ep8-力の重み④-
「ペゼリーから見てどうだったっすか?」
模擬戦を終え、カイル達は機体を退避エリアへ移動させ、4人はようやく腰を落ち着かせる。
緊張感から解放されたためか、カイルはペゼリアが用意した栄養補給水を一息で飲み干してしまっていた。
「う〜ん…。」
珍しくペゼリアが難しい顔をしている。
それほど先程の戦闘は目に余るものだったのだろうかと、カイルは内心ヒヤヒヤしていた。
「カイルちゃんとあの機体、あまり相性良いとは思えないんだけどなぁ〜。」
それはカイルにとって、予想外の一言だった。
戦術についてではなく、そもそもこの機体と自分の相性を指摘されるとは、カイルは夢にも思わなかったからだ。
「やっぱりそうっすよね。そもそもこの機体の開発コンセプト自体が、人が乗って動かすことを前提にしてるとは思えないんすよね。」
「うん、ボクもそう思う。むしろ良く扱えている方。」
それを聞いたカイルの心中は、とても複雑だった。
相性が悪い原因は、機体そのものの存在であって、腕は褒められているのだから。
相棒になれると思った矢先、その相棒の存在そのものを否定されたと感じ、カイルは言葉を放つことすらできなかった。
「元々エンヴィスは、他国の機械体と比べて、立体的な空間機動能力に優れているっす。けど、この機体はそれを完全に否定したコンセプトで作られているっすからね…。」
「ペゼリア、N型の配備依頼はできない?」
ペゼリアはフレンツェラの問いかけに答えるため、手持ちのタブレットを操作する。
「う〜ん…そうだね〜。予備機はどれも部隊割り当て済み。新品だと…どれだけ急いでも1ヶ月はかかるなぁ〜……」
「じゃあその間、私達が特訓に付き合うっすよ!」
カイルを含めた4人は、笑顔で顔を見合わせる。
「残念ながら、それは許可できません。」
誰もいないはずの空間から聞こえたその声に、4人が一斉に振り返る。
エウレリアだった。
どうしてここに。
そう口にしかけたところで、カイルはふと思い出した。
今日は、訓練禁止と言われていたことを。
エウレリアは、冷や汗を流して固まるカイルと目が合うと、静かに目を閉じてため息をついた。
「エウレリア様?なぜ訓練させてもらえないんすか?」
そんな空気を気にすることなく、シンディナは腰に手を当ててエウレリアに問いかける。
「理由は2つです。」
エウレリアは淡々と、3人娘の方を見て答える。
「第二独立艦隊には、本日1700に次の任務が発令されます。」
それを聞いた3人は、あーっと頭を抱える。
「マジっすか…もう整備終わったんすか!?」
シンディナの叫びに呼応して、ペゼリアが手持ちのタブレットをたたく。
「うわぁ〜、予備機含めて全機整備完了したって〜…。」
「がぁぁ!あの予備機を直す部品あるなら、カイル君用に一機ぐらい組み立てれるっすよね!」
ねっ、とシンディナはフレンツェラとペゼリアの2人に何度も確認し、2人とも同様に目を瞑って頷くことしかできなかった。
「それで?もう一つの理由はなんすか?」
シンディナが不貞腐れながら、頬杖をついてエウレリアに問いかける。
すると、エウレリアは今度はカイルの方を見る。
「予定より早いですが、第一独立艦隊が帰還しました。カイルには午後から顔合わせをしてもらいます。」
それは、当初の予定より3日早い帰還だった。
「だから言ったんです。」
カイルはエウレリアの顔を見る。
「今日1日は、休暇を取るようにと。」
カイルは、ようやくその言葉の意味を理解したのだった。




