あの、俺引っ越すことになったんですよ」

「ああそのことね!それならデーモンズバスターの人、確か天樹さんだったかしら。その人がもう手続きとか済ませたから大丈夫よ」


 通常、本人の介入なしで立ち退き手続きはしないと思う。いやしない。湊は、流石に非常識だと思い記憶を探った。どこかしらで自分が介入したはずだと。


(……あぁ、そういえば昨日の夜メッセージ来てたな、疲れて見てなかったやつ……)


 昨日の夜。慎と奥田さんの二人からメッセージが届いていたことを思い出した湊は納得した。


「わかりました。ありがとうございます」

「いえいえ。また暇あったら来ていいのよ?」

「はい。じゃ俺行くんで」


 そうして湊は高校に向かうべく、通学路を辿った。


◆◇◆◇◆


 今日は部活動があるため高校は開放されていた。湊は校門をくぐり、職員室へ向かった。ドアをノックし、担任の八木を呼び出す。


「あら霧島さん」

「こんにちは八木先生。退学届を出しに来ました」

「あぁ、前に連絡してもらったやつですね」


 湊は退学届を八木に渡す。


「はい。あとはこちらで手続きを進めて、その後にまた連絡しますね」

「わかりました」


 退学届提出は、意外とあっさり終わった。そして湊は校門を出る。

 特に用事もない湊はその後、寮に帰ることに決めた。

 本来、DB隊員の単独行動は禁止だが、慎の計らいで今日は特別に湊は単独行動を許されている。よって凛は湊が帰るまで自由を奪われているため、湊は凛の機嫌を損なわないよう一刻も早く帰る必要がある。そのため、湊は最寄りの駅から電車に乗り、寮へ帰った。一回の広間へ入ると、一角のソファーに腰掛ける凛を見つけた。


「凛」

「湊。用事は済んだ?」

「うん」

「そう。……そういえば、天樹さんが用事が済んだら一緒に来てって言ってたから、お昼食べたらそのまま支部に行くよ」

「わかった」


 そうして二人は街でお昼を食べに出かけた。


「凛はなに食べたい?」

「私は、ラーメンかな。湊は?」

「うーん俺もラーメンかな」


 湊は、最初から凛に合わせるつもりで即答した。

 そして凛のおすすめの店に行き、食事を済ませたのち、慎の待つ支部に向かった。


◇◆◇◆◇


「湊くん。凛さん。来ましたね」


 二人が支部にある慎の部屋を訪れる。そして慎はタブレットを片手に何かの資料を読み込んでいるようだった。


「二人には今日の午後、今からですね。二件の駆除任務をお願いします」

「はい。わかりました」


 凛が答える。


「天樹さん。詳細は?」

「一件は東京湾に出現した大型怪物、もう一件は、都内上空に出現した飛行型怪物の駆除です。大型の方を優先してください」

「……?なぜですか」

「飛行型の危険度が低く、人を襲う様子がないからです。大型は暴れてしまうと津波が発生するので、そちらを優先してください」

「なるほど。了解」

「わかりました」


 慎は腕時計を見ながら言う。


「二人とも。二十分後に寮の屋上にヘリを向かわせるので、それまでに制服(バトルスーツ)に着替え、準備を済ませてください」

「わかりました」

「はい」


 湊と凛はそう答えると、すぐさま寮に向かった。

 それぞれ自室で準備を済ませ、二十分後、屋上でヘリコプターに乗り込んだ。すると操縦士が手にグローブを装着しながら言った。


「ここから大型の発生地点までは約十分かかります」

「うっす」

「はい」


 そしてヘリは動き出す。


「凛」

「なに?」

「海でも能力使えるのか?」

「……濡れた相手には効果が薄いし、大型なら本当に、効果はないと思う」

「なら、大型は俺がやるよ。久しぶりに能力使ってみたい」

「うん。いいよ」


 そのまま、ヘリはあっという間に東京湾上空に到着した。

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