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TeX.Hacker  作者: 融暖
第1章
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28/29

ep7-失敗作②-

2人は未だ眠るエンヴィスを、トレーラーでメインシャフトエレベーターに乗せて移動していた。


しかし、そこに至る僅かな時間だけでも、カイルには驚きの連続であった。


この機体を運び出すに当たり、トレーラーやクレーンオペレーターの手配等、エウレリアが前もって指示したのかと思ったのだが、どうにもそうでは無かったらしい。


自動だった。


いつの間にか表に停まっていたトレーラーは、完全に無人で動いており、エンヴィスをトレーラーに運び入れるクレーン操作も、エウレリアが指示する事なく完全自動で行われた。


そして速やかにトレーラーの運転席と助手席に乗り込んだ2人だが、結局昇降機が目的地に到着するまで、ただの一度も直接操作する事は無かった。


やがて昇降機は静かにその動きを止め、ゆっくりと開く扉からは、青々とした草原が姿を現す。


その周囲は草木を纏った瓦礫で覆い囲われており、どこを見てもその瓦礫から外に出る隙間は見受けられない。


「…地上?」


カイルは微速前進するトレーラーの窓から身を乗り出し、地下とは違う複雑な香り漂う風をその身で感じつつ、振り返った先にあると思われたメインシャフトは存在しない。


それはここが第零階層である事を示していた。


熱を発する太陽は天高く昇り、影は足元に僅かに落ちるのみだった。



「では、エンヴィスの起動準備をしましょう」


エウレリアは軽やかにその身を翻し、荷台で片膝を付くエンヴィスへと足を進める。


遅れて助手席から降りたカイルも、エウレリアに続いてコックピットに向かう。


「ここって、地上…だよね?大丈夫なの?」


「周りへの被害についてであれば、基本的に考慮する必要はありません。敵襲の心配についても、この街にいる限り、視覚的にも電子的にも捕捉されることはありませんので、ご心配なく。」


コックピットに乗り込んで、戸惑うこと無く起動シークエンスを行うエウレリアは、カイルの方を一瞥する事も無く、その作業をこなしていく。


その様子を手摺越しに見るカイルは、感心すると共にコックピットの中を覗き込む。


見える範囲では、エンヴィスN型のコックピットと違いは見つからない。


なら基本的な操作は問題無いか、と考えるカイルをよそに、エンヴィスN型高速機動試験型の背部に備えられたオルビス機関が、低い鼓動のような唸りを上げる。


「起動シークエンスは完了しました。」


それだけ言うと、カイルとすれ違い地上に足を下ろすエウレリア。


座席に乗り込んだカイルが、シートをコックピッ内に格納すると、コックピットハッチを閉じた。


前に乗ったN型よりもシートが馴染む。


どうやら低身長用のシートに変更されているらしく、レバーもペダルも、余裕を持って操作出来る位置にあった。


これは自分用に換装されているのか、はたまた元々エウレリア用に用意されたのか。


何はともあれ、ありがたい限りだ。


手足の操作感を確かめて見上げると、オンラインになった各種モニターに周囲の景色が表示され、昇降機横に移動したエウレリアが、備え付けの無線機を手に取っているのが映る。


『調子はいかがですか。』


エウレリアの問いかけに、カイルは改めてモニターや計器類に視線を巡らせる。


パッと見た感じだと、数個の計器が追加されている程度で、それ以外にはN型と差は無いようだった。


だが、基礎となるエンヴィスN型ですら、計器類の扱い方を完璧には理解していないのに、マニュアルも無い本機に追加された物が何を示すのか、理解できるはずも無かった。


「良いのか悪いのか、よくわかんないんだけど…、たぶん大丈夫。」


『それは何よりです。では、習うより慣れろですから、早速模擬戦闘を始めましょう。』


エウレリアの合図と共に、木々や瓦礫の影からボロボロの機械体が姿を見せる。


頭部の無い機体や片腕の欠損した個体。


武器もろくに装備しているようには見えなかった。


『敵機はBP-AA01Bディダ3機を仮想敵とします。オートパイロットで動く鈍重な無人機ですが、元々廃棄予定ですので破壊して構いません。』


言われた通り鈍い動き、と言うよりは動いているのが不思議なほどぎこちなく、関節は悲鳴に似た軋み音を奏で、滲み流れるオイルは、機体の涙のように感じてしまう。


『終わらせてくれ』


その機械体達からはそう聞こえた気がした。


「了解、行きます!」


一度呼吸を整えて、その不気味な思考を振り祓い、意を決して操縦桿を握り込む。


瞳に光を宿したエンヴィス高速機動試験型は、その鈍重な足で第一歩を、大地の感触を確かめるように踏み出した。


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